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苦い報酬』はフィルム・ノワールの傑作の一つと目される48年のアメリカ映画。
国内DVD化もされていないし、劇場公開もされていない、幻といえそうな作品であるが、先日レンタルビデオで発見、すぐさま借りてみた。
この作品に関心を持ったのは、紀伊国屋書店から発売されているDVDボックス『フィルム・ノワール傑作選』の付属冊子『フィルム・ノワール手帖』に掲載された『カルト・ノワール25選』に選ばれていたから。
image137.gifそして、あのジョン・ガーフィールド主演作ということもある。

Force of Evil』(48年)
監督:エイブラハム・ポロンスキー
撮影:ジョージ・バーンズ
音楽:デイヴィッド・ラクシン
出演:ジョン・ガーフィールド、
ビアトリス・ピアソン

エイブラハム・ポロンスキーはこの作品が初監督作品であり、ガーフィールド主演、ロバート・ロッセン監督の『ボディ・アンド・ソウル』(47年)というボクシング界を舞台にした映画の脚本家でもあるという。
この作品は半年ぐらい前に観ている。

この『苦い報酬』は、ウォール街を舞台とした、資本主義社会の闇の部分を描いた作品で、ハリウッド映画にしては、実に重苦しい雰囲気を持った作品であり、そのストーリーを簡単に説明するのは難しい。

ナンバーズという数合わせの賭博に不正をすることで、中小規模の胴元を破産させようとするギャングがいて、ガーフィールドが演じる役柄は、そのギャングの弁護士。
ところが、ガーフィールドには小さい胴元を経営する兄がおり、ガーフィールドは兄に不正を前もって知らせて助けようとするのだが、不正を嫌う兄は弟の言うことを聞こうとしない…。
兄弟の対立、兄の秘書の女性(ビアトリス・ピアソン)とガーフィールドの恋愛、そして、ガーフィールドとギャングの対立など様々な要因が絡み合って、かなり複雑な人間模様が展開される。
しかし、演出、演技ともに、とてつもない熱とパワーを感じさせる力作であると思う。

ポロンスキー、ガーフィールドともに、この後赤狩りにあい、ポロンスキーは20年もの間、映画界から締め出され、ガーフィールドは自殺に近い死を遂げることになったといわれている。

image138.gifそういえば、この作品の社会派的な作風、兄弟のやりとりなど、後のエリア・カザン監督の『波止場』(54)を思い起こさせた。
車の後部座席での会話のシーンなどは、『波止場』の有名なシーンの一つだし(この映画では兄弟の対話ではなく、男女の会話だが)、言うまでもなくエリア・カザンも、赤狩りに深い因縁のある人。
また、ガーフィールドの代表作の一つである『紳士協定』(47)の監督もカザンだった。

赤狩り、赤狩りと、直接映画の内容とは関係のない、時代背景ばかり強調するのは、映画の観方としては、決して正しい?ものとは思えないが(実際、私はよく知ってもいないのだが)、それに深い関係のある人たちがかかわっている作品に触れると、どうしてもそのことが脳裏をかすめてしまうのもまた確かである。

事実、この映画でのガーフィールド演じる弁護士役は、清濁併せ呑むといった印象のタフで複雑な役柄であるが、ガーフィールドは役柄そのものになりきっているかのような熱演ぶり。
その演技は、あまりにリアルで、観ていて少々疲れを覚えてしまうほどである。
ヒロインのビアトリス・ピアソンも可憐で魅力的。

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フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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