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image69.gif影の軍隊』のユニバーサル・ピクチャー・ジャパン盤DVDが、ようやく8月7日再発売されることになりました。
前回同様1500円という廉価、初回限定生産盤です。
Amazonではすでに予約が始まっています。

ご存知のとおり、昨年発売されたDVDはあっという間に市場から消え、その後は中古盤がAmazonやオークションなどでプレミアがついている状態が続いていました。
今回の再発売前の6月からはTSUTAYA DISCASでもレンタルが始まるとのことで、その状況はかなり改善されることは間違いありませんが、今回も油断しているとあっという間に売り切れる可能性もありますので油断はならないと思います。

ところで、個人的に今回の再発で一番気になっていた点は、ジャケット裏のパッケージに記載されていた内容紹介において、【ルクの弟ジャン(ジャン・=ピエール・カッセル)の裏切りによってアジトが急襲されるに及んで組織は逼迫】という、ストーリーの明らかな誤りの記述が訂正されるか否かでしたが、Amazonのページに記載されている内容紹介を見る限り、文章の内容は前回と全く同じで、誤りは訂正されておりません。

実際、作品をご覧になれば、誤解される方は多くないとは思われますが、それでも、内容を混乱したり、誤解する可能性もなくはなく、その点が極めて残念です。
その点から推測されますに、おそらく字幕等も含め、前回発売されたものと内容は全く同一であることが考えられます。

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前回の字幕検証記事に対しまして沢山のコメントをいただきましてありがとうございました。
その中から、Fauxさんからいただいたコメントを参照させていただきますと、ジャン=フランソワが兄のリュック・ジャルディと食事するシーンでの私の字幕検証に明らかな誤りがあったようです。
私は、東北新社盤DVDとキネマ旬報シナリオを元に、ジャン=フランソワは「兄よりもマチルドの方を身近に感じる」という解釈の方が正しいのでは?と述べましたが、どうやらUPJ盤の「兄をとても身近に感じる」という方が正しいようです。
訂正してお詫びいたします。

さて、個人的に、今回のUPJ盤DVDの字幕で一番問題と思われるのは、ジャン=フランソワがドイツ軍に逮捕された後にドイツ軍の士官に尋問されるシーンではないかと思います。
このシーンの前に、ジャン=フランソワは、デュポン氏なる人物を“レジスタンスと関係がある”と密告する手紙を出すわけですが、そもそもデュポン氏とは誰かという解釈によって、映画の意味合いが大きく変わってきます。

まず、今回のUPJ盤の字幕を見てみましょう。
ジャン=フランソワがゲシュタポ本部の士官の前に連行される直前に、ドイツ軍の下士官の言葉があるのですが、その部分からです。

UPJ盤
下士官の声 『この男は?』
別の下士官の声 『匿名のタレコミです』
下士官(士官に向かって) 『匿名の密告者です』
(略)
士官 『デュポンをよく知っているんだね』
ジャン=フランソワ 『もちろんです』
士官 『君の組織の名は?』
ジャン=フランソワ 『何のことですか?』
士官 『言わないつもりかね 君の消息が途絶えてしまってもいいんだな』

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このUPJ盤の字幕においては、明らかにドイツ軍士官は、ジャン=フランソワを、デュポン氏なる人物を密告した人間、つまり、デュポン氏とは全くの別人として捉えていると解釈できるでしょう。

次に東北新社盤の字幕です。

東北新社盤
下士官の声 『誰だ』
別の下士官の声 『投書にあった男です』
下士官 (士官に向かって)『問題の男を連行』
(略)
士官 『デュポンというのは偽名だろう』
ジャン=フランソワ 『違います』
士官 『どんな組織に属している』
ジャン=フランソワ 『何の話ですか』
士官 『とぼけるな このまま銃殺になればお前は誰にも知られないぞ』

東北新社盤の字幕では、UPJ盤とは異なり、ドイツ軍士官は、デュポン氏=ジャン=フランソワとして捉えているというように解釈できます。
ただ、ジャン=フランソワの『違います』という受け答えは、否定肯定どちらとも捉えられないこともなく、その意味で問題がありますが、大筋では大きな問題ではないでしょう。

この二つの字幕の違い、解釈の違いは大きな問題ではないでしょうか。
なぜなら、UPJ盤字幕の解釈では、ジャン=フランソワが、デュポン氏なるレジスタンス活動家を密告する、卑劣な裏切り者となってしまいます。
一方、東北新社盤の解釈では、デュポン氏=ジャン=フランソワ、つまり、ジャン=フランソワは自らを密告したのだということが理解できます。
この部分は、ジョゼフ・ケッセルの原作にはない、この映画のオリジナルな部分ですが、それだけに、『影の軍隊』という映画作品を理解する上で、とても重要な部分だと思われますので、この違いは看過できません。

ちなみに、『キネマ旬報』のシナリオはこうなっています。

『キネマ旬報 1970春の特別号 NO.520』シナリオ
下士官の声 「こいつは何者だ?」
フランス人ゲシュタポ 「密告で捕まった奴ですよ」
下士官 「密告によってたい捕された奴であります」(原文ママ)
(略)
士官 「デュポンというのは、おまえの偽名だろう?」
ジャン=フランソワ 「まあね」
士官 「おまえが属する組織は?」
ジャン=フランソワ 「何の話ですか?」
士官 「トボケると、ためにならんぞ。おまえは偽名のまま銃殺されて、行方不明という扱いになるんだぜ……」

このシナリオの解釈が、東北新社盤の字幕の解釈に近いことは明らかですが、この部分は重要ですので、念には念を入れて、クライテリオン盤の英語字幕を見てみたいと思います。

クライテリオン(Criterion)盤
下士官の声 「Who is this man?」
別の下士官の声 「The man denounced in the letter.」(注:「denounced」=告発された)
この後ドイツ語の英語字幕なし。
士官 「Naturally, Dupont is the only name you have.」
ジャン=フランソワ 「Naturally.」
士官 「What organization are you with?」
ジャン=フランソワ 「I don't understand.」
士官 「You know the risk you're taking? Being shot under a false name. Your fate would remain a mystery.」

「the only name」という表現が気になるところですが、「唯一の名前」という意味ではなく、“名前だけ”または“上辺の名前”、つまりは“偽名”という意味として捉えられると思います。
ですから、士官の言葉の意味は、「当然、デュポンというのはお前の偽名だな」ということになりますし、ジャン=フランソワの返事は、「もちろんです」という意味になると思います。
この解釈は、「キネマ旬報」のシナリオの解釈と全く同じと考えてよいでしょうし、大筋では東北新社盤の字幕の解釈と同じと考えてよいでしょう。

第一、ドイツ軍士官は、ジャン=フランソワをデュポン氏本人だと認識するからこそ、「おまえの属する組織は?」と問うわけでしょう。
UPJ盤の字幕のように、ジャン=フランソワとデュポン氏が別人だとすれば、ドイツ軍士官は、ジャン=フランソワに対し、デュポン氏の属する組織を問い質すべきだと思いますが、なぜか、ジャン=フランソワ自身が属する組織を問うているのは不思議です。

ちまみに、本『サムライ』(ルイ・ノゲイラ著 井上真希訳 晶文社刊)においては、メルヴィルに対してノゲイラが、「なぜジャン=フランソワは、映画では、ゲシュタポに自分で自分を告発する匿名の手紙を送るのですか?」と問うている箇所もあります。

クライテリオン盤DVD『影の軍隊』ブックレットにはこのインタビュー部分の英訳も載っていますが、それは以下の通りです。
「WHY, IN THE FILM, DOES JEAN-FRANCOIS SEND THE GESTAPO THE ANONYMOUS LETTER DENOUNCING HIMSELF?」(注:「ANONYMOUS」=匿名の、「DENOUNCE」=告発する)
この部分を読む限り、翻訳本の訳に問題は全くないと考えられるでしょう。
この言葉の意味は、もちろん、東北新社盤、『キネマ旬報』シナリオ、クライテリオン盤と同じく、“デュポン氏=ジャン=フランソワ”という解釈と重なるものです。

つまり、今回のUPJ盤の字幕は明らかに誤りだと思われます。
UPJ盤の字幕を読む限り、ジャン=フランソワは、レジスタンス活動から身を引き、その上、デュポン氏なるレジスタンス活動家をも密告した卑劣な裏切り者として解釈されます。
なるほど、UPJ盤のパッケージの裏側には、「ジャン(ジャン=ピエール・カッセル)の裏切りによってアジトが急襲されるに及んで組織は逼迫。」なる記述があります。
おそらく、日本盤製作担当者が、この字幕を観た上で文章を書いたのでしょう。
このシーンの後に、ジェルビエらにアジトとして敷地を貸していたタロワール男爵が銃殺されたというナレーションの入るシーンがありますので、担当者は、もしかすると、デュポン氏をタロワール男爵と誤解して捉えているのかもしれません。
今回のUPJ盤DVDで、初めてこの作品を観る人も多いと思われますが、この字幕によって、(担当者と同様に)映画の内容を誤解する恐れがあるということは大変残念なことだと言えましょう。

このブログでも何度かお知らせしていますが、先日、ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンから『影の軍隊』の新しい国内盤が発売になりました。
一番気に掛かるところは画質が良いのか否かというところだと思うのですが、HPのDVDのページに書きましたように、撮影監督ピエール・ロム監修によって修復されたマスターが使われており、その点に関しては、まずは満足の行くものではないかと思われます。

さて、このブログでは、当DVDのもう一つのの大きな問題として、字幕の問題を何回かに分けて取り上げようと思います。
とはいえ、通常、私は字幕を検証しながら映画を観るという行為はほとんどしません。
英語仏語ともにダメですので、字幕から得る情報に頼り切りなのが実情で、その内容が正しいか否かを検証する余裕など全くと言ってよいほど無いからです。
しかし、今度のDVDを観ていて特に気になったのは、それまで観ていた東北新社盤DVDとの字幕の相違がなにかと目に付くという点でした。
今回のDVDは、東北新社盤とは全く異なる新しい字幕ですので、表現の違いはあってもむしろ当然ですが、それどころか、字幕一つによって、映画の内容、ストーリー、観る側の解釈まで変わってきかねない問題を含んでいる部分があると感じたのです。
そう思われる、いくつかのポイントについて、東北新社盤DVDの字幕と照らし合わせながら検証してみたいと思います。

とはいえ、この映画はフランス映画ですから、本来であれば、フランス語の音声が聞き取れればごく単純な問題なのですが、不幸にも当方にはその能力がありませんので、このような紛らわしい方法を取らざるを得ないことをお詫びいたします。

また、二つの字幕で意味合いが異なっていると思われる点については、時にはクライテリオン盤の英語字幕や、「キネマ旬報 1970 NO.520」に掲載された、三木宮彦氏による『影の軍隊』のシナリオ、または本『サムライ』(ルイ・ノゲイラ著 井上真希訳 晶文社刊)も交え、検証してみたいと思います。
もちろん、一瞬で観客に言葉の意味を伝えなくてはならない字幕と、一字一句記載してあるシナリオとは言語表現がある程度は異なって当然ですが、それだけに、シナリオには、字幕には表れない細かいニュアンスが表現されていることが多く、参考になると思われるからです。

まず、当DVD(以下UPJ盤)においては、以下のように、東北新社盤とは役の名前の表記が異なるものがありますが、これは少々違和感こそありますが、さして大きな問題ではないでしょう。

東北新社盤:リュック・ジャルディ→UPJ盤:ルク
東北新社盤:マチルド→UPJ盤:マチルダ

まず、検証してみたいのは、映画冒頭に登場するクールトリーヌの言葉の字幕です。

d94364bf.jpegUPJ盤
『“悪しき思い出もまた懐かしきなり”』

東北新社盤
『この映画の登場人物は実在し 事件は事実にもとづいている』

全く意味の内容が違いますが、東北新社盤はひどい間違いです。(これに関してはちゃんとフランス語辞書を引いて調べました)
UPJ盤は間違いではありませんが、本『サムライ』の翻訳が一番丁寧で、原文に近いと思われます。

『サムライ』(ルイ・ノゲイラ著 井上真希訳 晶文社刊)
『いやな思い出だ!しかし、ようこそ、はるか彼方の青春時代よ』

それに比べ、今回のUPJ盤は意味は伝わるものの、少々大雑把な印象も残ります。

次に、ジャン・フランソワが兄のリュック・ジャルディを訪ねて一緒に食事をするシーンでのジャン・フランソワの独白についてです。

b7d6f47f.jpegUPJ盤

『なぜだろう わからない 大好きな兄さんを僕はとても身近に感じた 一緒に過ごした記憶なんてほとんどないのに』

東北新社盤
『兄よりマチルドの方がよほど身近な感じがした 昔から愛してきた兄よりだ 思い出以外に共通点がないからか』

真逆といってよいほど意味が違います。
ちなみに、『キネマ旬報』のシナリオはこうです。

キネマ旬報シナリオ
「マチルドを知ったことは、僕に苦痛をもたらした。彼女が兄よりちかしくなることはないかしら。僕はもちろん変わりなく兄を愛している。しかし、共通点はない。」

多数決を取るつもりはありませんが、これを見る限り、今回のUPJ盤のニュアンスは間違っているのではないかと思われますがいかがでしょうか。

次に、イギリスに着いたリュック・ジャルディとフィリップ・ジェルビエが、自由フランス軍のパッシー大佐と会見するシーンにおける、パッシー大佐のセリフの字幕です。

2bb0e34e.jpegUPJ盤
『武器の調達は無理だった イギリスはわが国のレジスタンスに理解がないし 武器は自国に取って置きたいんだ 私が通信面で協力しよう 無線士を多数 送りこむ また人を差し向けて滑走路を直すことを約束する』

東北新社盤
『武器を全部は送れない 我が国はレジスタンス運動に期待していないし 航空機はドイツ爆撃に回したい だが通信網は強化しよう 相当数の無線要員を派遣する 着陸可能地も増やしたい その対策要員も送る』

東北新社盤の字幕は、まるでパッシー大佐(自由フランス軍)がイギリス人であるかのような表現となっています。
その意味でも、今回の字幕の方が良いと思いますが、後半の方などは東北新社盤の方が丁寧な訳という印象もあります。

今回はとりあえずこんなところですが、次回は、今回のUPJ盤DVDの字幕で最大の問題点と思われる、ジャン=フランソワがドイツ軍に捕まったシーンについて検証する予定です。

待望の『影の軍隊』の国内DVDが届きました。
15bc6c09.jpeg時間が取れなくて、実はまだ途中までしか観ていないのですが、ちょっと見比べた感じでは、画質はクライテリオン盤に拮抗する美しさです。
HPのBBSである方から、映画冒頭部分のキャストの名前のロゴが切れるとの報告がございましたが、私の自宅のテレビ(ワイド37型液晶)ではそのようなことはありませんでした。
画面構成も、私が観る限り、クライテリオン盤とほとんど(99%以上)変わらないと言ってよいと思います。
音声もAmazonの一部で心配されていた英語ではなく、ちゃんと仏語です。

良くも悪くも新鮮なのが字幕で、東北新社盤の字幕に慣れているせいか、ところどころ「?」の付くシーンがあります。
東北新社盤よりも丁寧と思われる部分もあり、現段階ではどちらがどうとは言えませんが・・・。
この辺り、全部観終わりましたら、整理してみたいと思います。

あと、PAL原盤特有のスピードアップのため、確かにピッチは高くなっています。
これもクライテリオン盤と比較して確かめました。
私は鈍感なせいか、今回の国内盤のみ観ている限りではさして違和感を感じませんが・・・。

とりあえず、現段階ではそんなところです。
また後ほど、字幕の問題も含め、改めて内容を検証してみたいと思います。

トップページのNEWSでもお知らせ済みですが、『影の軍隊』の国内盤DVDが11月8日に発売決定です。
この情報をお知らせ下さったエリセさん、ありがとうございました。
発売元のユニバーサル・ピクチャーズのページはこちら

言うまでもなく、『影の軍隊』の国内盤DVDは東北新社より2003年に発売されていました。
bcefadf1.gifしかし、2005年初めくらいに廃盤になり、Amazonのユーズドやネットオークションでも1万円前後ぐらいにまで価格が高騰していました。
海外では、昨年のアメリカ初公開の際の好評もあってか、今年に入ってからクライテリオン盤、HD DVD盤と続々発売になり、なんで日本では出てないんだ!との思いが強くなる一方でしたので、今回の嬉しさは格別ですね。
しかも、今回のDVDは初回生産限定とはいえ、なんと1500円という廉価盤での登場です。
Amazonでも予約が始まっていまして、こちらは10%オフです。
出る時はアッサリ出るものですが、これまでこの作品をご覧になっていなかった皆様も、これを機会に是非観ていただきたいと思います。

気になる盤の質ですが、情報を下さったエリセさんのお話ですと、「UK盤のローカライズ仕様なのでPAL/NTSC変換マスター、そのため尺が139分とやや短めになっていて、日本語字幕もおそらくイギリスで制作されているのでヘンテコ翻訳になる可能性が高いのですが、画質は問題ないと思います」とのことです。
字幕に関しては、また発売後におかしなところがあるかどうか検証してみたいと思います。
11月が待ちきれない!感じですが、メルヴィルの作品はやはり冬が似合うので、この時期の発売もある意味納得です。
とにかく発売が楽しみですね。

『影の軍隊』クライテリオン盤DVDの特典ディスクに収録されている、“JEAN-PIERRE MELVILLE,FILMMAKER”なるメルヴィルのドキュメンタリー映像の内容を紹介します。

これは『影の軍隊』撮影時の69年にフランスのテレビ局によって製作された小ドキュメンタリーで、4分という短いものですが、大変中身が濃く、興味深いものです。
ナレーションと共に、メルヴィルのスタジオ?でのインタビューの模様が流れ、『影の軍隊』のメイキング映像がいくつか紹介されています。
それぞれのシーンは短いものですが、どれもこれも貴重なもので、こんな映像が残っていたとは!という信じられない思いでいっぱいです。

9bc31d18jpeg中でも最も興味深いものは凱旋門でのドイツ軍行進シーンの撮影風景でしょう。
トレンチコート姿のメルヴィルが、マイクを持って兵士の行進に指示を出したり、兵士のヘルメットなどの身なりを直したりする映像が収められています。
ルイ・ノゲイラ著『サムライ』によれば、莫大な経費が掛かったというこの撮影ですが、メルヴィルは心なしか楽しそうな様子。
それもそのはず、『サムライ』には今まで撮ったシーンで誇りに思えるものはこの凱旋門行進シーンと、『いぬ』のクランのオフィスのシーンだけだと語っているくらいですから。
この撮影を実現できて、映画人として嬉しくて堪らなかったのではないでしょうか。

そして、ポール・ムーリッス演じるリュック・ジャルディの家のシーンの撮影風景。
ムーリッス、その弟ジャン=フランソワを演じたジャン=ピエール・カッセルの姿も見えますが、映像で観る限り、笑顔が絶えないリラックスした撮影現場です。
これはメルヴィルのイメージからするとちょっと意外なほど。
ちょうどこの映像の前後に「私はカメレオンだ。セットで冗談を言ったり笑いながら撮影するのが好きな俳優にはそれに合わせるし、そうでない俳優にはそれに合わせるしね。」というメルヴィルのインタビュー音声が重なります。

次にリノ・ヴァンチュラ演じるフィリップ・ジェルビエが映画前半で入れられる収容所で、共産主義者の若者ルグランの仕事場を訪ねるシーンの撮影風景。
こちらは笑顔が見られず、どこか張り詰めた雰囲気です。
先ほどのメルヴィルの言葉からすると、ムーリッスらとのメルヴィルの関係、そしてヴァンチュラとメルヴィルの関係が透けて見えるようです。(実際、この映画の撮影中、メルヴィルとヴァンチュラの関係は最悪で、仕事以外ではろくに口もきかなかったらしいです・・・)

あと、シモーヌ・シニョレ演じるマチルドが喪服を着て、ゲシュタポ本部に浸入するシーンの撮影風景。
この特典ディスクの他の映像の証言からも明らかですが、この作品でのメルヴィルとシニョレの関係は大変良好だったようで、ここでのシニョレには驚くほどチャーミングな笑顔が見られます。
ちょうどそこに「ヴァンチュラ、ムーリッス、カッセル、シニョレとスターが揃った映画だが、この場合、監督こそが一番のスターでは?」というナレーションが被さります。

そこから深夜自室でメルヴィルがシナリオを書いているシーン、別荘の庭で同じくシナリオを書いているシーンが続き、そこに「“芸術”とは、孤独であったり、クリエイターが他の世界と切り離されている時に生まれるものだよ。その意味で映画は芸術とは言いがたいな。夜中の3時に一人で脚本を書く・・・それが私には芸術と呼べるものかな。」というメルヴィルのアーティスト論とも言える音声が被さり、「まさにその意味では、“アーティスト”という言葉ほどメルヴィルに相応しい言葉はない」というナレーションで、この映像は終わります。

クライテリオン盤『影の軍隊』を少しづつ観ています。
本編は一度最後まで観ました。
現段階で気づいた点を挙げてみたいと思います。

385_box_348x490.jpgまず、収録時間ですが、これまで観ていた東北新社盤DVDは137分ですが、今度のクライテリオン盤は145分です。
その8分の違いですが、これまで観たこともないシーンが収録されているという印象はほとんどありません。
照らし合わせたわけではありませんが、私見ですと、ジェルビエがパラシュート落下のために戦闘機に乗り込むシーンあたりが長く収録されている気がしました。

そして、気になる画質ですが、東北新社盤もクオリティは決して低くはないので、クライテリオン盤が目を見張るほど優れているという印象はありませんが(もちろん映像の質感は明らかに上です)、メルヴィル独特のブルー・トーンがここまで徹底した映画だったのかと改めて感じているところです。
この映画に関しては、ブルー・トーンというよりむしろ“グリーン・トーン”と言いたいほど緑掛かった映像美が印象的です。
また、音質の良さも明らかです。

ディスク2に収録された特典映像ですが、メルヴィル・ファンなら堪らないお宝の山です。
フランス公開時にテレビ放送された4分ほどの短い映像は、ドイツ軍凱旋門行進シーンをはじめとするいくつかのメイキング映像とメルヴィルの短いインタビューが観られます。
トレンチコート姿のメルヴィルがマイクを持って、行進シーンを演出しているシーンは夢のような映像で、ちょっと感動的ですね。
他の特典映像についてはまた今度。

あと、ブログのコメントとトラックバックを利用できるようにしましたので、よろしければご利用下さい。

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マサヤ
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趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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