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ジャン・ルノワール監督の『牝犬』を国内盤DVD(紀伊国屋書店)で観た感想。

LA CHIENNE』(31年)
監督・脚本:ジャン・ルノワール 
原作:ジョルジュ・デ・ラ・フシャルディエール 
撮影:セオドア・スパークル 
出演:ミシェル・シモン、ジャニー・マレーズ、ジョルジュ・フラマン

初見。
ジョルジュ・デ・ラ・フシャルディエールの原作を映画化したもの。
この原作は後にハリウッドでフリッツ・ラング監督によって『スカーレット・ストリート』としてリメイクされている(45)。(『スカーレット・ストリート』について以前書いた記事
私はリメイク版の方を先に観てしまったが、どちらも観た印象としては今度観たルノワール版の方がずっといい。
あまり知られていないが、実はジャン=ピエール・メルヴィルもこの作品のリメイクを計画していたらしい。(68年頃。結局実現せず)
それだけ魅力的な題材なのだろう。

それにしてもこのルノワール版はほとんど古さを感じさせない。
1931年の作品としては驚異的である。
ルノワールの演出も冴え渡っており、特に後半が素晴らしい。
ただし、主人公の妻アデル役の演技は少々やり過ぎ感も感じられなくはないが…。

キャストも、ミシェル・シモンはまさに適役であり、ヒモ男を演じたジョルジュ・フラマンが実にいい。
ヒロインのジャニー・マレーズはラング版のジョーン・ベネットに比べると“女としての魅力”は遥かに劣るのだが、役柄として違和感が感じられないのは不思議なくらい。
もしかしたら作品のヒロインのイメージに近いのはジャニー・マレーズの方かもしれない。

総じてラングの『スカーレット・ストリート』の方が描写が丁寧なのかもしれないが、ストーリー的に破綻の感じられないのはむしろこの『牝犬』の方だ。

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ジャン・ルノワール監督の『浜辺の女』を国内盤DVD(IVC)で観た感想です。

d70be1b3.jpegTHE WOMAN ON THE BEACH』(46年)
監督:ジャン・ルノワール
脚本:ジャン・ルノワール、フランク・デイヴィス
撮影:ハリー・ワイルド
音楽:ハンス・アイスラー
出演:ジョーン・ベネット、ロバート・ライアン、チャールズ・ビックフォード

初見。
ジャン・ルノワール監督がアメリカ時代に撮った作品の一つで、フィルム・ノワール的色彩の濃い作品。
内容は暗く、人間の情念や妄執を描いた作品なので、一般的なルノワールらしいイメージの薄い作品と言えるかもしれません。
登場人物たちの心理も複雑かつ怪奇なので、その点でも評価が分かれそうですが、ストーリーは決して分かりにくくはなく、キャストの素晴らしさもあって、個人的にはかなり楽しめた作品でした。

ストーリー的には破綻しているように感じられる点もあり、ジャン・ルノワールが本当にこの映画を撮りたかったのか、また気に入っていたのか、非常に気にかかるところですが、結果的に、こういった“らしくない”作品を撮ったルノワール監督の幅広さ、奥深さを感じさせられる作品となっているのではないでしょうか。

e8b99839.jpegキャスティングでも、ジョーン・ベネットロバート・ライアンの共演という、ノワール・ファンには見逃せない作品でもありますが、この作品で一番印象的なのは失明のために画家の道を断念せざるを得なくなったトッドを演じたチャールズ・ビックフォードではないでしょうか。
本当に失明しているのかどうか怪しいトッドの存在感の不気味さが気に入りました。

ヒロインのジョーン・ベネットは、この時代によく出演していたフリッツ・ラング作品ほどの輝きや“らしさ”は感じられませんでしたが、この作品でも適役であることは間違いありません。
ロバート・ライアンもさすがの存在感で、とりわけジョーン・ベネットに惚れてしまった後、フィアンセに対する態度の変化の演技が絶妙に上手かったです。

唐突とも思えるラストは、評価が分かれそうですが、個人的には納得しました。

ジャン・ルノワール監督の『大いなる幻影』を国内盤DVD(パイオニア)で観た感想です。

image69.jpgLA GRANDE ILLUSION』 (37年)
監督:ジャン・ルノワール
脚本:ジャン・ルノワール、シャルル・スパーク
撮影:クリスチャン・マトラ、クロード・ルノワール
音楽:ジョセフ・コズマ
出演:ジャン・ギャバン、ピエール・フレネー、エリッヒ・フォン・シュトロハイム、ディタ・パルロ、ジュリアン・カレット、マルセル・ダリオ、ジャン・ダステ

世界映画史上の名作との評価は、むしろ初めて鑑賞する際には邪魔かもしれません。
なぜなら、期待が大きい分だけ、失望感も大きいからです。
私の場合、初めて観たのは劣悪な画質のVHSビデオだったせいもありますが、正直なところ魅力がよく理解できませんでした。
今回でこの映画を観たのは多分3回目だと思うのですが、観る度に良くなってきます。

実際のところ、この年代の映画ともなると、DVDの画質の良し悪しが映画の印象を強く決定付けますが、パイオニアから出ている国内盤DVDは、オリジナルネガからプリントしたというDVDであって、実際画質も満足のゆくものです。
いわゆる500円DVDの画質は観ていないので分かりませんが、ことパイオニア盤を観る限り、素晴らしいクラシック映画を素晴らしい画質で観られるという歓びをじっくり味わえる作品です。

image62.jpgキャストでは、やはりエリッヒ・フォン・シュトロハイムの存在感の素晴らしさを第一に指摘したい。
一つ一つの所作に、まるで歌舞伎役者のようなアクの強さ、大時代的な存在感があり、このような無国籍的内容の映画にピッタリ。
あのメルヴィル監督もシュトロハイムのファンだったようで、ルイ・ノゲイラ著『サムライ』ではシュトロハイムとの邂逅が感動的に語られていました。
相対するピエール・フレネーも地味ながら素晴らしい。
この人の良さもやはり観る度に分かってきます。

この二人に比べるとジャン・ギャバンの存在感はこの時代の他の名作映画ほどではありません。
しかし、ここにジャン・ギャバンがいる、それだけでこの作品がどれだけ充実したものになっているでしょうか。
ギャバンとマルセル・ダリオのコンビが想像以上に良いです。
仲直りするシーンは、泣けます。
この二人は私の知る限りでは『筋金(ヤキ)を入れろ』(55年、アンリ・ドコアン監督)でも共演しています。
以前書いた『筋金を入れろ』のレビュー

今回観て改めて感じたのがジョセフ・コズマによる素晴らしい音楽の魅力です。
それにしても、この映画のタイトルは見事ですね。
映画の途中で、何度かこのタイトルの言葉がセリフとして登場しますが、この映画の内容そのものが“大いなる幻影”と言えるのかもしれません。

ジャン・ルノワール監督の『どん底』を国内盤DVD(ジュネス企画)で観た感想です。

image63.jpgLES BAS-FONDS』 (1936)
監督:ジャン・ルノワール
脚本:ジャン・ルノワール、シャルル・スパーク
撮影:F・ブルガース、ジャック・メルカントン
音楽:ジャン・ウィエネル
出演:ジャン・ギャバン、ルイ・ジューヴェ、シュジー・プリム、ジュニー・アストル、ウラジミール・ソコロフ、ジャニー・オルト

 
ロシアの文豪ゴーリキーの原作を映画化したもの。
原作は読んでません。

再見。
ゴーリキーの『どん底』の映画化といえば、黒澤明監督の『どん底』(57年)も有名です。
私も過去に黒澤版を観ていますが、あちらはあまりにリアリティにこだわり過ぎた結果でしょうか、長屋の汚らしさが直に感じられて、正直なところ、素直に楽しめませんでした。
内容はそれなりに面白かったのですが。

それに比べると、 このルノワール版は、ジャン・ギャバンを始めとする“どん底”の住人たちと、ルイ・ジューヴェ演じる落ちぶれ貴族のエピソードがバランス良く、親しみやすい印象。
人々に向ける視線がいかにもルノワール的な温かさという感じ。

image64.jpgそれに、なんといっても、ジャン・ギャバンルイ・ジューヴェの共演がいい。
とりわけ男爵役を演じるルイ・ジューヴェの演技が圧巻
アクの強い俳優なので、これまでは少々苦手と感じることもありましたが、この作品の演技の見事さには脱帽しました。

ジャン・ギャバンの良さも言うまでもなく、実にいきいきとした演技です。
とりわけ怒りの表現が素晴らしい。
ファム・ファタール的役柄を演じるシュジー・プリムの存在感も凄い。
黒澤版で山田五十鈴がやっていたのも強烈な印象でしたが。

“どん底”の住人たちも芸達者が揃っており、バッハのカンタータ風を思わせるジャン・ウィエネルの音楽も映画に溶け込んでいます。

国内盤DVDの画質はこのメーカーのものとしてはまずまず。

ジャン・ルノワール監督の『黄金の馬車』をレンタルビデオで観た感想です。

Le Carrosse D'or』(53年)
a8818e49.jpeg監督:ジャン・ルノワール
原作:プロスペル・メリメ 
脚本:ジャン・ルノワール、ジャック・カークランド、レンツォ・アヴァンツォ、ジュリオ・マッキ、ジネット・ドワネル
撮影:ロドルフォ・ロンバルディ、クロード・ルノワール
音楽: アントニオ・ヴィヴァルディ、アルカンジェロ・ユレッリ、オリヴィエ・メトラ
出演:アンナ・マニャーニ、オドアルド・スパダーロ、ポール・キャンベル、ダンカン・ラモント、ラルフ・トルーマン

初見。
18世紀のスペイン統治下のペルーを舞台にした作品。
コスチュームものは苦手な人も多いのではないか。
かくいう私も、この作品を「コスチュームものか…」とずっと食わず嫌いしていたのだが、今となってはその偏見が悲しい。
内容は素晴らしく面白く、ルノワールに関心があるならば、これは食わず嫌いしてはいけない作品だと思う。
これほど映画を観ている間中、(観る側の)幸福感が持続する作品も珍しい。

とりわけ、アンナ・マニャーニの存在感が圧倒的。
体はそれほど大きくない人だと思うのだが、なんというか存在感で非常に大きな人に見えてしまう。
マジックである。
彼女を争う3人の男たちはどこかしら顔が似ているのが困るが、ストーリー的に、それが活かされている場面もあるのでしょうがないのかもしれない。
私の耳にいつもはつまらなく聞こえるヴィヴァルディの音楽が、この映画では魅力的に響く。
カラー映像も美しく、是非DVDで観たい作品だ。

ジャン・ルノワール監督の『ピクニック』を国内盤DVDで観た感想です。

194e4d3b.jpegUne Partie de Campagne』(36年 完成は46年)
監督:ジャン・ルノワール
脚本:ジャン・ルノワール、ギイ・ド・モーパッサン 
撮影:クロード・ルノワール 
音楽:ジョセフ・コズマ 
出演:シルヴィア・バタイユ、ジョルジュ・ダルヌー、ジャヌ・マルカン、ジャック・ボレル、ガブリエル・フォンタン

 
紀伊国屋から出ているDVDを所有しているが、これで2回目の鑑賞。
DVDの画質はとても良い。

助監督に、ジャック・ベッケルルキノ・ヴィスコンティイヴ・アレグレアンリ・カルティエ=ブレッソンという、嘘じゃないかという凄い面々。
様々な事情が絡んだ結果、途中で撮影が中止となってしまった作品だが、戦後プロデューサーのピエール・ブロンベルジェの尽力によって完成した。(ピエール・ブロンベルジェはメルヴィルの『海の沈黙』のプロデューサーでもありました)
僅か39分の映画となってしまった作品なのだが、その見応え、満足感は2時間ものの傑作映画に勝るとも劣らない!

自然、森、川、水、雨、そして性と、ルノワール映画のエッセンスが、奇跡的にブレンドされており、この映画の官能性は、どんなエロビデオよりもエロいんじゃないか、と思う。
DVDには撮影風景が本編以上の長時間収録されているが、それらもなんとも貴重な映像である。
とりわけ、本編以上に濃厚なキスシーンを撮っていたことに驚かされる。
ブランコに乗るシルヴィア・バタイユを正面から捉えたカットの素晴らしさには言葉もない。
ジョゼフ・コスマの音楽も素晴らしく、どこかヴェルディやプッチーニ、マスカーニなどの最上のイタリアオペラを彷彿とさせる。

気になる点は、男優陣のキャラ、風貌にことごとく魅力がない点だが(カフェの主人役のルノワール本人除く)、シルヴィア・バタイユ一人の魅力が全て帳消しにする。
雨のシーンが凄い!

またしてもジャン・ギャバン出演作の『獣人』(ジャン・ルノワール監督)を国内盤DVDで観た感想です。

image152.gifLA BETE HUMAINE』(38年)
監督:ジャン・ルノワール
原作:エミール・ゾラ
脚本:ジャン・ルノワール
撮影:クロード・ルノワール、クルト・クーラン
音楽:ジョセフ・コズマ
出演:ジャン・ギャバン、フェルナン・ルドー、シモーヌ・シモン、ジュリアン・カレット、ジェラール・ランドリ、ジャン・ルノワール

エミール・ゾラの原作を映画化したもの。
この映画の国内盤DVDは随分前に買ってあったものの、観ていませんでした。
その間に、この映画のリメイク作であるフリッツ・ラング監督の『仕組まれた罠』(54年)の方を先に観てしまいました。
ラング版は今となっては内容をよく覚えていないながらも、印象としてはイマイチに感じてしまったのですが、このルノワール版はさすがに素晴らしい出来です。

機関士ジャック・ランチエ役のジャン・ギャバンが、もともと大酒飲みの家系の遺伝で、衝動的に暴力に駆られるという難しい役柄。
普段は大人しいナイスガイなのですが、その病気の一点のせいで、観ていてなかなか合点が行かないというか、理解しがたい役柄となっています。

image153.gif個人的には、嫉妬に狂ったフェルナン・ルドー演じる助役の方がよほどヒステリックで獣人に感じられましたが、シモーヌ・シモン演じる助役の美しい妻を巡る様々な演出が上手いので、知らず知らずのうちにストーリーに惹き込まれてしまいます。
その悪女ぶりは、先日観た『殺意の瞬間』でのダニエル・ドロルムほどのどぎつさはないものの、これもまたファム・ファタールものと言え、ジャンルとしてはフィルム・ノワールに区分けされる作品でしょう。
シモーヌ・シモンのネコっぽい風貌は、その後のクラウディア・カルディナーレ、今でいうとキャサリン・ゼタ・ジョーンズあたりを思い起こさせます。
個人的には少し微妙な顔つき…(笑)。

機関士役のジャン・ギャバンも当然魅力的で、とりわけ、後半が名演。
スクリーンプロセスを使わず実写にこだわったという蒸気機関車の疾走シーンが、少しくどい印象はあるものの、さすがに迫力満点ですし、機関士たちの仲間内の人間関係が細やかに丁寧に描かれている点はルノワール的と言えるかもしれません。
そのジャン・ルノワールが、誤認逮捕されて殺人の容疑者となってしまう役柄で、俳優としても登場します。

最後に、パイオニアによるこの映画の国内盤DVDは、DVD制作スタッフがきちんと明記されている上、付属の冊子も4ページながら読み応えがあり、好印象でした。
画質も、キズがところどころ目に付くものの、観やすかったと思います。

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テンプレ作った人:おみそ
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マサヤ
性別:
男性
趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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