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ルネ・クレマン監督の『禁じられた遊び』を国内盤DVD(IVC)で観た感想です。(ネタバレあり

aa98398e.jpegJEUX INTERDITS』(51年)
監督:ルネ・クレマン
脚本:ジャン・オーランシュ、ピエール・ボスト、ルネ・クレマン
撮影:ロベール・ジュイヤール
音楽:ナルシソ・イエペス
出演:ブリジット・フォッセー、ジョルジュ・プージュリー、リュシアン・ユベール、ジュザンヌ・クールタル、ジャック・マラン

再見。
先日ルネ・クレマン監督の『雨の訪問者』の国内盤DVDを購入したのですが、ルネ・クレマンと聞いて突如として気になったのがどういうわけかこの『禁じられた遊び』でした。

もちろん、この作品は何度か観ています。
前回観たのは5~6年くらい前だったでしょうか。
不思議なことに、その時どうも思ったほどには感動できなかった自分がいたのです。
あれほどの名作なのに。
その理由が今までずっと気になっていたのと、あの映画の世界に久々に浸りたいという思いもあって、この作品を観直してみました。

観直してみて、前回感動しきれなかった理由が分かった気がしました。
子供たちの“遊び”のせいで、親たちが無用の争いに巻き込まれていく様が気の毒になってしまい、子供たちに今一つ同情できなかったせいだと思います。
映画のラスト近く、十字架が無くなった真相が判明してからの親たちの怒りは至極尤もであり、当然それは十字架を持って行った子供たちが悪いわけで、その悪い子供たちを不憫とはどうしても思えなかったのですよね。

で、今回観直してみて、前回感じたこととは全く別の思いが頭に浮かびました。
子供たちが大人たちを争いに巻き込んだのではなくて、むしろ、もともとは大人たちが子供たちを自分たちの争いに巻き込んだんじゃないか、と。
つまり、戦争ですね。

もちろん、戦争を起こしている責任者たる政治家たちと、この映画で描かれている村民たちは全く別の人種であるといっていい。
しかし、戦争(爆撃)が原因で、ポーレットは両親と愛犬を亡くし、あの村に一人で辿り着きます。(あの爆撃シーンの激烈さよ)
そこでミシェルという少年と知り合い、その家族に養われるようになり、やがて二人で十字架集めと墓作りという“遊び”を繰り広げるようになるわけですが、決してそれだけでは近隣住民の喧嘩にまでは至らないはずです。
もともと仲の悪い両家だからこそ、小さなキッカケが原因であらぬ疑いが生じ、大喧嘩へと至ってしまうのではないでしょうか。

a8cf13ed.jpegとなれば、十字架集めをした子供たちが一方的に悪いわけではない。
そのキッカケが原因で大喧嘩が生じてしまう、大人たちの心理状況、交友関係も大いに問題なのです。

つまり、この両家の状況を二つの国家に当てはめてみれば、現実世界で戦争を起こしている国々となんら変わらないのです。
それを思えば、この村の大人たちを国家間の戦争を起こしている政治家たちと全く無縁と考えることはできない。
“戦争”は国家だけが行っているわけではないのです。

そう考えると、この映画で描かれている被害者は大人たちではなく、やはり子供たちだと考えられます。
ルネ・クレマンの胸のうちにもそのような思いは当然あったでしょう。
まぁ、この程度のことは、勘の良い方なら、一度この映画を観たら気付くことなのでしょうが…。

それにしても、これは何たる名作でしょうか。
二人の子役ブリジット・フォッセージョルジュ・プージュリーの“演技”の見事さ、村とその住民たちの牧歌的な美しい描写、哀しくも厳しいラスト、そしてサントラを飾るナルシソ・イエペスの名演奏等、その要素は揃いに揃っています。

最後に国内盤DVDについて。
500円DVDまで含めると世に数種類出ていますが、私が観たのは一応ちゃんとしたメーカーの正規(?)盤。
にもかかわらず、画質は到底良好とは言えません。
パッケージに断りこそあるものの、部分的に画面に乱れも出ますし、なにより全篇を通して音が歪んでいて聞き苦しいことおびただしい。
これではイエペスのギターの音色に心から浸ることはできません。
どこか、この名作をしっかりした品質で提供しようというメーカーはないものでしょうかね…。

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無題
いつも楽しく、参考にさせていただいております。
「狼は天使の匂い」を予約したせいで、私もルネ・クレマンと聞くと気になります。
最近、ジョゼ・ジョバンニの「ルジダン」など立て続けに、ほしいDVDが発売されて、財布がカラっからです。
これからもブログ頑張ってください!
ラディカル・デモクラシー 2009/06/09_Tue_12:44:14 編集
コメントありがとうございます。
ラディカル・デモクラシーさん
はじめまして。
コメントありがとうございます。
ルネ・クレマンの作品が続々とDVD化されるのは楽しみですね。
私も『狼は天使の匂い』『ル・ジタン』どちらも予約していますが、お金のやりくりに一苦労です。

このようなブログですが、これからもよろしくお願いいたします。
マサヤ URL 2009/06/10_Wed_00:57:16 編集
初めてのサントラ
初めて買ったサントラが『禁じられた遊び/汚れなき悪戯』でした。ナルシソ・イエペスの音楽は小学生にも分かりやすく、これを最初に聴いたって事でサントラ道の門をくぐりやすかったんだなぁって感じます。ブリジット・フォッセーの天才子役ぶりも強烈な印象でした。
ジュリアン URL 2009/06/12_Fri_23:58:12 編集
禁じられた遊びの音楽
ジュリアンさん
私の経験でも、映画以上に音楽が有名で一人歩きしていたような感があります。
ギター始めると一度はこれ弾きましたよね。
ギター初心者には難関でしたが…。
マサヤ URL 2009/06/13_Sat_02:55:36 編集
イランカラプテ
マサヤさま、イランカラプテ(こんにちは、はじめまして)。イランカラプテは北海道アイヌ言葉「あなたの心にそっとふれさせていただきます」の意。どうぞよろしく。

「イランカラプテ川柳」のおまけです。
☆ 半世紀 いまもどこかで 幼子が…
(美幌梅山)
masaokato.jp
美幌音楽人 URL 2009/07/04_Sat_18:57:26 編集
はじめまして
美幌音楽人さん
コメントありがとうございます。
アイヌ言葉については全然無知なのですが、イランカラプテという言葉は素敵な響きですね。
また何かございましたらよろしくお願いします。
マサヤ URL 2009/07/06_Mon_00:06:13 編集
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趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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