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レイモンド・チャンドラーの原作小説を映画化した、ディック・リチャーズ監督の『さらば愛しき女よ』を観たので簡単な感想。
『FAREWELL,MY LOVELY』(75年)
監督:ディック・リチャーズ
脚本:デヴィッド・Z・グッドマン
撮影:ジョン・A・アロンゾ
音楽:デヴィッド・シャイア
出演:ロバート・ミッチャム、シャーロット・ランプリング、ジョン・アイアランド
以前読んだ原作小説が面白かったこともあり、この映画を観るのがずっと楽しみだった。
評判の良いロバート・ミッチャムのフィリップ・マーロウ役がどうなっているのかが興味の大半。
観た印象としては、想像以上に魅力的な映画だったという印象。
冒頭のデヴィッド・シャイアによる哀感に満ちたスコアから映画に惹きこまれるが、ストーリー的にも、原作と違和感があまりないし、マーロウを演じたロバート・ミッチャムが期待以上に良かったから。
撮影当時58歳だったというミッチャムは、マーロウ役としては老けていることは間違いないのだが、思ったよりも老けた印象がなかった。
そして、個人的な考えなのだが、こういったハードボイルド映画の一つの条件、それは、帽子を見事に被りこなしているか否かである。
被り方はもちろんだが、帽子の形、サイズ、色などがその人にキチンと合っていなければならないというのは絶対条件。
ハワード・ホークス監督の『三つ数えろ』において、同じくマーロウを演じたハンフリー・ボガートが魅力的なのは、帽子姿があまりにカッコ良くサマになっているということもあるのではないか。
もちろん、トレンチコートの着こなしのカッコ良さも大きいが。
その意味において、この映画のロバート・ミッチャムの帽子の被り方、カッコ良さは見事である。
顔と帽子のバランス、薄いカーキっぽい渋い色目もよく似合っている。
それに加えて、トレンチコートの着こなしぶりも実にサマになっている。
個人的には、これだけでマーロウ役として十分合格。
なんともいえない色気を感じさせるのも、この役には相応しいと思う。
これだけ魅力的だと、あまりにタフでシャープなイメージの強いボギーのマーロウよりも、ミッチャムのマーロウの方が好きだという人がいても不思議ではない。
ちなみに、マーロウと懇意の刑事ナルティを演じたジョン・アイアランドの帽子の被り方も見事であった。
ストーリー的には、小説の面白さに映画は明らかに及んでいないが(あの小説の内容を95分に収めるのは土台無理)、こういった視覚的な魅力が小説にはない大きな魅力である。
もちろん、原作を読んでから観たほうが楽しめるとは思うのだが、映画だけ観ても内容は理解しやすいに違いない。
アムソー役が大女なのは映画ならではの発想だが、これはこれで強烈な印象が残る。
原作にはないジョー・ディマジオの連続安打のニュースがところどころに顔を出すのは余計な感もあるが、40年代の雰囲気が見事に再現されているセットは良かった。
シャーロット・ランプリングは、どうしても『脱出』あたりのローレン・バコールとイメージがダブるが、いかにも退廃的な雰囲気は、当時としても貴重であったと思われる。
あと、シルヴェスター・スタローンがチンピラ役で出演しているのだが、緊張感のない表情に興をそがれる。
ヴィム・ヴェンダースやデイヴィッド・リンチの映画の常連、ハリー・ディーン・スタントンも出ていたみたいだけど、どこに出ていたか気が付かなかった。
それにしても、こんな魅力的な映画がどうしてDVDにならないのか不思議でならない。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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