忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ジョゼ・ジョヴァンニ監督の『ブーメランのように』を国内盤DVDで観た感想です。
今回は少々ネタバレがあります。

image90.jpgCOMME UN BOOMERANG』(76年)
監督:ジョゼ・ジョヴァンニ
脚本:ジョゼ・ジョヴァンニ
撮影:ヴィクトール・ロドリゲ
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演:アラン・ドロン、カルラ・グラヴィーナ、シャルル・ヴァネル、シュザンヌ・フロン、ルイ・ジュリアン

初見。
アラン・ドロンが製作も兼ねています。

この作品は、同じジョゼ・ジョヴァンニ監督作品で、やはりアラン・ドロンが製作も兼ねていた『暗黒街のふたり』(73)をどこか彷彿とさせるストーリー。
覚醒剤の影響で警官殺しをしてしまった少年の父親をアラン・ドロンが演じており、映画の前半は地味な展開ながらなかなかの良作の予感がありました。

実際、映画中盤で息子の手紙を読んだ後のアラン・ドロンの演技には圧倒されるような凄みがありました。
しかし、映画後半の展開にはちょっと付いてゆけません。
いくら父性愛とはいっても、あれはないんじゃ…。
映画としては痛快な展開なのかもしれませんが…。

ジョゼ・ジョヴァンニの撮る映画は、うわべの正義を振りかざす警察などよりも、罪を犯した犯罪者の方に観る者が同情や正義を感じてしまう作品が多いです。
暗黒街のふたり』などはその典型であり、それはそれで説得力があるのですが、この作品ではあまりに悪ノリが過ぎてしまったように感じられてなりませんでした。

個人的に、ジョゼ・ジョヴァンニの監督作品には、前科者だった彼の経験を踏まえたものだと思うのですが、『警察=権力=悪』というような見方が抜き難く染み付いているようにも感じられます。
この作品でも、予審判事のキャラクターの描き方や、親子が国境を越えて逃げ去っているにもかかわらず、警察の拳銃が向けられるラストシーンにもそういった見方が色濃く感じられます。(リノ・ヴァンチュラが刑事役を演じた最後のアドレス』(69)でもそれは同様で、そこでは矛先が警察権力そのものに向けられていました)

あくまで映画ですから、それはそれで良いのですが、例えば、フィルム・ノワール作品を数多く撮ったジャン=ピエール・メルヴィル監督の作品には、警察という存在を犯罪者との対比で善か悪かと簡単に決め付けるような作品は1本もなかったように思います。
むしろ、メルヴィル作品を観ていて強く感じるのは、犯罪者(やくざ)と警察双方の敬意であったり同質性(?)であったりというものです。
そのあたりはメルヴィルという人のある種のバランス感覚なのかもしれませんし、これはファンの贔屓目かもしれませんが、私はそこに一筋縄ではいかない人間観察の奥行きや深みを感じたりするのです。

もちろん、メルヴィルとジョヴァンニどちらが優れているか否かという問題ではありませんし、映画という娯楽である以上、内容がどうであれ、観る者の感性に訴えるものがあれば、ある意味それで充分と言えますが…。

image91.jpg名優シャルル・ヴァネルがアラン・ドロンと共演しているのが珍しいです。
ドロンの妻役でカルラ・グラヴィーナが出ていますが、あまり目立たなかったのが残念。
ちなみに、少年に殺された刑事の未亡人役のシュザンヌ・フロンは、アンリ・ヴェルヌイユ監督の『冬の猿』(61)にも出演していました。
ジョゼフ・ロージー監督の『パリの灯は遠く』(77)にも出演しているようですが、未確認。
ジョルジュ・ドルリューの哀感溢れる音楽はいかにもそれらしく印象的です。

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
ブーメランのように
この作品はドロンさんが41歳の時の作品ですが、
父子愛のテーマを扱うには10年早かったのではないかと思います。
決して悪い作品ではないし、好きな作品ですが、
この時期にこの映画を撮ったことに少し野心的な香りを感じさせてしまいます。
今回初めてシナリオも執筆するなど意欲的に取り組んでいますが、
個人的な思い入れが画面から出すぎていて、
その辺が観客からは受け入れられなかったのでしょうね。
シュザンヌ・フロンは『パリの灯は遠く』では、
もう一人のロベール・クランが住んでいたアパートの
女主人役で出演していました。
チェイサー 2009/04/06_Mon_04:42:17 編集
ノレなかった理由
チェイサー様

>父子愛のテーマを扱うには10年早かったのではないか

私が映画を観ていて感じた違和感の一つはこれかもしれません。
17歳の子供の父親でも年齢的には問題ありませんが、ドロン氏はなにしろ見た目が若々しいですからね。
あと、映画とは直接関係はありませんが、昨今の自分の子供に甘い親が多いことに対する反感も、私がこの作品に乗れなかった理由の一つのような気がします。

シュザンヌ・フロンの『パリの灯は遠く』での出演シーンも教えていただきありがとうございます。
マサヤ URL 2009/04/06_Mon_21:34:46 編集
作品に入り込めなかった
中学の頃 映画館で観ましたが父親役のドロンにまだ抵抗がありまして… 結局作品に入り込めなかったです。ドルリューの音楽も当時は映画を観た後の勢いだけでシングル盤を買ったって感じでした。後年ビデオで観直してみるとなかなか見応えありましたし音楽も心地良かったです。中学生にはまだまだドロンが父親ってのは許せなかったんでしょうね。
ジュリアン 2009/04/07_Tue_20:39:21 編集
ドルリュー
ジュリアンさん

TBありがとうございます。
中学の時にご覧になったのですね。
しかもドルリューのシングル盤まで買われたとはスゴイです。
ドルリューの音楽は映画の雰囲気を見事に表現していましたね。
マサヤ URL 2009/04/08_Wed_18:42:12 編集
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
[278] [277] [276] [275] [274] [273] [272] [271] [270] [269] [268]
テンプレ作った人:おみそ
今すぐブログ始めるなら:[PR]

PR:忍者ブログ
ブログ内検索
プロフィール
HN:
マサヤ
性別:
男性
趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
リンク、コメント、TB等はご自由にどうぞ。
カテゴリー
最新コメント
[04/14 マサヤ@管理人]
[04/10 mon]
[11/07 マサヤ@管理人]
[11/06 mon]
カウンター
忍者AdMax
NINJA TOOLS
アーカイブ