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Criterion盤DVD『仁義』の特典映像に収録された、助監督ベルナール・ストラのインタビューの翻訳の続きです。
『ブールヴィルの変貌』
ブールヴィルはもともと出演予定ではなく、リノ・ヴァンチュラが演じる予定でした。
しかし、メルヴィルは他人と喧嘩するという素晴らしい才能があったため、ヴァンチュラと仲違いしてしまいました。
メルヴィルに「ブールヴィルを起用すべきだ。」と進言したのはプロデューサーのロベール・ドルフマンです。
メルヴィルがこう話したのを覚えています、
「愚かなアイデアだ、 刑事役のブールヴィルなんて! 彼が口を開ける度に、『La Tactique Du Gendarme』や『Les Crayons』 - ブールヴィルが歌っていた歌謡曲 - を歌い始めるのを期待してしまうぞ。」
メルヴィルはブールヴィルをメルヴィル的俳優であるとは捉えていませんでしたが、前にお話したように、メルヴィルは俳優を指導せずとも、俳優を自らの宇宙に引き入れる並外れた才覚を持っていました。
私は彼がどのようにブールヴィルに対処したか覚えています。
メルヴィルはブールヴィルに何か説明したり、議論をしたりしませんでした。
それはメルヴィルのやり方ではないのです。
彼は3つの側面から始めました。
まず、最初にメルヴィルは、有名なパリの仕立屋- どこだったか覚えていませんが -でブールヴィルのためスーツを誂えました。
ブールヴィルは田舎出の素朴な男で、このようなスーツを着ない人でした。
彼はスーツを買う余裕はありながらも、そうしなかったのですが、一方、メルヴィルは非常にお洒落で、生地屋、仕立屋、靴屋、帽子屋などを知っていました。
ブールヴィルは、人生で初めて、自分の体に完璧に合った上等なテーラードスーツを着ました。
彼は鏡を見て言いました、「おい、なんて男前なんだ!」
次に、ブールヴィルは少し禿げかかっていましたので、メルヴィルはブールヴィルのためにかつらを作らせました。
鏡の中の自分の姿を見て、ブールヴィルはそれが自分自身だとほとんど識別できなかったほどです。
それから我々は彼を有名な帽子屋に連れて行き、ソフト帽を試着させました。
ブールヴィルはソフト帽をかぶらない人でした。
ソフト帽は当時すでに流行遅れのスタイルでしたからね。
こうして、ブールヴィルの外見は日毎に変化していき、ブールヴィルは以前の彼ではなくなっていました。
ブールヴィルも、他の人たちと同様、お似合いの服装の着心地が悪いはずもなく、以前とは違う人間、仕事ぶりとなっていったのです。
この項続く。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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