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『影の軍隊』クライテリオン盤DVDの特典ディスクに収録されている、“JEAN-PIERRE MELVILLE,FILMMAKER”なるメルヴィルのドキュメンタリー映像の内容を紹介します。
これは『影の軍隊』撮影時の69年にフランスのテレビ局によって製作された小ドキュメンタリーで、4分という短いものですが、大変中身が濃く、興味深いものです。
ナレーションと共に、メルヴィルのスタジオ?でのインタビューの模様が流れ、『影の軍隊』のメイキング映像がいくつか紹介されています。
それぞれのシーンは短いものですが、どれもこれも貴重なもので、こんな映像が残っていたとは!という信じられない思いでいっぱいです。
中でも最も興味深いものは凱旋門でのドイツ軍行進シーンの撮影風景でしょう。
トレンチコート姿のメルヴィルが、マイクを持って兵士の行進に指示を出したり、兵士のヘルメットなどの身なりを直したりする映像が収められています。
ルイ・ノゲイラ著『サムライ』によれば、莫大な経費が掛かったというこの撮影ですが、メルヴィルは心なしか楽しそうな様子。
それもそのはず、『サムライ』には今まで撮ったシーンで誇りに思えるものはこの凱旋門行進シーンと、『いぬ』のクランのオフィスのシーンだけだと語っているくらいですから。
この撮影を実現できて、映画人として嬉しくて堪らなかったのではないでしょうか。
そして、ポール・ムーリッス演じるリュック・ジャルディの家のシーンの撮影風景。
ムーリッス、その弟ジャン=フランソワを演じたジャン=ピエール・カッセルの姿も見えますが、映像で観る限り、笑顔が絶えないリラックスした撮影現場です。
これはメルヴィルのイメージからするとちょっと意外なほど。
ちょうどこの映像の前後に「私はカメレオンだ。セットで冗談を言ったり笑いながら撮影するのが好きな俳優にはそれに合わせるし、そうでない俳優にはそれに合わせるしね。」というメルヴィルのインタビュー音声が重なります。
次にリノ・ヴァンチュラ演じるフィリップ・ジェルビエが映画前半で入れられる収容所で、共産主義者の若者ルグランの仕事場を訪ねるシーンの撮影風景。
こちらは笑顔が見られず、どこか張り詰めた雰囲気です。
先ほどのメルヴィルの言葉からすると、ムーリッスらとのメルヴィルの関係、そしてヴァンチュラとメルヴィルの関係が透けて見えるようです。(実際、この映画の撮影中、メルヴィルとヴァンチュラの関係は最悪で、仕事以外ではろくに口もきかなかったらしいです・・・)
あと、シモーヌ・シニョレ演じるマチルドが喪服を着て、ゲシュタポ本部に浸入するシーンの撮影風景。
この特典ディスクの他の映像の証言からも明らかですが、この作品でのメルヴィルとシニョレの関係は大変良好だったようで、ここでのシニョレには驚くほどチャーミングな笑顔が見られます。
ちょうどそこに「ヴァンチュラ、ムーリッス、カッセル、シニョレとスターが揃った映画だが、この場合、監督こそが一番のスターでは?」というナレーションが被さります。
そこから深夜自室でメルヴィルがシナリオを書いているシーン、別荘の庭で同じくシナリオを書いているシーンが続き、そこに「“芸術”とは、孤独であったり、クリエイターが他の世界と切り離されている時に生まれるものだよ。その意味で映画は芸術とは言いがたいな。夜中の3時に一人で脚本を書く・・・それが私には芸術と呼べるものかな。」というメルヴィルのアーティスト論とも言える音声が被さり、「まさにその意味では、“アーティスト”という言葉ほどメルヴィルに相応しい言葉はない」というナレーションで、この映像は終わります。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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