[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ジョルジュ・ロートネル監督、アラン・ドロン主演作の『チェイサー』を国内盤DVDで観ました。
『Mort d'un Pourri』(77年)
監督:ジョルジュ・ロートネル
撮影:アンリ・ドカ
音楽:フィリップ・サルド
出演:アラン・ドロン(製作も兼任)、モーリス・ロネ、クラウス・キンスキー、ネルネラ・ムーティ、ミレーユ・ダルク、ステファーヌ・オードラン、ミシェル・オーモン
政界の汚職を描いた、ノワール的な色合いの濃いサスペンス映画です。
正直なところ、ドロン氏の主演作は、70年代後半以降のものはあまり観ていないのですが、これは内容が実に面白い。
数多いドロン主演作の中でも、傑作の部類に入る作品ではないでしょうか。
ここでアラン・ドロンが演じているのは、政治家の友人フィリップ(モーリス・ロネ)の死の謎を探ろうとする実業家グザヴィエ。
ジョルジュ・ロートネル監督作品だけあって、カーチェイスや銃撃シーンなど、アクション的な見せ場も用意されていますが、この映画を貫くものは、友人の死に対するグザヴィエの“怒り”です。
その感情は、常はクールな表情の下に抑えられていますが、映画後半では、友人の死に対する怒りが、一瞬垣間見えるところがあります。
その迫力が凄い。
しかも、『太陽がいっぱい』以来の因縁のあるアランドロンとモーリス・ロネの共演、友情物語であるところが泣かせます。
映画冒頭で、愛人(実生活の愛人であるミレーユ・ダルクが演じているのがミソ)にベッドで『私のこと愛してるって言ってくれないの?』としつこく聞かれてウンザリ気味のドロンが、政治家を殺した友人ロネのためには、偽証罪の危険を犯しつつも虚偽のアリバイを主張したり、その後、ロネを殺した犯人を自らの命をかけてまでも探し出そうとします。
おそらくは、ドロン演じるグザヴィエにとって、大切なものは女、あるいは仕事よりも友人、友情なのです。
このグザヴィエという人物の行動理念には、ある種の日本人的価値観の発想が感じ取られ、その意味においては、映画のストーリーも“忠臣蔵”的仇討ち物語と感じられなくもありません。
これは、いかにも飛躍した考えかもしれませんが、過去に“Samourai”を演じたドロンであればこそ違和感なく演じられる役柄と言えるような気もしないでもないのです。
また、豪華なキャスティングもこの映画の大きな魅力で、皆個性を発揮しています。
中でも、先日このブログでも紹介したクロード・シャブロル監督の『肉屋』の主演女優ステファーヌ・オードラン、怪優クラウス・キンスキーが印象的。
とりわけ、ドロンとキンスキーの共演は新鮮で見ごたえがあります。
製作もドロンが兼ねていますから、キンスキーの出演は、ドロンのリクエストだったのではないでしょうか。
切れ者のモロ警部を演じたミシェル・オーモンは、ロバート・デ・ニーロをブ男にしたような顔つきですが、かえってそれらしく、味のある存在感を見せます。
ロネの愛人を演じたオルネラ・ムーティも色っぽくて良いです。
ただし、アンリ・ドカの撮影は、往年の冴えは今一歩のように感じましたが、これは、DVDの画質が今一つ良くないということも原因かもしれません。
また、注目すべきはフィリップ・サルドの音楽で、サックスを担当したのがジャズのスタン・ゲッツ。
映画冒頭のタイトルバックに、音楽と共にいきなり彼の演奏風景が登場しますが、そのあたりに彼の音楽への敬意が感じられます。
事実、全篇でゲッツ独特の柔らかいテナーの音色が印象的に鳴り響きます。
言うまでもなく、ゲッツのバラード演奏には、晩年のケニー・バロンとの見事なデュオが示すように、余人には代え難い魅力があります。
そのゲッツの資質が、この作品のサントラでは見事に発揮されていると思います。
あと、この作品の国内盤DVDは残念ながら廃盤となっていますが、私が観たところ、先に指摘したように画質は決して良くありません。
パイオニアのDVDは質の良いものが多いだけに、これは期待はずれでした。
このパイオニア盤が廃盤となっていることもあり、新たな国内盤DVDが待たれるところです。
当方の記事もトラバさせていただきましたのでよろしくお願いします。
さすがにマサヤ様の記事はこの作品の魅力を余すところなく伝えていて読んでいて唸らされました。
「日本人的価値観」という言葉もマサヤ様が使われると大変説得力のあるものになります。
日本版DVDは確かに画質は良くなかったですね。
それに比べてフランス版DVDは素晴らしい画質で、ドカエの映像も十分に楽しめます。
機会があればぜひ見比べてみてください。
なかなかこの作品って難解… さすがマサヤさん 分かりやすい記事ですね。サルド&ゲッツのサントラは大人の世界って感じで初めて聴いた時は理解しきれなかったんですが、歳を重ねるにつれようやく良さが分かってきたみたいです。あのタイトルバックに魅力が集約されてますね。何度観てもカッコ良すぎです!TBさせていただきます。
コメント&TBありがとうございます。
私の感想はいつもながら映画の上っ面を撫でただけのものですが、この作品を深く愛してらっしゃるチェイサー様に褒めていただき恐縮です。
フランス版DVDは画質が良いとのこと、情報ありがとうございます。
是非良い画質でこの作品を味わいたいものです。
コメント&TBありがとうございます。
確かにこの作品には人間関係で難解なところがありましたね。
でも、脇にアクの強い俳優が多く出ていて楽しめました。
サルド&ゲッツの組み合わせは魅力的ですね。
キャストもそうですが、製作スタッフにも恵まれた作品だと思います。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
リンク、コメント、TB等はご自由にどうぞ。