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クライテリオン盤DVD『サムライ』に収められている特典映像から、1967年6月29日に起きたジェンネル撮影所の火災事故の模様を伝える短いTVニュースを紹介したいと思います。
私にとりましても、この火事のことは長らく本などでしか知りえない幻の出来事でありましたが、こうして、わずかながらも模様を伝える映像が残っているとは想像もしていませんでした。
しかも、消火活動の続くその現場で、当のメルヴィルがインタビューに答えているのです。
今回はその内容を和訳して紹介します。
ナレーション パリのジェンネル通りの撮影所から、今朝火災が発生しました。
12000平方フィートに及ぶこの建物は、『ギャング』の映画監督、ジャン=ピエール・メルヴィルの所有物です。
9つの消防署から駆けつけた消防隊員が、2時間以上に渡って消火活動にあたりました。
幸い、死者はいなかった模様です。
ジェンネル撮影所では、メルヴィルがアラン・ドロン、その妻のナタリー出演の最新映画『サムライ』を撮影中で、二人は今朝にも撮影の予定が入っていました。
メルヴィルは、撮影所を直視できる自身のアパートのバルコニーから、最初の炎が上がるのを見ました。
問 火災の原因は分かりましたか?
メルヴィル いや。
火事は、電線も通っていない防音壁の裏の小さなスペースから起きたんだが、簡単な巡回もできなかったところだしね。
メルヴィル 可能性はあるね。
ここ数ヶ月のスタジオに関連する多くの出来事と一致するんだ。
その仮定は消えないね。
問 あなたのスタジオはパリで最も忙しいスタジオの一つですよね。
メルヴィル その通り。
現在の不況では誰もがひどい目に合っている。
私は仲間のスタジオのオーナーたちを非難していないよ。
でも、ここが忙しいのは、常時稼動している唯一のスタジオだからだ。
そうなるまでには、私が他のスタジオを使わずに、ここでいろんな映画を撮ってきた、長い年月がかかっているけどね。
この数ヶ月、調査やら絶え間ない訪問者に私はずっとイライラさせられていたんだ。
プロデューサーにここでは撮影させないよう脅す企てもあったよ。
だから、それと今回の火災は不思議な一致だね。
これら総てのことに懐疑的にならざるを得ないね。
問 映画の撮影は延期になりますか?
メルヴィル そうはならないだろう。
他のスタジオにセットを組んで撮影に入るよ。
パジャマにジャケットを羽織ったままの格好でアパートから飛び出して来たと思われるメルヴィルは、極めて冷静に装っているように見えますが、内心怒り心頭だったでしょう。
嫌がらせによる放火の可能性にも言及しています。
以前も紹介しましたが、ルイ・ノゲイラ著『サムライ』によれば、この火災によって、撮影所そのものが全焼したのはもちろん、メルヴィルが映画化を想定した22本の脚本が焼け、そして、『サムライ』で印象的なあの小鳥も焼けてしまったのです。
『サムライ』の撮影はサン=モーリス撮影所に引き継がれることになりますが、それにしても、このような被害に遭いながらも、よくぞ『サムライ』は完成したものだと思います。(公開はこの年の10月)
それまでに撮り溜めたフィルムが焼けなかっただけでも、不幸中の幸いだったというべきかもしれません。
ところで、この3月のパリ旅行の際、13区のジェンネル撮影所跡を訪ねましたが、火災事故から丸40年経って、現場はこの画像のような感じに様変わりしていました。
向かって左側二つのマンションが撮影所跡に建てられたと思われます。
そのせいか、現場に立ってみても、正直、ここに以前は撮影所があったとは想像できない感じでした。
写した角度は多少違っていますが、一番上の画像と比べると、当時との違いが分かりやすいかと思います。(画像はクリックすれば大きくなります)
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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