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ジャン・ルノワール監督の『ランジュ氏の犯罪』(36年)を国内盤DVDで観た感想。

 先月発売された『フィルム・ノワール  ベスト・セレクション フランス映画篇 DVD-BOX1』の中の一篇。
もちろん、これまで国内でソフト化されていなかった幻の作品です(たぶん)。

まず言っておきたいのは、せっかくのフィルム・ノワールのBOX中の作品であるにもかかわらず、この映画はとてもフィルム・ノワールとは言えない作品だということ。
フィルム・ノワールの定義はともかくとして、この作品をフィルム・ノワールと言ってしまうと、殺人事件を扱った映画はすべてフィルム・ノワールということになってしまうでしょう。
それくらい映画全体のトーンがフィルム・ノワールから掛け離れた作品になっています。

フィルム・ノワール云々の話はともかくとして、問題はこの映画が良い作品か否かですが、観た印象として、おそらくルノワールの中でもトップクラスの作品でしょう。
30年代後半のルノワールは『どん底』、『ピクニック』、『大いなる幻影』、『ゲームの規則』など映画史に残る傑作が目白押しですが、それらに匹敵する作品であることは間違いありません。
つまりは、すべての映画の中でもトップクラスの作品だということです。

複雑な人間模様の中での男女間の機微を始め、ルノワールならではの人間観察の深さと温かさが感じられる作品で、とりわけルノワール風なパーティーシーンの素晴らしさは白眉。
脚本はジャック・プレヴェール、縦横無尽に動き回るキャメラワークが印象的な撮影はルノワールの盟友ジャン・バシュレ

主演のランジュ氏を演じるのはルネ・ルフェーヴル
メルヴィル作品に詳しい方ならこの名前にピンと来たのではないでしょうか。
いぬ』(62年)の冒頭でセルジュ・レジアニに銃殺される故買屋の男、あれがルネ・ルフェーヴルです。
この映画では当然のことながら若く、見た目はほとんど別人ですが、さしてスター性の感じられない存在感がかえってランジュ氏の平凡な人間像に合っています。

対照的にジュール・ベリー演じる、強欲かつ好色な出版社のオーナー編集長がどこか憎めない魅力的なキャラクターとして描かれています。

さらに女優陣も魅力的。
洗濯屋の主人ヴァランティーヌを演じるフロレルはまるで『或る夜の出来事』のクローデット・コルベールのようですし、その下で働くエステル役のナディア・シヴィルスカヤはアンナ・カリーナとミレーユ・バランを足して二で割ったような可憐さ。
ピクニック』の主演女優シルヴィア・バタイユまでジュール・ベリーの愛人秘書役で出ていますが、出番は少ないものの、やはり最高に魅力的。

最後にDVDの画質について。
残念ながら国内盤DVDの画質はお世辞にも良いとは言えません。
ハッキリ言ってVHS並みです。
いくら製作された年が古いとはいえ(36年)、同年の『ピクニック』のDVDは素晴らしい画質で国内盤が出ていますし(さすがに紀伊国屋。現在廃盤)、やはり同年の『どん底』のDVD(ジュネス企画)もこれほど悪くありません(というかこれに比べたらだいぶマシ)。
画質の悪さは映画を観ているうちに少しずつ気にならなくなってきましたが、作品が素晴らしいだけに、やはりこの画質は残念です。

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自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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