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先日、アラン・コルノー監督の『マルセイユの決着(おとしまえ)』をシアターN渋谷に観に行ってきました。
メルヴィルの『ギャング』との比較を中心に、その感想を雑記風に書き連ねてみたいと思います。
いろいろ話が前後するかもしれませんが、ご容赦下さい。
まず簡単な感想ですが、映画として面白かったです。
どうしても『ギャング』との比較で観てしまったのですが、キャストもなかなか魅力的でしたし、現代のような時代にこのような古臭い内容のフィルム・ノワールが撮られたことに率直に感動しました。
メルヴィルと原作者ジョゼ・ジョヴァンニによって書かれた『ギャング』の脚本はもともと傑作というべきで、この映画はそれをほぼ踏襲していますから(脚本は監督のアラン・コルノー)、ストーリー的にはかなり面白い作品になることは予め約束されていたと言うべきでしょうが、それにしても、映画としてよく出来ているな、という感想を私は持ちました。
メルヴィルの『ギャング』をご覧になっていない方にこそ、むしろお勧めしたい映画なのではないかと思います。
全体的に、『ギャング』に比べ『マルセイユ~』の方がストーリーが良くも悪くも説明的になっていると感じられました。
『ギャング』は簡潔である一方でストーリー的に難解な側面がありますので、『マルセイユ~』はその点を是正しようとしたのでしょう。
そして、映画の構成、カット割り等、確かに『ギャング』の影響はかなり大きいのですが、もともとジョヴァンニの原作にはあって、『ギャング』では省かれていたいくつかのエピソードがこの映画では取り上げられている点からも、ジョヴァンニの原作に立ち返って、再構成し直した映画であるように感じられました。
『ギャング』では省かれていて、この映画で取り上げられていたエピソードを思いつくままに挙げてみます。
●マヌーシュの夫(ポール)の死
●ブロ警部の部下のプーボンの女好きの側面
●『ギャング』では最終的にカットされたファルディアーノ警部によるヴァンチュール・リッチの拷問シーン
●マヌーシュの本名とオルロフのマヌーシュに対する恋愛感情
●ブロ警視の家族のエピソード
●ギュが警察病院から脱走する際に二人の男の助力を得ること
等々です。
他に、モニカ・ベルッチの演じたマヌーシュのキャラクターも、『ギャング』よりも原作に忠実と言えそうです。(原作ではマヌーシュは超美人のグラマーという設定)
また、『ギャング』ではポール・リッチになっていた名が、原作に習ってヴァンチュール・リッチになっていたのはマヌーシュの元夫の名との混乱を避ける意味でも正しい処置だったと思います。
こういうことからも、メルヴィルの映画以上にジョヴァンニの原作を重んじた映画だと言えるでしょう。
この項、次回に続きます。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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