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ジャン・ユスターシュ監督の『ママと娼婦』を国内盤DVDで観た感想。
『LA MAMAN ET LA PUTAIN』(73年)
監督・脚本:ジャン・ユスターシュ
撮影:ピエール・ロム
出演:ジャン=ピエール・レオー、ベルナデット・ラフォン、フランソワーズ・ルブラン、イザベル・ヴェンガルテン
再見。
1981年に43歳の若さでピストル自殺したジャン・ユスターシュ監督。
これは、その彼が73年に発表した、上映時間3時間40分以上にも及ぶ前代未聞の問題作。
久々の再見だが、初めて観た時の強烈な印象はいささかも減じていない。
とにかく面白いので、3時間40分という物理的な長さをほとんど感じさせない。
サンジェルマン・デュ・プレのロケ撮影を中心とした簡素極まりない16ミリのモノクロ映像、少人数のスタッフ、キャスト、効果音楽が皆無(かかる音楽は出演者がかけるレコードのみ)、ヌーヴェル・ヴァーグを象徴する俳優ジャン=ピエール・レオーとベルナデット・ラフォンの出演等々、ヌーヴェルヴァーグのエッセンスだけで撮影したような映画で、この作品が“最後のヌーヴェル・ヴァーグ”と呼ばれるのも納得できる。
なにより、若さとそれゆえの痛々しさがこの映画には横溢している。
それを巧まずして(?)表現するアレキサンドル役のジャン=ピエール・レオーは、上手いとかなんとか言う以前に凄い俳優だ。
それも、いかにもこの俳優らしい、人物の饒舌な面を表現したところよりも、押し黙った時の表情にこの俳優の凄さを見る思いがする。
一方で、ヴェロニカ役のフランソワーズ・ルブランが強烈な存在感。
この人は他に映画出演がほとんどない素人同然の女優で(ユスターシュの愛人だったという)、当然のことながら演技だってさして上手くないが、その存在感になんというか、男にとっての“毒”を感じさせる女優だ。
男が嵌るとコワい女、いや、それが分かっていてもズブズブと嵌ってしまうという類の女であり、美人であるとかないとかはこういった女にはあまり関係がない。
たとえ笑顔でも目が決して笑っていないのはゾッとする。
マリー役のベルナデット・ラフォンは好演だが、撮影の雰囲気に耐えられず、数カットを残して途中で役を降りてしまったという。
これもなんとなく分かる気がする。
現場にはユスターシュの狂気が蔓延していたのだろう。
映画の前半でレオーが求婚する女性(ジルベルト)役のイザベル・ヴェンガルテンはロベール・ブレッソン監督の『白夜』(71。未見)に出ていた女優だというが、いかにもブレッソン映画のヒロインっぽい顔立ちの女優だ。
撮影はメルヴィルの『影の軍隊』(69)の撮影監督を担当していたピエール・ロム。
カルト作を数多く撮影していることで知られる人だが、1973年にしてモノクロ16ミリというこの仕事をよく引き受けたものだと思う。
調べると、この人はブレッソンの『白夜』(71)の撮影も担当しているとのこと。
ところで、これまではVHS(レンタル)でこの作品を観ていて、今回初めて国内盤DVD(廃盤)でこの作品を観たのだが、以前観たVHSに比して特に画質が良いという印象はなかった。
まぁ、これは良い画質で観たからどうこうという類の映画ではない。
こういった長い映画を一枚のDVDで通して観られるのはありがたいが…。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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