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フリッツ・ラング監督の『M』を国内盤DVD(紀伊国屋書店)で観た感想です。
『M』(31年)
監督:フリッツ・ラング
原作:エゴン・ヤコブソン
脚本:テア・フォン・ハルボウ、フリッツ・ラング
撮影:フリッツ・アルノ・ヴァグナー
出演:ペーター・ローレ、オットー・ベルニッケ、グスタフ・グリュントゲンス、エレン・ウィドマン、インゲ・ランドグット、フリッツ・グノス
再見。
この作品はフリッツ・ラング監督の初のトーキー作品だそうです。
以前観た時はI○C盤のDVDだったのですが、例によって画質が非常に悪く、そのせいもあって心行くまで楽しめなかったような覚えがあります。
今回観た紀伊国屋書店レーベルから出ているDVDは、1931年という時代の映画としては驚異的なほど画質が良く、以前観た時に感じた不満が全くといってよいほどありませんでした。
価格こそ高いものの、特典映像や解説リーフレットも充実しているこのDVDは、作品が好きな方なら買っても絶対に損はないでしょう。
それはともかく、この作品を久々に観たわけですが、やはりこれはスゴイ作品です。
オープニングからして子供たちの不吉な歌から始まるという、悪夢のような作品内容に相応しい幕開けですが、幼女殺害、そして犯罪者の異常心理という、現代でも通用する題材を、この時代に映画作品として成立させた、フリッツ・ラング監督の演出ぶりが見事です。
トーキー初期ということもあってか、ところどころにあえて静寂を活かした(?)演出が効果的で、随所に光る斬新なカメラワーク、音楽(ペーター・ローレが口笛で吹くグリーグの『ペール・ギュント』のメロディー)の使い方など、大変印象的です。
犯罪者を暗黒街の住人たちが追跡するという意外な展開、そして、犯罪者を告発する民衆たちの反応が、異様な迫力を持って描かれています。
それでいて、犯罪者の言い分、主張も盛り込みながらも、犯罪者を徹底的に突き放した演出者の視点が、重苦しすぎたり暗すぎたりなりがちなところから映画を救い上げているようにも感じられます。
キャストでは、主演のペーター・ローレの存在感と熱演ぶり、その怯えた表情の魅力(?)が天下一品と言えるのではないでしょうか。
ところで、このDVDの特典映像はまだ途中までしか観ていませんが、44ページに及ぶ解説リーフレットでは、大塚真琴氏による、この映画の主演ペーター・ローレの貴重な評伝が読めます。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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