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ジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』を国内盤DVDで観た感想です。
『A BOUT DE SOUFFLE』(59年)
監督・脚本・台詞:ジャン=リュック・ゴダール
監修:クロード・シャブロル
原案:フランソワ・トリュフォー
撮影:ラウール・クタール
音楽:マルシャル・ソラル
出演:ジャン=ポール・ベルモンド、ジーン・セバーグ、ダニエル・ブーランジェ、ジャン=ピエール・メルヴィル
再見。
ヌーヴェル・ヴァーグの代表的な作品であると同時に、なんといっても“ジャン=ピエール・メルヴィル出演作品”でもありますから、このブログで取り上げないわけにはいきません(笑)。
それにしては取り上げるのが遅過ぎた感もありますが…。
内容については改めて言うまでもない作品ですので、ここではメルヴィルに関連する部分を中心に書き連ねてみましょう。
『軽蔑』にはフリッツ・ラング、『気狂いピエロ』にはサミュエル・フラーと、敬愛する監督を自身の映画に本人役で出演させているゴダールですが、ある意味、その発端となったのがこの作品。
ただ、ここではメルヴィルに映画監督である本人役ではなく、アメリカの大作家パルヴュレスコという架空の役柄を演じさせているのが面白いところです。
メルヴィルはここでの演技に当たって、ロシア生まれのアメリカの作家ウラジミール・ナボコフ(1899年-1977年)のテレビインタビューからインスピレーションを得たとのこと。
“彼を真似て、繊細で気取っていて、うぬぼれが強くて、少々皮肉っぽくて純情、といいった感じにした”
(引用―『サムライ―ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』ルイ・ノゲイラ著、井上真希訳、晶文社刊 より)
実際にこの映画をご覧になった方ならお分かりでしょうが、空港での記者たちとメルヴィルのやり取り(インタビュー)は実にユーモラスで、たった5分程度のものながら作品の中でも特に魅力に富んだ面白いシーンとなっていると思います。
インタビューのシーンから、とりわけ面白い質疑応答を抜き出してみましょう。(訳文は国内盤DVDの字幕を参考)
セバーグ:現代社会に女性の役割はあるとお考えですか?
メルヴィル:縞の服にサングラスの魅力的な女性ならね。(言うまでもなくセバーグのことを指している)
質問者:女性は生涯に何人の男性を肉体的に愛せますか?
メルヴィル:(指の数で数限りなくという様子を表しながら)もっとだ。
質問者:ブラームスはお好きですか?(注:サガン?)
メルヴィル:嫌いです。
質問者:ショパンは?
メルヴィル:最低だ。
セバーグ:人生最大の野心は?
メルヴィル:(すぐには答えずおもむろにサングラスを外し)不老不死になって死ぬこと。
このメルヴィルの答えにセバーグが感に堪えた様子で自らもサングラスを外しカメラ目線…というこのインタビューのラストショットは素晴らしいと思います。
編集についてもゴダールはメルヴィルにアドバイスを求めたようです。
『勝手にしやがれ』は当初3時間以上あったので、メルヴィルはゴダールに対し“映画の筋に関係ないところをカットして、私のも含めて無駄なシーンは全部削るように”とのアドバイスをしたといいますが、“彼は私の言うことを聞かず、その頃まで慣例となっていたように、いくつかのシーン全体を削るのではなく、カットのなかで行き当たりばったりにコマをつまむという天才的なことを思いついたのさ。結果は素晴らしかったね。”
(青字部分引用―『サムライ―ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』ルイ・ノゲイラ著、井上真希訳、晶文社刊 より)
自らのアドバイスを無視されたメルヴィルも、それによって気を悪くすることもなく、映画の出来栄えを賞賛、大人の対応をしているところにこの頃の二人の関係の良好さが表れていると思います。
また、本編中にもゴダールがことさら好んでいたという『賭博師ボブ』を話題にしたセリフがあったり、やはりゴダールが好んでいたメルヴィルの『マンハッタンの二人の男』の音楽を担当したマルシャル・ソラルが、その縁がもとでこの作品の音楽を担当したりもしています。
他にも、いろいろな因縁の絡んだ作品でもあり、メルヴィルとジャン=ポール・ベルモンドが初めて出会ったのもこの作品です。
実際、映画の中で二人は空港のシーンですれ違っています。
通常の撮影なら、撮影の前に双方の挨拶があったり、リハーサルがあったりするはずでしょうが、二人がまさに対面した瞬間がそのまま映画のシーンとして記録されているというのが面白いところ。
ゴダールの即興演出なればこそで、いかにもゴダールの映画らしいエピソードと言えるのではないでしょうか。
言うまでもなく、この作品で縁ができたメルヴィルとベルモンドは、この後、『モラン神父』『いぬ』『フェルショー家の長男』と3作続けて撮ることになるわけです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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