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ジャック・ロジエ監督の『アデュー・フィリピーヌ』を国内盤DVD(紀伊国屋書店)で観た感想。

再見。
良くも悪くもディレッタントな味を感じさせる作品で、必ずしも手放しで絶賛とはいかないが、なんとも言えない瑞々しい魅力のある青春映画
ゴダールから小難かしい文学性を取り払い、トリュフォーの物語性を薄めた作品といえばいいか。
作風として近いと言えばロメールかもしれないが、ロメールほど計算し尽くされた職人的な出来栄えではない。
だが、いかにもヌーヴェル・ヴァーグらしい映画であることは間違いないと思う。

キャストがほぼ皆映画初出演とのことだが、そうとは思えないほど自然な演技で、彼らの魅力的な容姿も映画の大きな魅力となっている。
映画前半でエレガントな音楽をバックに女の子二人がパリの街を歩くシーンが数分続くが、これがなんとも素晴らしい。
ルネ・マトランによるカメラワークも見事。

ところで、ジャック・ロジエは今も存命中である。
この紀伊国屋盤DVDのブックレットにジャック・ロジエの2001年のインタビューが掲載されている。

それによると、この映画の編集を巡ってプロデューサーのジョルジュ・ド・ボールガールと対立していた時に(ボールガールは映画が長すぎると感じていたらしい)、映画を観たジャン=ピエール・メルヴィルがボールガールにどこそこを削除したほうがいいと助言したという。
結果的にロジエは削除に応じたのであるが、そのインタビューの中で、ボールガールは若手作家に嫉妬していたメルヴィルの口車に乗せられた、という言い方をしている。

確かに当時メルヴィルにはロジエ他若手作家(いわゆるヌーヴェル・ヴァーグの連中)に対する多少のやっかみはあったかもしれないが、さすがにこれは言い過ぎではないか。
その削除のために、モニーク・ボノ(当時メルヴィル作品の編集を担当していた)が呼ばれてこの映画の編集を行うわけだが、やっかみや嫉妬があったのなら自分のところの有能な編集者を貸し出すだろうか。


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渋谷Bunkamuraル・シネマで特集上映『ヌーヴェル・ヴァーグの恋人たち』が開催されます。

期間:7/4(土)~7/31(金)
料金:1,300円均一(リピーター、学生は1,000円)

【上映作品】

あこがれ…1957年/17分/モノクロ/35ミリ
監督:フランソワ・トリュフォー

大人は判ってくれない…1959年/99分/モノクロ/デジタルリマスター版
監督:フランソワ・トリュフォー

ピアニストを撃て…1960年/85分/モノクロ/35ミリ
監督:フランソワ・トリュフォー

突然炎のごとく…1961年/105分/モノクロ/デジタルリマスター版
監督:フランソワ・トリュフォー

アントワーヌとコレット<二十歳の恋>より…1962年/29分/モノクロ/35ミリ
監督:フランソワ・トリュフォー

柔らかい肌…1964年/116分/モノクロ/35ミリ
監督:フランソワ・トリュフォー

夜霧の恋人たち…1968年/90分/カラー/35ミリ
監督:フランソワ・トリュフォー

家庭…1970年/100分/カラー/35ミリ
監督:フランソワ・トリュフォー

恋のエチュード…1971年/132分/カラー/35ミリ
監督:フランソワ・トリュフォー

私のように美しい娘…1972年/98分/カラー/35ミリ
監督:フランソワ・トリュフォー

逃げ去る恋…1979年/94分/カラー/35ミリ
監督:フランソワ・トリュフォー

終電車…1980年/131分/カラー/デジタルリマスター版
監督:フランソワ・トリュフォー

隣の女…1981年/106分/カラー/35ミリ
監督:フランソワ・トリュフォー

日曜日が待ち遠しい!…1983年/111分/モノクロ/35ミリ
監督:フランソワ・トリュフォー

地下鉄のザジ…1960年/93分/カラー/35ミリ
監督:ルイ・マル

はなればなれに…1964年/96分/モノクロ/BD
監督:ジャン=リュック・ゴダール

男性・女性…1966年/105分/モノクロ/35ミリ
監督:ジャン=リュック・ゴダール

ボーイ・ミーツ・ガール…1983年/104分/モノクロ/35ミリ
監督:レオス・カラックス

汚れた血…1986年/119分/カラー/35ミリ
監督:レオス・カラックス

ポンヌフの恋人…1991年/126分/カラー/35ミリ
監督:レオス・カラックス

ベティ・ブルー/愛と激情の日々…1986年/121分/カラー/BD
監督:ジャン=ジャック・ベネックス

かなりセレクトに偏りがある印象ですが(笑)、スクリーンで観る機会が少ない作品もいくつかあるようですのでその意味では貴重な機会となりそうです。

ジャック・ロジエのDVD‐BOXが10月29日に紀伊国屋書店から発売になります。

DVD3枚組の内容は長編の『オルエットの方へ』『メーヌ・オセアン』、短編の『ブルー・ジーンズ』『パパラッツィ』『バルドー・ゴダール』という5作品。
昨年ユーロスペースで公開された特集上映『ジャック・ロジエのヴァカンス』(公式サイト)から既に国内DVD化されている代表作『アデュー・フィリピーヌ』を除いたラインアップです。

新宿K’s cinemaでは『ふたりのヌーヴェル・ヴァーグ』公開記念としてゴダールとトリュフォー監督特集が上映されます。(リンク

作品生誕50周年というゴダールの『女と男のいる舗道』を始め、ゴダールとトリュフォーの主に60年代の作品全13作品が公開されます。
ふたりのヌーヴェル・ヴァーグ ゴダールとトリュフォー』というジャン=リュック・ゴダールフランソワ・トリュフォーの関係を描いたドキュメンタリー映画(監督:エマニュエル・ローラン)がまもなく東京 K's cinema他で公開されます。(公式サイト

予告編です。

ジャン・ユスターシュ監督の『ママと娼婦』を国内盤DVDで観た感想。

LA MAMAN ET LA PUTAIN』(73年)
監督・脚本:ジャン・ユスターシュ 
撮影:ピエール・ロム 
出演:ジャン=ピエール・レオー、ベルナデット・ラフォン、フランソワーズ・ルブラン、イザベル・ヴェンガルテン
 
再見。
1981年に43歳の若さでピストル自殺したジャン・ユスターシュ監督
これは、その彼が73年に発表した、上映時間3時間40分以上にも及ぶ前代未聞の問題作。
久々の再見だが、初めて観た時の強烈な印象はいささかも減じていない。
とにかく面白いので、3時間40分という物理的な長さをほとんど感じさせない。

サンジェルマン・デュ・プレのロケ撮影を中心とした簡素極まりない16ミリのモノクロ映像、少人数のスタッフ、キャスト、効果音楽が皆無(かかる音楽は出演者がかけるレコードのみ)、ヌーヴェル・ヴァーグを象徴する俳優ジャン=ピエール・レオーベルナデット・ラフォンの出演等々、ヌーヴェルヴァーグのエッセンスだけで撮影したような映画で、この作品が“最後のヌーヴェル・ヴァーグ”と呼ばれるのも納得できる。
なにより、若さとそれゆえの痛々しさがこの映画には横溢している。

それを巧まずして(?)表現するアレキサンドル役のジャン=ピエール・レオーは、上手いとかなんとか言う以前に凄い俳優だ。
それも、いかにもこの俳優らしい、人物の饒舌な面を表現したところよりも、押し黙った時の表情にこの俳優の凄さを見る思いがする。

一方で、ヴェロニカ役のフランソワーズ・ルブランが強烈な存在感。
この人は他に映画出演がほとんどない素人同然の女優で(ユスターシュの愛人だったという)、当然のことながら演技だってさして上手くないが、その存在感になんというか、男にとっての“”を感じさせる女優だ。
男が嵌るとコワい女、いや、それが分かっていてもズブズブと嵌ってしまうという類の女であり、美人であるとかないとかはこういった女にはあまり関係がない。
たとえ笑顔でも目が決して笑っていないのはゾッとする。

マリー役のベルナデット・ラフォンは好演だが、撮影の雰囲気に耐えられず、数カットを残して途中で役を降りてしまったという。
これもなんとなく分かる気がする。
現場にはユスターシュの狂気が蔓延していたのだろう。

映画の前半でレオーが求婚する女性(ジルベルト)役のイザベル・ヴェンガルテンロベール・ブレッソン監督の『白夜』(71。未見)に出ていた女優だというが、いかにもブレッソン映画のヒロインっぽい顔立ちの女優だ。

撮影はメルヴィルの『影の軍隊』(69)の撮影監督を担当していたピエール・ロム
カルト作を数多く撮影していることで知られる人だが、1973年にしてモノクロ16ミリというこの仕事をよく引き受けたものだと思う。
調べると、この人はブレッソンの『白夜』(71)の撮影も担当しているとのこと。

ところで、これまではVHS(レンタル)でこの作品を観ていて、今回初めて国内盤DVD(廃盤)でこの作品を観たのだが、以前観たVHSに比して特に画質が良いという印象はなかった。
まぁ、これは良い画質で観たからどうこうという類の映画ではない。
こういった長い映画を一枚のDVDで通して観られるのはありがたいが…。 

ロジェ・ヴァディム監督の『大運河』を国内盤DVD(IVC)で観た感想。

SAIT-ON JAMAIS』(56年)
監督・原作・脚本:ロジェ・ヴァディム
撮影:アルマン・ティラール、ルイ・ネエ
音楽:ジョン・ルイス(MJQ)
出演:フランソワーズ・アルヌール、クリスチャン・マルカン、ロベール・オッセン、フランコ・ファブリッツィ、O・E・ハッセ
 
初見。
MJQモダン・ジャズ・カルテット)によるジャズ演奏をサウンドトラックに使ったことでも有名な作品である。
ちょうど同じ年(56年)、ルイ・マル監督が『死刑台のエレベーター』でマイルス・デイヴィスのジャズ演奏をサウンドトラックとして使っているが、これ以降、特にフランス映画においてモダン・ジャズが盛んにサウンドトラックとして使われることになる。

この映画で使れたMJQの音楽は『たそがれのヴェニス』というタイトルで発売されており、世間的にも名盤とされているが、個人的にはMJQのアルバムの中ではそれほど気に入っているというわけではない。
しかし、映画の中での楽曲の使われ方は絶妙で、その音楽の魅力を改めて感じた。

ところで、ロジェ・ヴァディム監督の作品はこれまでほとんど面白いと思ったことがない。
この作品も途中まではかなり退屈であった。
しかし、中盤くらいから面白くなり始め、観終わる頃にはそれなりに気に入った。

主演のフランソワーズ・アルヌールは往年のフランス映画ファンに人気だった女優だが、正直なところ、私はこの人の魅力がよく分からない。
ハッキリ言って美人ではないし…。
確かに持って生まれた人懐っこさはあるかもしれないが、この作品で演じた役柄はあまり共感しにくいキャラクターであった。

あと、クリスチャン・マルカンフランコ・ファブリッツィのスーツとネクタイの色が前半で一緒だったため、二人の区別が付かなかった。
前半あまり面白く感じなかったのはそのせいもあるかもしれない。

男爵役のO・E・ハッセも良かったが、この映画を面白くした立役者はロベール・オッセンであろう。
感情表現が巧みで、さすがに存在感もある。

ただし、国内盤DVDの画質は良くない。
よくもあんな画質で発売するものだとちょっと呆れた。
 

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マサヤ
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趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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