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前回に続く
(この連載(?)の1回目全4回予定と書きましたが、全5回に訂正いたします 笑)

アルバム『風立ちぬ』が発売される頃には私の持っていた『A LONG VACATION』のLPは友人たちに借り回されてキズだらけになっていた。
まもなく『風立ちぬ』のLPも同じ運命を辿ることになるのだが・・・。

発売されたアルバム『風立ちぬ』を聴いてまず驚いたことは、やはり聖子さんの声がこれまでよりハスキーに感じられたことだった。
そのことは先行シングル『風立ちぬ』でもすでに表れてはいたが、アルバム(特に大滝が担当したA面)を通して聴くと、以前との声の変化は明らかであった。

このアルバムがレコーディングされた時期は1981年8月、9月だというが、もしかしたらB面よりA面の方が後の時期にレコーディングされたのかもしれない。
どちらにせよ、聖子さんがもっともハードスケジュールだった時期(夏にも全国ツアーを行っている)にアルバムがレコーディングされたことは間違いない。

過酷なスケジュールが祟り、体調を崩して歌番組を時折休むようになったのもこの時期ではなかったか。
睡眠時間が一日平均2~3時間、コンサートは昼夜2回公演、その合間にテレビの歌番組出演、ラジオの収録、雑誌の取材、そしてレコーディングである。
いくら若いといっても無理がある。(もちろん聖子さん本人には責任がない)
声が全然出なくなったこともあったらしい。
それらの悪条件が重なり、81年半ば頃を境に聖子さんの声質は明らかに変化した

デビュー当時の聖子さんの歌はまさにパワーボーカルとでも言いたくなるよう圧倒的な声量で高音から低音まで声が出切っていた。
とりわけ印象的だったのはどこまでも伸びるハイトーンボイスだが、アルトのような太い声もそれに劣らず魅力的だった。

それが、この『風立ちぬ』のレコーディングの頃から声はハスキーになり、次第に語りかけるような歌い方が多くなっていく。
俗に言うキャンディボイスへの声質の変化である。

今ではこの時期の聖子さんの代名詞ともいえるキャンディボイスだが、ある意味、苦肉の策の結果とも言える。
デビュー時の圧倒的な声は永久に失われてしまった結果、キャンディボイス以後の聖子さんは表現力にますます磨きをかけていくことになる。
そして、その表現力こそが聖子さんの芸術性の特質となっていく。

キャンディボイスの魅力をさっそく発揮したのが、アルバム『風立ちぬ』のA面5曲であり、次のシングル『赤いスイートピー』(82年1月21日発売)であったと思う。
(私の知る限りでは当時キャンディボイスなんて言葉、誰も使ってなかったような気がするが、いつから言われるようになったのだろう?)

それにしても、当時リアルタイムで聴いたアルバム『風立ちぬ』の素晴らしさにはやはり驚かされた。
なにしろ個々の楽曲の完成度が凄かった。
それ以前の3枚のアルバムももちろん良かったし好きだったが、それらとは別格の出来栄えだと感じた。
のちに聖子さんのアルバムはこのレベルの出来栄えは当たり前のようになるが、まだ後の傑作『Pineapple』(82年)も『ユートピア』(83年)も世に出ていない頃の話である。
シングル『風立ちぬ』への不満も、このアルバムを耳にした途端、どこかへ消し飛んでしまったように思う。

アルバムは『冬の妖精』から幕を開けるが、俗にナイアガラサウンドと呼ばれる大滝独特の音の壁がビッシリと敷き詰められており、そこに聖子さんのハスキーな声が不思議なくらいピタリとハマっていた。(是非ともヘッドフォンかイヤフォンで聴いてみて欲しい)
間奏のギターソロ(鈴木茂)は、音といい、フレージングといい、まさにナイアガラサウンドの真骨頂。

一千一秒物語』は2000年代になってもコンサートで歌われることの多い聖子スタンダードの傑作の一つだし、『いちご畑でつかまえて』は超難曲にして、とりわけ大滝カラーの強い楽曲。
およそアイドルの楽曲とは思えないほど遊び心のある作品である。(♪Bidan Bidan Bidubidubidan♪のキャンディボイスが素晴らしい!)

ただ、私はこのところ何度かこのアルバムを聴き返してみて、一番心惹かれたのが『ガラスの入江』であった。
これは凄い。
聖子さんの当時のシンガーとしての実力をフルに発揮した名バラードだ。
このような引きずるようなテンポのバラードは歌いこなすのが相当に難しいはずだが、聖子さんの卓越したリズム感は、見事に歌声をメロディに乗せてみせる。
一般的にはあまり指摘されないことかもしれないが、当時も今も聖子さんという人はリズム感が抜群に優れた人で、だからこそあの声がメロディに乗った時、素晴らしく魅力的に響くのだと思う。
次回に続く

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フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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