×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ボブ・ディランのニューアルバム『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』(『SHADOWS IN THE NIGHT』)が発売になったので、さっそく国内盤を買って聴いてみた。
以前のブログで、このアルバムにはあまり期待していないというようなことを書いた。
簡単に言えば、ここ20年くらいのディランの声が苦手だからだ。
しかし、実は数日前にあるサイトで収録曲『ステイ・ウィズ・ミー』を聴いて感動してしまったのである。
なにより声が違う、歌い方が違う。
このアルバムに対する期待が一気に高まった。
全10曲、収録時間35分はCD時代のアルバム収録時間としてはかなり短い方だろう。
全曲がアメリカン・スタンダードの作品ばかりのようで(私もほとんど知らない曲ばかりだ)、菅野ヘッケル氏のライナーノーツを読む限り、やはりフランク・シナトラへのトリビュートの色合いが濃いようだ。
全曲が一発録りで、オーバーダビング等もないという。
アルバム全体の印象は極めて地味で、ロック・ビート皆無のバラード・アルバムである。
それも、同じような雰囲気のバラード・ナンバーが現れては消える。
バック・バンドの演奏もどの曲もほとんど変わり映えがない。
こんなアルバムはディラン史上一枚もなかった。
このアルバムを聴いたディラン・ファンは面食らうのではないか。
もちろん、私もその一人だが、このアルバムを理解する鍵はやはりシナトラではないかと思う。
このアルバムはロサンゼルスのキャピトル・スタジオで録音されたという。
シナトラは50年代前半から60年代前半にかけてキャピトル・レコードに所属し、まさしくこのスタジオで多くのアルバムを録音した。
この時期はシナトラのジャズシンガーとしてのまさしく絶頂期で、スイング・アルバムとバラード・アルバム両方に傑作がひしめいている。
そして、この『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』はキャピトル時代のシナトラのバラード・アルバムにインスパイアされたのではないかと思われるのだ。
アルバムの空気感、雰囲気がとてもよく似ているのである。
もっとも、キャピトル時代のシナトラのアルバムはネルソン・リドルやビリー・メイ、ゴードン・ジェイキンスといった優れたアレンジャーがアレンジを担当しており、バラード・アルバムの多くはストリングスのアレンジに印象的なものが多かった。
ところが『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』にはストリングスは一切ない。
ごく控えめな管楽器奏者の他は、いつものディラン・バンドの面々だけである。
ディランはこう語っている。
『こういうものをずっと前からやりたいと思っていたが、30人編成向けの複雑なアレンジを5人編成のバンド用に精製する勇気をもつことがなかなかできなかった』
想像するに、ディランはシナトラのキャピトル時代のバラード・アルバムを参考としながらも、全く同じものを作ろうという気はなかった。
シナトラのような大編成のバックは起用せず、あくまでも自身のバック・バンドを起用して同じような音楽世界を描き出したいと思ったのではないだろうか。
この試みが成功しているかどうかは私もまだ判断が付かない。
しかし、私個人はこのアルバムが大変気に入っている。
買ってからもう何度聴いたか分からない。
収録時間が短いこともあるが、あっという間にアルバム一枚聴き通してしまうのである。
これまで他人の曲も数多く歌っているディランだが、これほど真摯に歌っているディランは久しぶりではないか。
声は私の苦手な近年のダミ声ではなく、意外なほど伸び伸びとした声質である。
ライナーノーツの菅野ヘッケル氏によれば、この数年ディランの声はどんどんクリアになっているという。
私が知らない間にディランは変貌しつつあるのかもしれない。
また、ライナーノーツによれば、ディランと生前のシナトラには親交があり、折につけディランはシナトラからアドバイスを受けていたという。
こうしたエピソードは双方のファンとしては嬉しい。
シナトラに限らないが、ディランという人は先人に対する畏敬の念を隠そうとしない。
私がディランの好きなところである。
偶然かもしれないが、今年はシナトラ生誕100年。
シナトラに対するディランの信奉の念が、このような真摯な一枚を作らせたのではないだろうか。
参考:シナトラのキャピトル時代のバラード・アルバム
●『Songs For Young Lovers』(53年)
●『In The Wee Small Hours』(55年)
●『Close to You』(57年)
●『Where Are You?』(57年)
●『Only The Lonely』(58年)
●『No One Cares』(59年)
●『Point Of No Return』(61年)
昔、私はこれらすべてのアルバムを聴いた。
内容をすべて覚えているわけではないが、どれも優れた出来栄えであったと記憶している。
個人的な一押しは『In The Wee Small Hours』。
シナトラのみならず、ジャズ・ヴォーカル史上の傑作。
続いて『Only The Lonely』だろうか。
以前のブログで、このアルバムにはあまり期待していないというようなことを書いた。
簡単に言えば、ここ20年くらいのディランの声が苦手だからだ。
しかし、実は数日前にあるサイトで収録曲『ステイ・ウィズ・ミー』を聴いて感動してしまったのである。
なにより声が違う、歌い方が違う。
このアルバムに対する期待が一気に高まった。
全10曲、収録時間35分はCD時代のアルバム収録時間としてはかなり短い方だろう。
全曲がアメリカン・スタンダードの作品ばかりのようで(私もほとんど知らない曲ばかりだ)、菅野ヘッケル氏のライナーノーツを読む限り、やはりフランク・シナトラへのトリビュートの色合いが濃いようだ。
全曲が一発録りで、オーバーダビング等もないという。
アルバム全体の印象は極めて地味で、ロック・ビート皆無のバラード・アルバムである。
それも、同じような雰囲気のバラード・ナンバーが現れては消える。
バック・バンドの演奏もどの曲もほとんど変わり映えがない。
こんなアルバムはディラン史上一枚もなかった。
このアルバムを聴いたディラン・ファンは面食らうのではないか。
もちろん、私もその一人だが、このアルバムを理解する鍵はやはりシナトラではないかと思う。
このアルバムはロサンゼルスのキャピトル・スタジオで録音されたという。
シナトラは50年代前半から60年代前半にかけてキャピトル・レコードに所属し、まさしくこのスタジオで多くのアルバムを録音した。
この時期はシナトラのジャズシンガーとしてのまさしく絶頂期で、スイング・アルバムとバラード・アルバム両方に傑作がひしめいている。
そして、この『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』はキャピトル時代のシナトラのバラード・アルバムにインスパイアされたのではないかと思われるのだ。
アルバムの空気感、雰囲気がとてもよく似ているのである。
もっとも、キャピトル時代のシナトラのアルバムはネルソン・リドルやビリー・メイ、ゴードン・ジェイキンスといった優れたアレンジャーがアレンジを担当しており、バラード・アルバムの多くはストリングスのアレンジに印象的なものが多かった。
ところが『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』にはストリングスは一切ない。
ごく控えめな管楽器奏者の他は、いつものディラン・バンドの面々だけである。
ディランはこう語っている。
『こういうものをずっと前からやりたいと思っていたが、30人編成向けの複雑なアレンジを5人編成のバンド用に精製する勇気をもつことがなかなかできなかった』
想像するに、ディランはシナトラのキャピトル時代のバラード・アルバムを参考としながらも、全く同じものを作ろうという気はなかった。
シナトラのような大編成のバックは起用せず、あくまでも自身のバック・バンドを起用して同じような音楽世界を描き出したいと思ったのではないだろうか。
この試みが成功しているかどうかは私もまだ判断が付かない。
しかし、私個人はこのアルバムが大変気に入っている。
買ってからもう何度聴いたか分からない。
収録時間が短いこともあるが、あっという間にアルバム一枚聴き通してしまうのである。
これまで他人の曲も数多く歌っているディランだが、これほど真摯に歌っているディランは久しぶりではないか。
声は私の苦手な近年のダミ声ではなく、意外なほど伸び伸びとした声質である。
ライナーノーツの菅野ヘッケル氏によれば、この数年ディランの声はどんどんクリアになっているという。
私が知らない間にディランは変貌しつつあるのかもしれない。
また、ライナーノーツによれば、ディランと生前のシナトラには親交があり、折につけディランはシナトラからアドバイスを受けていたという。
こうしたエピソードは双方のファンとしては嬉しい。
シナトラに限らないが、ディランという人は先人に対する畏敬の念を隠そうとしない。
私がディランの好きなところである。
偶然かもしれないが、今年はシナトラ生誕100年。
シナトラに対するディランの信奉の念が、このような真摯な一枚を作らせたのではないだろうか。
参考:シナトラのキャピトル時代のバラード・アルバム
●『Songs For Young Lovers』(53年)
●『In The Wee Small Hours』(55年)
●『Close to You』(57年)
●『Where Are You?』(57年)
●『Only The Lonely』(58年)
●『No One Cares』(59年)
●『Point Of No Return』(61年)
昔、私はこれらすべてのアルバムを聴いた。
内容をすべて覚えているわけではないが、どれも優れた出来栄えであったと記憶している。
個人的な一押しは『In The Wee Small Hours』。
シナトラのみならず、ジャズ・ヴォーカル史上の傑作。
続いて『Only The Lonely』だろうか。
PR
この記事にコメントする
ブログ内検索
プロフィール
HN:
マサヤ
性別:
男性
趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
リンク、コメント、TB等はご自由にどうぞ。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
リンク、コメント、TB等はご自由にどうぞ。
最新記事
(04/29)
(04/28)
(04/14)
(04/08)
(03/29)
カテゴリー
カウンター
忍者AdMax
NINJA TOOLS
お気に入りリンク
アーカイブ