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ロベール・ブレッソン監督の『スリ』を国内盤DVD(紀伊国屋書店)で観た感想です。
『PICKPOCKET』(60年)
監督・脚本:ロベール・ブレッソン
撮影:レオンス=アンリ・ビュレル
音楽:ジャン=バチスト・リュリ
出演:マルタン・ラサール、マリカ・グリーン、ジャン・ペレグリ、ピエール・レマリー、カッサジ、ピエール・エテックス
再見。
ロベール・ブレッソン監督作品の中では比較的親しみやすい(?)方の作品だと思います。
実際、タイトルや内容のインパクトもあって一般的にも広く知られている作品でしょう。
やはり、ここでも素人の俳優を使っていますが、他のブレッソン作品の出演俳優同様に眼に独特の力があり、素人であることが欠点になっていません。
主人公のミシェルを演じているマルタン・ラサールは、一見ヘンリー・フォンダに顔が似ていると思います。
ちなみに私、ヘンリー・フォンダ苦手なんですよね。
ですから、私はマルタン・ラサールも苦手です。
だから何って感じですが…。
この主人公もブレッソン作品らしく、どうしようもなく暗いです。
しかし、暗いからといって観るのがイヤにならないのがブレッソン作品の不思議なところです。
マルタン・ラサールが主人公のイメージにピッタリなのもまた確かですし、レオンス=アンリ・ビュレルによるモノクロの映像美もまた作品のイメージに合っていて魅力的です。
それと、駅構内から列車の中における連続したスリのシーンはやはり印象的です。
あの手の鮮やかな動きは凄いですね。
本当にあんなに上手くいくのかなぁという疑問もありますが…スられる人って意外と気付かないものなんでしょうか(笑)。
ただ、この作品は、セリフの意味が分かりにくいのが難点です。
特に主人公と刑事の会話が分かりにくい。
以前観た時は、私に理解力の無いせいか、もしくは字幕のせいかと思いましたが、かのジャン=ピエール・メルヴィルもこう言ってます。
“『スリ』も私の大好きな映画だが、まったくいい出来というわけではない。台詞に原因があるとしか思えないだろう?私はそう信じるほうに傾いている。あの台詞は空々しく聞こえるからね。(中略)ブレッソンの描く人物像は私がいいと思うような形で自己表現したためしがない。それに対して、行為の動機と同様、動作の物腰は、常にブレッソン作品で気に入っているものだ。『スリ』はすばらしい失敗作だな。”(引用―『サムライ―ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』ルイ・ノゲイラ著 井上真希訳 晶文社刊 より)
一方で、フランスの映画評論家マルセル・マルタン氏の評。
“この作品は(引用注:ブレッソンの『抵抗』のこと)、映像、台詞、音楽の完全な非ドラマ化によって特徴づけられている。『スリ』はこの発展の到達点であり、またブレッソンの最高傑作のように思える。ここでは、劇的で造形的な禁欲性は、フレーミングと人物の動きの厳格な様式化のために、何よりも拒絶、つまり描写と心理の拒絶に基づいている。”(引用―『フランス映画 1943-現代』マルセル・マルタン著 村山匡一郎訳 合同出版刊)
キャストでは他にジャンヌ役のマリカ・グリーンの美しさが目を惹きます。
彼女は後に本格的に女優になったとのこと。
DVD付属のブックレットによれば、彼女はルネ・クレマンの『雨の訪問者』(70)にも出ているらしいのですが…先日観ていて全然気付きませんでした。
スリ・グループのリーダー?(カッサジ)も、セリフはないのに、やけに存在感ありましたね。
解説ブックレットによれば、あの人、本物のスリのようで、この映画の“スリ技術指導”も兼任しています。
ちなみに、この映画のラストは個人的には納得しずらかった感があります。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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