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ジョン・クロムウェル監督の『大いなる別れ』を国内盤DVDで観た感想。

ハンフリー・ボガート主演、リザベス・スコット共演の作品で、ハードボイルドな雰囲気が魅力的である。
内容もいい線を行っている…が、どこか物足りなさが残るのは、ボガートとリザベス・スコットの組合せが今一つしっくりこないせいかもしれない。
他に、ボギー演じるリップと戦友ジョニーの関係性の描写がどこか薄いというか物足りないのもそれに関係しているかもしれない。

もっともボガートの存在感はさすがなのだが、リザベス・スコットがファム・ファタール役はいかにも良さそうに見えて実際はあまり良くないという感じなのだ。
綺麗だが、この手の役柄に必要なアクが足りないのか。

一見の価値のある映画ではあるが。

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フランク・タトル監督の『拳銃貸します』を国内盤DVD(ジュネス企画)で観た感想。

THIS GUN FOR HIRE』(42年)
監督:フランク・タトル
脚色:アルバート・モルツ、W・R・バーネット
撮影:ジョン・サイツ
音楽:フランク・レッサー、ジャック・プレス
出演:アラン・ラッド、ヴェロニカ・レイク、ロバート・プレストン、レアード・クリーガー

この映画の原作はグレアム・グリーンの1936年の小説「拳銃売ります」(「A Gun for Sale」)。
アラン・ラッドヴェロニカ・レイクの出世作であり、メルヴィル『サムライ』の元ネタとしても知られる作品です。
ルイ・ノゲイラ著『サムライ』でもメルヴィル自身の口からこの作品のことが語られていますし、実際、ストーリーの大きな流れはかなり似ており、影響を受けていることは間違いありません。

ただ、これまでこの映画を何度もビデオで観ていますが、ストーリーが複雑で分かりにくいという印象は否めません。
主人公の殺し屋が自分を裏切った雇い主に対して復讐に出るというストーリーは『サムライ』と同様ですが、そこに日米戦争という映画製作当時(42年)の時代背景が加味されているのが話を複雑にしています。
第二次大戦真っ只中に製作されたこの映画は、世相や時代の暗さが映像に反映されたかのような、フィルム・ノワール的色彩の極めて濃い作品となっておりますが、一方で、もともと大変重苦しい内容である原作小説をそのまま映画化するのではなく、あくまでも観客の関心を引きやすいストーリーへと置き換えている点はいかにもハリウッド映画らしい点と言えると思います。

なにより、アラン・ラッド演じるレイヴンの寡黙なキャラクターが『サムライ』のアラン・ドロン演じるジェフ・コステロそっくり。
ソフト帽にトレンチコートという出で立ち、そして顔の作り、声まで似ています。
この映画を観ていると、まるでドロンか?というようなシーンが続出するのには驚かされます。
とりわけ、映画の冒頭で、レイヴンがベッドからおもむろに起き上がり、仕事の準備にかかるところなど『サムライ』にそっくりで、元ネタと言われる所以でありましょう。

また、レイヴンは猫を可愛がっていますが、小動物に対する愛着という側面に、ジェフ・コステロの小鳥を寵愛する一面との共通点を感じます。
他にも、レイヴンとクラブの踊り子エレン(ヴェロニカ・レイク)との微妙かつ複雑な関係性は、『サムライ』におけるジェフ・コステロとクラブのピアニスト(カティ・ロジェ)の関係性を想起せずにはいられません。

では、『サムライ』は『拳銃貸します』のパクリであるかといえば、決して単純にそうとは言えないでしょう。
『拳銃貸します』を元ネタとしながらも、『サムライ』は独自の美学を創造したと言えると思います。
『サムライ』における殺し屋の行動原理はあくまでも個人的なことに留まっています。
請け負った仕事をし、裏切りを許さない、それだけです。
いわば、余計な動機はない。
それは、愛人役のナタリー・ドロンとの素っ気無いほどの絡みでも明白です。
そして、それがピアニスト(カティ・ロジェ)と出会ったことで微妙に崩れてくる…そこがまた映画的に興味深いところです。
それに比べると、『拳銃貸します』のレイヴンの行動パターンは泥臭いというか、感情に任せたところがいくつもあります。
ヒロインのヴェロニカ・レイクはこの作品で本格的なブレイクを果たしたとのことです。
この時代の他のアメリカ女優に比べると地味な印象がありますが、繊細でどこかミステリアスな魅力が受けたのでしょうか。
この作品をきっかけにアラン・ラッドとの共演作(『ガラスの鍵』『青い戦慄』)が何本か撮られただけあって、二人の息はピッタリだと思います。

ウォルター・ヒル監督の『ザ・ドライバー』を国内盤DVD(是空)で観た感想。

78年のアメリカ映画だが、メルヴィル『サムライ』からの影響を受けた作品とのことだったので、以前から興味のある映画だった。
なるほど、映画冒頭から『サムライ』そっくりの展開(笑)。
ここまで似ていると微笑ましくなる。
ただし、似ているのは最初の15分程度。
実際のところ、これは刑事モノ、カー・アクションモノとしてかなりの出来栄えであり、フィルム・ノワールの傑作に入れてもおかしくない作品である。

なんといっても、ライアン・オニール演じる”ドライバー”の存在感、キャラクターが、ポーカーフェイスを通しながらも、どことなく人間味を感じさせて魅力的である。
ライアン・オニールの映画はあまり観ていないが、イメージ的にここまでノワール系の映画にはまるとは正直意外だった。

次にイザベル・アジャーニ
彼女がアメリカ映画に出ているのを観るのはもしかしたら初めてかもしれない。
謎のクール・ビューティー系の存在感がこの手のストーリーにピタリとはまっている。
やはり無表情を通す役柄だが、かえって美貌が引立つ。
刑事役のブルース・ダーンのどこかコミカルなキャラクターも、部下の刑事たちの反応も含めて実に映画的で面白い。

全体としてハードボイルドな雰囲気が魅力的であり、カー・アクションはCGなどない時代だけあってかなりの迫力。
ただし、ラストの意味が私は最初よく分からなかった。
その前からじっくりと観直してようやく意味が分かった(たぶん)。

HDリマスターを謳っているDVD(是空)が安かったこともあって買ったのだが、画質が良くない。
近年出たブルーレイの方は画質の評判が良いようなので、そちらの方を買った方が良かったようだ。

ロバート・ミッチャムフィリップ・マーロウを演じた作品のソフト化のニュースです。

さらば愛しき女よ』(75年、ディック・リチャーズ監督)と『大いなる眠り』(78年、マイケル・ウィナー監督)のDVD、ブルーレイが復刻シネマライブラリーから3月27日に発売されます。

どちらも、これまでDVD、ブルーレイで未発売だっただけに嬉しいニュースですが、ことに『大いなる眠り』(ハワード・ホークス監督の『三つ数えろ』と同じ原作)は未見なだけに嬉しいです。
さらば愛しき女よ』について以前書いた記事

ダグラス・サーク監督の『ショックプルーフ』を国内盤DVD(巨匠たちのハリウッド フィルム・ノワール傑作選 DVD-BOX)で観た感想。

Shockproof』(49年)
脚本:サミュエル・フラー、ヘレン・ドイッチュ
撮影:チャールズ・ロートン・JR
音楽:ジョージ・ダニング
出演:コーネル・ワイルド、パトリシア・ナイト、ジョン・ハラグリー

あのサミュエル・フラーが脚本を書いているが、あまりに救いのないラストをコロンビアに改変させられたため、フラーを庇ったサークが怒りのあまりコロンビアを去る原因となったとのこと。
結果的にサークは移籍先のユニバーサルで名実ともに大監督にのし上がっていくわけだから、結果オーライだが。

保護監察官役のコーネル・ワイルド、殺人罪で服役中に仮釈放されたパトリシア・ナイトという実生活でも夫婦だった二人の共演作で、映画の展開は正直微妙だが見ごたえはある。
オープニングなどは見事。
パトリシア・ナイトは無名の美人女優だが、この頃のハリウッドがいかにスター未満の美人女優で溢れていたかを改めて感じさせる。

マックス・オフュルス監督の『無謀な瞬間』を国内盤DVDで観た感想。

THE RECKLESS MOMENT』(49年)
脚本:
撮影:バーネット・ガフィ
音楽:ハンス・J・サルター
出演:ジョーン・ベネット、ジェームズ・メイソン、ジェラルディン・ブルックス

今まで観たマックス・オフュルス監督の作品の中で一番好きかもしれない。
あのジョーン・ベネットが主婦役を見事に演じているのが興味が尽きない。
ダブル主演のジェームズ・メイソンが夫役かと思いきや、らしからぬ”ゆすりや”を演じているという意外さ。
結果的に、彼らしい役柄とも言えるのだが。

室内を動き回る登場人物を見事にとらえるカメラワークにオフュルス監督の特色が垣間見える。

ジョゼフ・ロージー監督の『不審者』を国内盤DVD(フィルム・ノワール傑作選 DVD-BOX)で観た感想。

THE PROWLER』(51年)
撮影:アーサー・ミラー
音楽:リン・マレー
出演:ヴァン・ヘフリン、イヴリン・キース、ジョン・マックスウェル

ジョゼフ・ロージー監督の映画を観るのは久しぶりだが、これもかなりヘンな映画だ。
前半からありえない展開が続き、どうなるかと思いきや、ありえないようなラストに至る。
その意味では首尾一貫した映画なのかもしれない。
最初から最後までとことん悪人にしか見えないヴァン・ヘフリン、始終どこか不気味な匂いを感じさせる相手役のイヴリン・キース、どちらもノワール的な登場人物とも言えるだろう。

それにしても、原題が『THE PROWLER』というのにビックリ。
アイアン・メイデンのファーストアルバムの1曲目が『PROWLER』という曲名なのだが、高校時代にバンドを組んでいた時に何度演奏したか分からない。
この映画にはまったく関係ない話だが・・・。

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マサヤ
性別:
男性
趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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