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以前このブログでもお知らせしました“映画の國 名作選Ⅲ ロベール・ブレッソンの芸術”(上映作品『スリ』『ラルジャン』)の公式サイトがオープンしていました。(リンク

渋谷シアター・イメージ・フォーラムで6月25日から7月15日までの上映が決定しています。

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紀伊国屋レーベルの紹介サイト『映画の國』の劇場上映作品のページを見ますと、“映画の國 名作選Ⅲ”として初夏にはロベール・ブレッソン監督の不朽の名作『スリ』と『ラルジャン』がニュープリントで劇場公開されるようです。

この2作品に関しましてはやはり紀伊国屋レーベルから出ているDVDを私は所有していますが(以前書いた『スリ』のレビュー)、どちらの作品のDVDも画質は良好でしたので、今度のニュープリントは楽しみです。
また、ブレッソン作品をスクリーンで観られる機会は少ないので、その意味でも貴重な機会となりそうです。

ロベール・ブレッソン監督の『湖のランスロ』を国内盤DVDで観た感想。

LANCELOT DU LAC』(74年)
監督・脚本:ロベール・ブレッソン
撮影:パスクワリーノ・デ・サンティス
音楽:フィリップ・サルド
出演:リュック・シモン、ローラ・デューク・コンドミーナ、アンベール・バルザン、ウラディミール・アントレク=オレスク、パトリック・ベルナール 
 
初見。
中世の騎士道伝説を主題とした作品で、ロベール・ブレッソン監督が長年映画化を夢見ていたのだという。
ストーリーは分かりにくいところはあるが、ブレッソン作品では追いやすい方か。
しかし、さりげないようでいてどこか冷酷無比な恐ろしさを感じる作品だ。

例によって、出演俳優は無名の素人ばかりであり、その棒演技と抑揚のないセリフ廻しは気にならないと言ったら嘘になるが、ブレッソン流の確信犯的行為?だから致し方ない。
ランスロ役の俳優はルックス、存在感ともに決して悪くはないが、もう少し若い俳優だったらもっと良かったかも。

一方で、撮影はヴィスコンティの『ベニスに死す』(71)の撮影監督だったパスクワリーノ・デ・サンティス
その美しいカラー映像はさすがに見事。
また、あのフィリップ・サルドが音楽を担当というのが意外でもあり、映像に合っているのか合ってないのか分からない音楽がかえって面白い。
鎧の当たる音、擦れる音も全篇にわたって印象的である。

ロベール・ブレッソン監督の『少女ムシェット』を国内盤DVD(紀伊国屋レーベル)で観た感想。

7bd0e42a.jpegMouchette』(67年)
監督・脚本:ロベール・ブレッソン
原作:ジョルジュ・ベルナノス
撮影:ギスラン・クロケ
音楽:モンテヴェルディ、ジャン・ウィエネル
出演:ナディーヌ・ノルティエ、ポール・エベール、マリア・カルディナール、ジャン=クロード・ギルベール

初見。
前作『バルタザールどこへ行く』(64年)に続いて、不幸な少女を主人公にした作品。
原作のジョルジュ・ベルナノスは同じくロベール・ブレッソン監督の『田舎司祭の日記』(50年)の原作者でもある。
この映画では主人公を取り巻く人間関係に関する説明がないので、始めはその点が少々分かりにくいが、全体的に観れば必ずしも複雑な話というわけではなく、その意味では難解な映画ではない。

それにしても、全く救いのない暗い映画である。
この作品を撮ったブレッソン監督にどういう意図があるのかは計り知れぬが、ムシェットという少女に対する同情や憐みは少なくとも描写の中には全くと言ってよいほど感じられない。
そのあたりの厳格さ?はいかにもブレッソン監督らしい作品といえるが、こと美しさにおいては『バルタザールどこへ行く』ほどの魅力は感じられない。
題材的にもこの映画を好きと言える自信はとてもないが、観る者を惹きつける、なんともいえない魅力が感じられるのもまた確かである。

とりわけ、全篇で唯一の明るいシーンといえる、遊園地のバンピング・カーでムシェットが遊ぶシーンが忘れがたい。

ロベール・ブレッソン監督の『バルタザールどこへ行く』を国内盤DVD(紀伊国屋書店)で観たのでその感想です。

image83.jpgAU HASSARD BALTHAZAR』(64年)
監督・脚本:ロベール・ブレッソン
撮影:ギスラン・クロケ
音楽:シューベルト
出演:アンヌ・ヴィアゼムスキー、フィリップ・アスラン、ナタリー・ショワイヤー、ヴァルテル・グレーン

初見。
正確に言えば再見なのですが、前回は途中で観るのを諦めました。
その簡潔で厳しい世界に面食らってしまい、観通すことができなかったのです。
前回観たのはイマジカから出ていた旧国内盤DVDでしたが、今回観た紀伊国屋から出ている新たな国内盤DVDはさすがに画質が良くなっていました。

それにしてもこれは…大変な作品。
なんというやるせない物語でしょう。
残酷なシーンもありますが、言葉では言い表せないほど美しい映画です。
ロバの眼があんなに美しいとは思いもしませんでしたし、ラストの素晴らしさなんて…。

これまでブレッソン作品をいろいろ観てきた中では『抵抗』がなんといってもダントツに魅力的な作品でしたが、この作品は趣向こそ違えど、それに肉薄する魅力を湛えた作品だと思いました。
ブレッソン監督の大傑作の一つと言ってよいのではないかと思います。

image82.jpg主演はゴダールの『中国女』の主演等でも知られるアンヌ・ヴィアゼムスキー
素晴らしいです。
演技どうこうというより、なにより存在感が作品の世界観にピッタリ合っています。
ちなみに、私は『中国女』も意外と好きな作品。
中国女』の後ヴィアゼムスキーとゴダールは結婚しましたが、別れたそう。

全篇で使われているピアノ音楽はシューベルトピアノ・ソナタ第20番
たぶん、その第2楽章でしょう。
ブレッソンとシューベルト…相性良過ぎです。
ちょっと話は変わりますが、シューベルトは学生時代好きでよく聴いており、この曲も昔マレイ・ペライアの生演奏をサントリーホールに聴きに行ったこともありますが、肝心の第2楽章で寝てしまった思い出が…。

撮影はジャック・ベッケルの『』(60)等でも知られるギスラン・クロケで、この作品でも見事なカメラワークが随所に見られます。

今回観たDVDのブックレットは、作品の内容や製作の経緯、裏話にまで及んだ大変詳しいものなので、大変読み応えがありました。
このあたりはさすがに紀伊国屋。

ロベール・ブレッソン監督の『スリ』を国内盤DVD(紀伊国屋書店)で観た感想です。

85a3aae6.jpegPICKPOCKET』(60年)
監督・脚本:ロベール・ブレッソン
撮影:レオンス=アンリ・ビュレル
音楽:ジャン=バチスト・リュリ
出演:マルタン・ラサール、マリカ・グリーン、ジャン・ペレグリ、ピエール・レマリー、カッサジ、ピエール・エテックス

再見。
ロベール・ブレッソン監督作品の中では比較的親しみやすい(?)方の作品だと思います。
実際、タイトルや内容のインパクトもあって一般的にも広く知られている作品でしょう。

やはり、ここでも素人の俳優を使っていますが、他のブレッソン作品の出演俳優同様に眼に独特の力があり、素人であることが欠点になっていません。
主人公のミシェルを演じているマルタン・ラサールは、一見ヘンリー・フォンダに顔が似ていると思います。
ちなみに私、ヘンリー・フォンダ苦手なんですよね。
ですから、私はマルタン・ラサールも苦手です。
だから何って感じですが…。

この主人公もブレッソン作品らしく、どうしようもなく暗いです。
しかし、暗いからといって観るのがイヤにならないのがブレッソン作品の不思議なところです。
マルタン・ラサールが主人公のイメージにピッタリなのもまた確かですし、レオンス=アンリ・ビュレルによるモノクロの映像美もまた作品のイメージに合っていて魅力的です。

3a2918d1.jpegそれと、駅構内から列車の中における連続したスリのシーンはやはり印象的です。
あの手の鮮やかな動きは凄いですね。
本当にあんなに上手くいくのかなぁという疑問もありますが…スられる人って意外と気付かないものなんでしょうか(笑)。

ただ、この作品は、セリフの意味が分かりにくいのが難点です。
特に主人公と刑事の会話が分かりにくい。
以前観た時は、私に理解力の無いせいか、もしくは字幕のせいかと思いましたが、かのジャン=ピエール・メルヴィルもこう言ってます。

“『スリ』も私の大好きな映画だが、まったくいい出来というわけではない。台詞に原因があるとしか思えないだろう?私はそう信じるほうに傾いている。あの台詞は空々しく聞こえるからね。(中略)ブレッソンの描く人物像は私がいいと思うような形で自己表現したためしがない。それに対して、行為の動機と同様、動作の物腰は、常にブレッソン作品で気に入っているものだ。『スリ』はすばらしい失敗作だな。”(引用―『サムライ―ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』ルイ・ノゲイラ著 井上真希訳 晶文社刊 より)

一方で、フランスの映画評論家マルセル・マルタン氏の評。

“この作品は(引用注:ブレッソンの『抵抗』のこと)、映像、台詞、音楽の完全な非ドラマ化によって特徴づけられている。『スリ』はこの発展の到達点であり、またブレッソンの最高傑作のように思える。ここでは、劇的で造形的な禁欲性は、フレーミングと人物の動きの厳格な様式化のために、何よりも拒絶、つまり描写と心理の拒絶に基づいている。”(引用―『フランス映画 1943-現代』マルセル・マルタン著 村山匡一郎訳 合同出版刊)

824fcc03.jpegキャストでは他にジャンヌ役のマリカ・グリーンの美しさが目を惹きます。
彼女は後に本格的に女優になったとのこと。
DVD付属のブックレットによれば、彼女はルネ・クレマンの『雨の訪問者』(70)にも出ているらしいのですが…先日観ていて全然気付きませんでした。

スリ・グループのリーダー?(カッサジ)も、セリフはないのに、やけに存在感ありましたね。
解説ブックレットによれば、あの人、本物のスリのようで、この映画の“スリ技術指導”も兼任しています。

ちなみに、この映画のラストは個人的には納得しずらかった感があります。

ロベール・ブレッソン監督の『田舎司祭の日記』をレンタルビデオで観た感想です。

177d82b3.jpegLE JOURNAL D'UN CURE DE CAMPAGNE』(50年)
監督・脚本:ロベール・ブレッソン
原作:ジョルジュ・ベルナノス
撮影:レオンス=アンリ・ビュレル
音楽:ジャン=ジャック・グリューネンヴァルト
出演:クロード・レデュ、ジャン・リヴィエール、ニコル・ラドラミル、マリ=モニーク・マイケル・バルペトレ  

 
初見。
ロベール・ブレッソン監督の長編第3作で、一般的にこの作品でブレッソン・スタイルが確立したと言われているようです。
実際、この作品は、これ以前の2作よりも更に虚飾を排し、一層ストイックで簡潔な描写になっているような感があります。
長編処女作の罪の天使たち(43)と2作目のブローニュの森の貴婦人たち(45)については以前紹介した関連記事を参照。

この作品を初めて観た感想は…いやーしんどかった。
何がって眠くて眠くてしょうがなかった…。
司祭のナレーションで作品は進行しますが、呟くようなその声が心地良くって…。

では、面白くなくてつまらない作品だったかというと決してそうでなかったのです。
むしろ、観ている間中、映像に惹きつけられっぱなしでした。
眠気を催したのは、体調やら何やら映画以外の要因もありますので…。

確かに内容は他のブレッソン作品に輪をかけて重苦しく、陰鬱な雰囲気です。
主人公が孤独でネクラなのもいつも通り。
その意味でもいかにもブレッソンらしい作品といえます。

image65.jpg個人的には、主人公の司祭のキャラクターはあまり同情できないし、他に出てくる人物たちもいい人たちばかりではないんですが、観ていて大変惹きつけられる作品でした。
映画が終わるのが惜しいと感じたくらいです。
簡潔な映像の力なんですかね…なんとも不思議な作品です。

ただ、司祭役のクロード・レデュは、ビデオパッケージ等で見て予想していた感じよりもずっと良かった。
眼に表情があり、役柄の繊細さをよく表現していたと思います。

今回、レンタルビデオ(VHS)で観ましたが、画質的にはかなり厳しかったことは事実です。
国内盤DVDも出ていますが、ジュネス企画なので画質が期待できません。
紀伊国屋書店あたりから再発してくれないですかね…。
できることなら、良い画質で味わってみたい作品です。


ところで、ジャン=ピエール・メルヴィルは、この作品のブレッソン・スタイルは自身の監督作『海の沈黙』(47年)に影響されたと考えていたようです。
少々長くなりますが、ルイ・ノゲイラ著『サムライ』から関連部分を引用してみましょう。

“時々、こんな記事を読むことがある(『サムライ』〔一九六七年〕と『影の軍隊』の公開後に書かれたいくつかの批評が念頭にある)。「メルヴィルはブレッソン化している」というものだ。悪いが、常にメルヴィル化してきたのはブレッソンのほうだ!……彼の『罪の天使たち』〔一九四三年〕や『ブーローニュの森の貴婦人たち』』〔一九四五年〕をもう一度見てみたまえ、そうすればその二作はまだブレッソン・スタイルではないのがわかるだろう。それに対して、『田舎司祭の日記』〔一九五〇年〕を見直せば、あれはメルヴィル・スタイルだと気づくはずさ!『田舎司祭の日記』は『海の沈黙』なんだよ!同じカットもいくつかあるぞ!たとえば、クロード・レデュ〔司祭役〕が駅のホームで電車を待っているカットは、私の映画のハワード・ヴェルノンのカットと同じだ……。それからナレーション、ストーリーを語る男の声はどうだ?……そもそもロベール・ブレッソンはアンドレ・バザンに対して弁解しなかった。かつてバザンがブレッソンに私から影響を受けなかったかどうか尋ねた時のことだ。そんなこともすべて、それ以来忘れられてしまったがね……。”
(引用―『サムライ―ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』ルイ・ノゲイラ著 井上真希訳 晶文社刊 より)

簡単に要約すると…ブレッソン・スタイルと人は言うが、もともと俺の『海の沈黙』からパクったものじゃないか?なにより本人が認めているだろ!?俺の方が影響されているなんてとんでもない!…という感じでしょうか。
メルヴィル監督、それなりの名声を得ていたであろう存命中でも随分悔しい思いをしていたようです…。

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テンプレ作った人:おみそ
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プロフィール
HN:
マサヤ
性別:
男性
趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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