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ジャン=リュック・ゴダール監督の『軽蔑』を国内盤DVD(東北新社)で観た感想。
『LE MEPRIS』(63年)
監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
原作:アルベルト・モラヴィア
撮影:ラウール・クタール
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演:ミシェル・ピコリ、ブリジット・バルドー、ジャック・パランス、フリッツ・ラング
再見。
アルベルト・モラヴィアの原作を映画化したもので、カルロ・ポンティ、ジョルジュ・ド・ボールガール製作。
ゴダールとしては異例の高額予算で撮られた大作映画である。
何度も観ている映画だが、正直なところ、それほど好きなゴダール映画というわけではない。
しかし、後半のカプリ島の海、そして舞台となった別荘が美しく印象的で、それを観るためにこの映画をまた観ようという気になっているような気がする。(もちろん、それだけではないが)
ところで、上記二人の製作はメルヴィルの『モラン神父』(61)『いぬ』(62)と同じである。
それもそのはず、この原作は、メルヴィルがジャン=ポール・ベルモンド、ジャンヌ・モロー主演で映画化するという話もあったという。
一方、ゴダールも元々はフランク・シナトラ、キム・ノヴァク主演で映画化を計画していたらしく、結局ミシェル・ピコリ、ブリジット・バルドー主演で落ち着いたわけだが、結果的にゴダールがメルヴィルの企画を横取りしてしまった映画だと言えるだろう。
もしかしたら、この映画がメルヴィルとゴダールの仲違いの原因のキッカケとなってしまったのかもしれない。
どちらにせよ、ブリジット・バルドーが出演したゴダール映画は後にも先にもこの一作。
その意味でも貴重であるが、ゴダールがバルドーにアンナ・カリーナのような演技を求めたために、バルドーが撮影中にキレてしまったと言われている。
大スター、バルドーにしてみたら、当時のアンナ・カリーナなど格下のまた下くらいの存在であったろうから、それはプライドが許さなかったのだろう。
ゴダールにしてみたら、この映画にはアンナ・カリーナとの自身の結婚生活の苦悩が明らかに投影されており、バルドーにアンナ・カリーナ的なものを求めるのは自然なことだったのかもしれない。(ちなみに、映画中にバルドーが着用する黒髪のウィッグは『女と男のいる舗道』(62)でカリーナが着用したものとクリソツである。またミシェル・ピコリが着用している帽子はゴダールの私物だったという)
大雑把なストーリーとしては夫婦関係の崩壊を描いた単純なものであるが、映画産業における製作者と監督、脚本家の関係も包含しているので、なかなか深い。
中盤の夫婦のアパートの中でのいがみ合いの場面がちょっと長く感じるが、全体としてはゴダールらしいハチャメチャ具合は少ない。
その点が物足りなく感じる人もいるかもしれないし、だからこそ落ち着いて観られるという人も多いだろう。
特筆すべきはフリッツ・ラングが実名の映画監督役で出演していることで、登場シーンも多めなのが嬉しいが、その存在感、貫録、気品とも素晴らしい。
ジョルジュ・ドルリューの音楽は、それ自体は素晴らしいが、同じテーマがあまりにも何度も繰り返し使われているのは少々興醒めである。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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