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只今発売中の男性ファッション誌MEN'S EX2013年3月号にメルヴィルの『いぬ』に関する記事が出ています。
デザイナー赤峰幸生氏によるトレンチ・コートに関する記事ですが、調べたら赤峰氏のブログにも同じ記事が出ていました。(リンク

こうした媒体でメルヴィル映画が紹介されることはあまりないことなのでファンの一人として大変嬉しいのですが、『いぬ』の監督名がピエール・ルズーって…。
これはブログ記事の誤記ではなくて、件の雑誌でもそう表記されていました。
言うまでもなくピエール・ルズー(ルスー)は『いぬ』の原作者です。
また、作品紹介に明らかなネタバレが含まれているのも気になりますね…。

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私もたまに買う月刊誌『GQ JAPAN』最新号アラン・ドロンに関する記事が4ページ載っていました。
この号は22日に発売されたばかりで、私は立ち読みしただけでまだ買ってないのですが、とりあえずお知らせします。(明日にでも買う予定です)

ざっと読んだ感じですと、その記事はドロン氏の出演作『若者のすべて』や『ボルサリーノ』、『地下室のメロディー』などの紹介を通じてドロン氏の俳優としての魅力を語っています。
とりわけ、ファッションに重きを置く雑誌ゆえ、ドロン氏のファッションに関する部分に重点を置いて紹介しているのが興味深いところでした。

そして、その記事には『サムライ』も紹介されています。
今回の『GQ JAPAN』最新号自体がトレンチコート特集号ということもあって、『サムライ』でドロン氏が着用したトレンチコートがアクアスキュータム製であることが言及されていました。

その記事には、“この映画でドロンが着たトレンチはアクアスキュータムのものであると言われる”というような内容のことが書いてあるのですが、私が知る限り、公の場でそのことが語られているのは初耳なので驚きました。
1ccbb688.jpegもしや、このブログを参考にしてませんか…?するわけないか。
私が過去に書いた『サムライ』のトレンチに関する記事

写真も大きく掲載され、それは、ちょうどジェフ・コステロが車を盗むために通りに出たところの写真ですが、写真が裏焼きのまま紹介されているのがなんとも残念です。
ファッションに言及するなら、裏焼きはまずいと思うんですが…。
ボタンと穴の位置、帽子のリボンの結び目なども左右逆になるわけですからね。
まぁ、国内盤DVD『サムライ』のパッケージ写真(下部)も裏焼きですが…。(非常に似ていますが、雑誌で使われた写真とは別のものです)

それでも、ドロン氏の輝かしい業績が改めて再評価されたり、『サムライ』やメルヴィルに関する記事がこういった雑誌に出ることはとても嬉しいことです。

『サムライ』といえばアラン・ドロンのソフト帽にトレンチコート姿の印象が大変強いのではないでしょうか。
実際、ドロンが『サムライ』でトレンチコートを着ていたシーンは、殺し屋に陸橋の上で銃撃されるまでの映画前半だけなのですが、なにか映画の中でずっと着ていたような強い印象すら残ります。

今回は、『サムライ』におけるアラン・ドロンのトレンチコートの着こなしや、その特徴を中心にメルヴィル作品におけるトレンチコートの特徴などについて述べてみたいと思います。
専門用語も使いますが、それについては、アクアスキュータムのページ(リンク)を参考になさるとよろしいかと思います。

最近はシングル・タイプのトレンチも街角でよく見かけますが、メルヴィル作品に登場するのはまずほとんどがダブルのタイプのものです。
もちろん、ダブルの方が主流といいますか、本流でしょう。
トレンチコートの特徴の一つに、ベルトが挙げられると思いますが、登場人物たちはきちんとベルトを留めています。
当然のことながら、最近街でよく見かける、後ろでベルトを結ぶような変則的(?)なことはしません。

エポーレット(肩章)もトレンチの特徴の一つですが、例えば、アラン・ドロンは『サムライ』ではエポーレットのあ8015f65c.jpegる伝統的なタイプ、『仁義』ではエポーレットのないタイプのものを着ています。
両作品でのソフト帽の有無も含め、おそらくは役柄のイメージの重複を避けたためでしょう。
素材はおそらく、綿100%、ないしは、綿ポリ混のものと思われます。
画像でお分かりだと思いますが、『仁義』で着用していたものは『サムライ』のものに比べ少しヨレっとしており、綿ポリ混の可能性が高いでしょう。
着る人が着ると、このヨレっとした感じがまた格好良いのですけどね。

ところで、トレンチコートで有名なところでは、バーバリー、アクアスキュータム製のものが有名です。(ハンフリー・ボガートがアクアスキュータム製のものを愛用していたのは有名)
デザインもこの二つのブランドのものが完成形と言ってよく、実物を見ても、他のブランドのものとは桁違いの、問答無用の貫禄、オーラがあります。(それだけに値も張りますが)
実際のところ、メルヴィル作品に出てくるトレンチコートのブランドはどこが多かったのでしょうか?

インナーのチェック模様によって、ハッキリ識別できたものは次のもの。

●『サムライ』ジャック・ルロワ着用(バーバリー)
●『リスボン特急』リチャード・クレンナ着用(アクアスキュータム)、マイケル・コンラッド着用(バーバリー)

8931282b.jpegそして、『サムライ』におけるアラン・ドロンです。
『サムライ』においてアラン・ドロンが着ているトレンチコートは極めて伝統的なデザインのもので、我々がトレンチコートに持っているイメージに非常に近いものです。
襟は立てられ、ベルトももちろんきちんと締められています。
全体のシルエットは細めであり、着丈は膝丈ぐらいでどちらかというと短めに感じられます。(これはドロンの高い身長のせいもあるかもしれません)
見た目、ダブついた感じがなく、体によく合っていると思います。
『サムライ』でドロンが着用していたトレンチはどこのブランドのものだったのでしょう?
たいていインナーのチェック模様で判別できるのですが、ちょうど取り調べの最中に他の容疑者とコートを取り替えるシーンでインナーの模様が映るシーンがあります。
残念ながら、インナーのチェック模様ではどこのものかハッキリ判別できませんが、デザインを検証する限り、ズバリ、アクアスキュータム製のものである可能性が極めて高いと私は思っています。

その理由は以下の通り。

右肩前方部分のガンフラップが小さいこと。

757108e6.jpeg近年のアクアスキュータムのトレンチコートはどういうわけかガンフラップが大きく、第2ボタンにかかるくらい下にきてしまっていますが(↑で紹介したアクアスキュータムのページのものもそうです)、昔のアクアスキュータムのトレンチコートは、ガンフラップは小さかったのです。
『リスボン特急』でのリチャード・クレンナ着用のアクアスキュータムのトレンチを参考。

襟(後ろ)部分についているスロートタブがボタン留めになっている点。

例えばバーバリー製のものはスロートタブがストラップ留めになっています。
ボタン留めになっているのはアクアスキュータムのトレンチコートの特徴の一つです。

左右のストームポケットに、ボタンが上下二つある点。

上の部分と下の部分に二つボタンがあるのはアクアスキュータムのトレンチコートの特徴の一つです。

背翼がまっすぐ横一直線になっていること。

この点もアクアスキュータム製トレンチコートの特徴の一つ。
0d3fef46.jpeg例えばバーバリーのものはなだらかにU字型を描いているものが多いです。
ただ、アクアスキュータムでは、一時的にアンブレラカットという傘の形を模したものが売られていたこともありました。(数年前に私が購入したものもそうです)
ちなみに、『いぬ』においてジャン=ポール・ベルモンドが着用していたトレンチはアクアスキュータム製ではないと思われますが、その背翼はアンブレラカットです。
また、このベルモンドのトレンチは、襟部分のスロートタブがストラップ留めになっていることが画像でお分かりいただけるでしょう。

このように、『サムライ』において、アラン・ドロンが着用していたトレンチコートは、エポーレット(肩章)やボタンの位置、形状など、他の部分もアクアスキュータム製トレンチコートの特徴と完全に一致しますので、その可能性は非常に高いと思います。
ただ、我々が知らないブランドだとかショップもパリには当然あるわけで、それ以外のブランドのものである可能性ももちろん否定はできません。
他に、『ギャング』のラストにおいてリノ・ヴァンチュラが着ていたトレンチコートもアクアスキュータム製のものと特徴が一致しますので、私はそうではないかとにらんでいます。

私自身、ずっと感じていたことですが、メルヴィル作品の魅力として、出演俳優のファッション、着こなしもその一つとして挙げられると思います。
今観ても、そのファッション、着こなしは少しも古臭くなく、むしろ、今観ても、実に格好良いことに驚かされます。
彼らのファッションは古典的といいますか、特別当時の流行を追ったものではありませんが、むしろそれが、今観ても古臭く感じない大きな理由の一つかもしれません。

メルヴィル作品の舞台は主に冬であり、映画の舞台が夏であったり、出演者が薄着をしていたりするシチュエイションは皆無といってよいほどありません。
11月に入り、ようやく冬が近づいてきましたので、これから何回かに渡って、メルヴィル作品における出演俳優のファッションをいくつか検証してゆきたいと思います。
もちろん、検証といいましても、私自身その筋の専門家ではないので限界はありますが、メルヴィル作品の魅力の一環として、参考(?)にしていただければと思います。

23cd0a7c.jpegメルヴィル作品のファッションとして、中でも目立つアイテムとしては、ソフト帽、トレンチコートが挙げられるでしょうが、まずほとんどのキャラクターがスーツを着ていることを指摘すべきでしょう。
メルヴィル作品のキャラクターは世間的に見ればほとんどがアウトサイダーですが、まず、どんな人物であっても、きちんとスーツを着て、ネクタイを締めているのです。
ほとんどの場合、ダークトーンのスーツやネクタイを着用、ネクタイのノットは小さめに結ばれています。
靴も黒以外はまず見受けられません。
私はそのあたりになんともいえないダンディズムを感じてしまうのです。
デザインはもちろんですが、特に、スーツやコートの着丈、身幅等、俳優の体によく合っているのが、彼らがお洒落に見える理由の一つかと思います。
右上の画像は『仁義』のイヴ・モンタンですが、コートの着丈(膝丈ピッタリ)、袖丈(手がキレイに出ています)、ウエストの加減など、絶妙としか言いようがありません。

事実、自身かなりの洒落者だったというメルヴィルは、出演俳優の着こなしにもかなりうるさかったらしく、それまでほとんどスーツを着たり帽子を被ったことのなかったブールヴィルを『仁義』で起用するにおいて、その着用するスーツや帽子、靴等に至るまで映画用にオーダーで仕立てたらしいです。
一見メルヴィル的な俳優には見えないブールヴィルが、『仁義』において、メルヴィル的な俳優として違和感がないのは、演技力によるところはもちろんでしょうが、その着こなしがスッキリと決まっていたことも大きかったのではないでしょうか。

そして、メルヴィル作品のキャラクターにとってのある種のユニフォームともいえる、トレンチコートについてです。
トレンチコートは、トレンチ(塹壕)というくらいで、もともと軍用であったことから、ハード・ボイルド的な風合いがあり、40年代のアメリカ映画、フィルム・ノワール作品にもたくさん登場します。
とりわけ、ハンフリー・ボガートが『カサブランカ』で着たあたりから、ファッション・アイテムとして、人気が出ました。
ffdce086.jpeg日本でも、トレンチコートはここ数年、ファッション・アイテムとして大変人気が高く、特に女性が格好良く着こなしているのが目に付きます。
ところが、男性が着る場合、くたびれた刑事や探偵がトレンチコートを着るイメージが強いせいか、それらはどこかダサカッコ良さといいますか、どこか洗練されきらない、野暮ったさがあるように思います。
他に日本男性が着るトレンチのイメージとしては、くたびれたサラリーマンだとか、学校の先生、あるいはやくざ・・・。
正直、洗練されたカッコ良さとはあまり縁がないように思われます。
ところが、メルヴィル作品の登場人物たちにはそのようなイメージはほとんどなく、実に粋にトレンチを着こなしているのです。
トレンチコートを着ているキャラクターが登場するメルヴィル作品と、俳優をざっと挙げてみましょう。

●『この手紙を読むときは』 フィリップ・ルメール(マックス役)
●『賭博師ボブ』 ロジェ・デュシェーヌ(ボブ役)
●『いぬ』 ジャン=ポール・ベルモンド(シリアン役)、セルジュ・レジアニ(モーリス役)、エメ・ド・マルシュ(ジャン役)
●『ギャング』 リノ・ヴァンチュラ(ギュ役)
●『サムライ』 アラン・ドロン(ジェフ・コステロ役)、ジャック・ルロワ(殺し屋役)。
●『仁義』 アラン・ドロン(コーレイ役)、イヴ・モンタン(ジャンセン役)、ブールヴィル(マテイ警視役)、他にもジャック・ルロワ、ジャン=ピエール・ポジェ(刑事)、リコの手下など
●『リスボン特急』 リチャード・クレンナ(シモン役)、マイケル・コンラッド(ルイ・コスタ役)

d00c27d3.jpegこれを観て分かるように、トレンチコートは、メルヴィル作品、とりわけ、そのフィルム・ノワール作品に必需品といってよいアイテムであり、主役クラスであればあるほど着用率(?)が高くなります。
もちろん、メルヴィル本人も愛用者の一人で、ステットソンハットにトレンチコートという出で立ちが私生活においても彼独特のスタイルでした。
次回は、『サムライ』のアラン・ドロンのトレンチコートの着こなしを中心に、メルヴィル作品に見られるトレンチコートの特徴をいくつか指摘してみたいと思います。

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自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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