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アンリ・ドカは、1915年7月31日、パリ近郊サン=ドゥニ生まれ。
戦前は写真・映画技術学校に通い、第二次世界大戦中には、空軍の映画班で撮影を担当します。
ジャン=ミヌールの下で短編記録映画や宣伝映画を演出および撮影し、1945年からは〈プチ=パリジャン〉の写真記者となります。(参考-エスクァイアマガジンジャパン刊「ヌーヴェル・ヴァーグの時代―1958‐1963」E/Mブックス)

メルヴィルとアンリ・ドカの出会いはメルヴィルの長編処女作『海の沈黙』に遡ります。
もともと、別のキャメラマンによって撮影は始められていましたが、メルヴィルと対立して首になり、紆余曲折あってドカが呼ばれることになります。

「かくして私はアンリ・ドカと出会った。感じがよくて内気で、とても知性に恵まれた青年で、そのうえ、映画のことでは私とセンスが同じだった。初日、私たちは一緒に仕事をして、実に気持ちがよかったね。二日目はこの上なく楽しかった。三日目からは、もう一丁あがりさ。私たちは実によく理解し合っていたから、撮影、編集、ダビング、整音とすべてを一緒にやったよ。」(引用―ルイ・ノゲイラ著 井上真希訳 晶文社刊「サムライ―ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生」より)

メルヴィルと出会った頃のことを語ったドカの貴重なインタビューを記載してみましょう。


 ジャン=ピエール・メルヴィル監督とはどのようにして出会ったのでしょうか?

 わたしは当時ジャン・ミヌールというコマーシャル映画のプロダクションで、コマーシャルやドキュメンタリーfa13d509.gifの短編を撮っていました。ある日、その会社の製作主任がわたしにこう言ったのです――ジャン=ピエール・メルヴィルという若い監督が自主製作で『海の沈黙』という長篇劇映画の撮影を始めたんだが、キャメラマンと喧嘩してしまい、撮影中断の状態になって困っている。どうだね、やってみる気はないかね?ただし、ギャラなしだが、とね。
 わたしはこの仕事に大いに興味を持ちました。原作はレジスタンス文学の最高傑作として知られたヴェルコールの小説です。それに、なによりも、長篇劇映画というのはぜひ撮ってみたかった。そんなわけで、メルヴィルと会い、いっしょに仕事をすることになった。1948年のことです。
 初の長篇劇映画の撮影ということで大いに張り切っていたところ、ひどい条件で、たとえばネガフィルムはエマルジョン・ナンバーがそろっていないものばかり。全部、メルヴィルがあちこちのプロダクションから払い下げてもらった残りフィルムの寄せ集めでした。しかも、フィルムの量は充分になく、ほとんどその日ぐらしの状態で、毎日スタッフのだれかがあちこちのプロダクションを駆けまわっては残りフィルムを寄せ集めてくるという始末です。こっちから50メートル、あっちから100メートルといったぐあいでした。こんな調子で、映画が完成するまでに1年もかかったのです。

 エマルジョン・ナンバーがそろってないネガフィルムでは、全体のトーンを合わせるのがたいへんだったのではありませんか?

 それで、全体をできるだけ暗いトーンにしたのです。明暗やコントラストのはっきりしない、薄明や薄暮のトーンですね。それが、たまたま、メルヴィルの「暗黒映画」(フィルム・ノワール)のムードにぴったりだったのです。ともかく、なにもかも手づくりという感じの仕事でした。

 思えば、メルヴィルこそヌーヴェル・ヴァーグのパイオニアだったわけですね。

 わたしたちがやった方法は資金不足でやむを得ず考えだしたことだったのですが、それをヌーヴェル・ヴァーグが受け継いで、ひとつの方法論として体系化したわけです。『海の沈黙』や『恐るべき子供たち』は、ヌーヴェル・ヴァーグという言葉すらなかったころに作られた映画ですから、もしあえて呼ぶなら、「もうひとつの映画」(シネマ・パラレル)というか、要するに体制(システム)の外側の映画だったわけです。いっさいの制約なしに、法的な許可なんかとらずに、すべての映画的な文法や法則を無視して、撮ったのです。同じ原理をヌーヴェル・ヴァーグが採用したのだと言えます。
引用-山田宏一著 平凡社ライブラリー刊「友よ映画よ、わがヌーヴェル・ヴァーグ誌」より)

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自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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