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ジャン・ルノワール監督の『大いなる幻影』を国内盤DVD(パイオニア)で観た感想です。
『LA GRANDE ILLUSION』 (37年)
監督:ジャン・ルノワール
脚本:ジャン・ルノワール、シャルル・スパーク
撮影:クリスチャン・マトラ、クロード・ルノワール
音楽:ジョセフ・コズマ
出演:ジャン・ギャバン、ピエール・フレネー、エリッヒ・フォン・シュトロハイム、ディタ・パルロ、ジュリアン・カレット、マルセル・ダリオ、ジャン・ダステ
世界映画史上の名作との評価は、むしろ初めて鑑賞する際には邪魔かもしれません。
なぜなら、期待が大きい分だけ、失望感も大きいからです。
私の場合、初めて観たのは劣悪な画質のVHSビデオだったせいもありますが、正直なところ魅力がよく理解できませんでした。
今回でこの映画を観たのは多分3回目だと思うのですが、観る度に良くなってきます。
実際のところ、この年代の映画ともなると、DVDの画質の良し悪しが映画の印象を強く決定付けますが、パイオニアから出ている国内盤DVDは、オリジナルネガからプリントしたというDVDであって、実際画質も満足のゆくものです。
いわゆる500円DVDの画質は観ていないので分かりませんが、ことパイオニア盤を観る限り、素晴らしいクラシック映画を素晴らしい画質で観られるという歓びをじっくり味わえる作品です。
キャストでは、やはりエリッヒ・フォン・シュトロハイムの存在感の素晴らしさを第一に指摘したい。
一つ一つの所作に、まるで歌舞伎役者のようなアクの強さ、大時代的な存在感があり、このような無国籍的内容の映画にピッタリ。
あのメルヴィル監督もシュトロハイムのファンだったようで、ルイ・ノゲイラ著『サムライ』ではシュトロハイムとの邂逅が感動的に語られていました。
相対するピエール・フレネーも地味ながら素晴らしい。
この人の良さもやはり観る度に分かってきます。
この二人に比べるとジャン・ギャバンの存在感はこの時代の他の名作映画ほどではありません。
しかし、ここにジャン・ギャバンがいる、それだけでこの作品がどれだけ充実したものになっているでしょうか。
ギャバンとマルセル・ダリオのコンビが想像以上に良いです。
仲直りするシーンは、泣けます。
この二人は私の知る限りでは『筋金(ヤキ)を入れろ』(55年、アンリ・ドコアン監督)でも共演しています。
以前書いた『筋金を入れろ』のレビュー
今回観て改めて感じたのがジョセフ・コズマによる素晴らしい音楽の魅力です。
それにしても、この映画のタイトルは見事ですね。
映画の途中で、何度かこのタイトルの言葉がセリフとして登場しますが、この映画の内容そのものが“大いなる幻影”と言えるのかもしれません。
再度観直してみると、後の名作と言われている数々の作品にかなりの影響を与えた偉大なる作品なんだと改めて感じました。
『カサブランカ』『大脱走』『地獄に堕ちた勇者ども』などなど…。
特に慰安演芸会での女装シーンなんかは、完全にヴィスコンティも影響を受けているように見受けられたのですが、ルノワールの助監督を務めていましたし、まあ、当然かと…。
映像も本当に素晴らしいですよね。この美的感覚、絵画的な映像構成は、やはり父である印象派の画家オーギュスト・ルノワールからの血筋なんでしょうね。
フランス映画の父ジャン・ルノワールと言われるのもすごく納得致しました。
そしてこの人、エリッヒ・フォン・シュトロハイムのインパクト大の風貌と存在感には、もう圧倒されました(笑)凄いですね…本当にかなりハマりました(笑)。
ビリー・ワイルダー監督の『サンセット大通り』にも出演していたのを思い出したので、また観直してみたいと思います。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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