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成瀬巳喜男監督の『乱れ雲』を国内盤DVDで観た感想。
『乱れ雲』(67年)
監督:成瀬巳喜男
脚本:山田信夫
撮影:逢沢譲
音楽:武満徹
出演:司葉子、加山雄三、森光子、加東大介、草笛光子、浜美枝
初見。
成瀬巳喜男監督の遺作であり、王道ともいえる大人のメロドラマ。
夫を交通事故で亡くした妻、そして、その事故の当事者であった男…その二人の恋愛劇だから、内容は重苦しい。
後半の舞台が十和田湖畔の旅館に移ってから更に重苦しさ(息苦しさ?)が増す。
ストーリー展開はせかせかしているが(特に前半)、二人の男女の感情の移ろいは丁寧に見せているのが成瀬監督らしい。
キャストもいい。
ヒロイン由美子を演じた司葉子の楚々とした色気、品のある容姿が美しい。
とりわけ目の演技が印象的であり、後半は特に見応えがある。
相手役の加山雄三も劣らぬ好演である。
司葉子の義理の姉役で森光子が出演しているが、どうしても現在の姿が浮かんでしまい、落ち着いてみられなかった。
その愛人役、加東大介は為所が少なめで、この人の持ち味を十分に発揮できているとは言い難いが、この人以外にはちょっと考えられない役柄ではある。
あの二人のエピソードは息抜きとして必要なんだろうけど(それ以前の杉村春子の役割?)、なんとなく居心地悪かった。
武満徹の音楽が情感に溢れていて素晴らしい。
が、すでにエンタメ・プライス化されて3000円と入手しやすい価格になっていましたが、現在Amazonではそこからさらに40%オフとなり、1800円まで価格が下がっております。(11年2月9日現在)
持っていない方はこの機会に是非!
エリック・ロメール監督の『緑の光線』を国内盤DVDで観た感想。
『LE RAYON VERT』(85年)
監督・脚本: エリック・ロメール
撮影:ソフィー・マンティニュー
音楽:ジャン=ルイ・ヴァレロ
出演:マリー・リヴィエール、リサ・エレディア、ヴァンサン・ゴーティエ、ベアトリス・ロマン
再見。
ロメール映画の中では人気のある作品だが、私は以前観た時にはさほど面白い映画とは思わなかった。
ストーリーの起伏があまりないのと、主役の女性が我がままでメソメソしているだけの映画という印象が強かったからである。
ただ、この映画、観る側が男性と女性でかなり好みが分かれるようだ。
今回また観直そうという気になったのは主演がマリー・リヴィエールだから。
結果、印象としては以前観た時とあまり変わらない。
ベアトリス・ロマンとの口論のシーンは面白かったけど。
マリー・リヴィエールってもともとが老け顔のせいなのかな、ずっと後の出演作観ても印象がほとんど変わらない(良い意味で)。
ちなみに、VHSでは見えないという評判の緑の光線ですが、DVDではそれ用の加工がされているようで、しっかり見えます。
最近は音楽といえばジャズを聴くのがほとんどなので、ロックを聴く機会もぐっと少なくなってしまいました。
よって、この10年くらい私の好きなロックアルバムはほとんど変わっていません。
ですから、これまでいろいろなところに書いたことの繰り返しになります。
トシのせいか、どうしても保守的なセレクションになってしまいますが、心の正直には逆らえません(笑)。
どれも、アルバム名を書いただけで、内容がすっと脳裏に浮かぶものばかり。
ほとんど内容を暗記しているといっていいかもしれません。
ただし、ハードロック、へヴィ・メタル系は除いています。
あちらは愛し方がまた別なので同列には並べられない…私にとってはそんな気分なので…。
というわけでベスト11枚(順不同)。
●ピンク・フロイド『狂気』(73)
●ザ・フー『ロック・オペラ“トミー”』(69)
●ザ・フー『四重人格』(73)
●ヴァン・モリソン『ヴィードン・フリース』(74)
●ボブ・ディラン『血の轍』(75)
●ボブ・ディラン『激しい雨』(76)
●ザ・ローリング・ストーンズ『スティル・ライフ』(82)
●ザ・バンド『南十字星』(75)
●ジェフ・バックリィ『グレース』(94)
●ザ・キンクス『不良少年のメロディ~愛の鞭への傾向と対策』(75)
●ヴァン・モリソン『ムーンダンス』(70)
以下、その選考理由。
●ピンク・フロイド『狂気』…もし一枚だけといったらこれになるかもしれない。
これまで一体何度聴いたことか。
しかし、全く飽きることがないし、音も内容も古くならない。
ロックを超えた芸術作品といいたい。
●ザ・フー『ロック・オペラ“トミー”』…ちゃんと聴く前はロックオペラなんて陳腐なものだと思っていた。
その意味で、聴いてこれほど考えが変わったアルバムというのも珍しい。
楽曲の良さ、充実ぶりはもちろんのこと、このアルバムの音がとても好きだ。
キース・ムーンのドラムにはなんともいえない色気がある。
●ザ・フー『四重人格』…あの『フーズ・ネクスト』より、そして、もしかしたら『トミー』よりもこっちの方が好きかもしれない。
冒頭の波の音から感動的であり、それはラストの『愛の支配』で頂点に達する。
タイトルのせいもあるかもしれないが、あまりにも日本では過小評価されすぎ。
ちなみにザ・フーでは『ア・クイック・ワン』や『ザ・フー・バイ・ナンバーズ』もタマラナク好きだ。
●ヴァン・モリソン『ヴィードン・フリース』…これはまたなんとも地味な内容のアルバムだが、内容の素晴らしさ、凄さはなんとも表現のしようがない。
その意味で、ディランの『血の轍』に並ぶ(超える?)アルバムはこれだけのような気がする。
これを聴いて、ヴァン・モリソンは私の中でディランと並ぶ存在になった。
●ボブ・ディラン『血の轍』…いくらディランが偉大だからといって、60年代の諸作だけでは私の心をここまで捉えていなかっただろう。
やはり、『血の轍』があったから私にとってもディランは特別な存在になった。
世の中でディランの最高傑作に挙げられることが多いのも至極当然。
●ボブ・ディラン『激しい雨』…『偉大なる復活』と大いに迷うが、ライヴではやはりこれにトドメを刺す。
なぜかいまだにリマスター、リイシューされていないのは音楽界の一大損失。
最高のディランが記録されたアルバムは間違いなくコレなのだから。
●ザ・ローリング・ストーンズ『スティル・ライフ』…ストーンズのスタジオ盤なら確かに70年前後のあの4枚(あえて省略)に尽きる。
しかし私は彼らのライヴが好きだし、その意味で、初めて聴いた時、感動のあまり体が震えた(本当です!)『ラヴ・ユー・ライヴ』も捨てがたい。
が、彼らが好きになり始めた当時一番よく聴いたこれを今は挙げたい。
ミック・ジャガーのヴォーカルの魅力を骨の髄まで教えてくれた意味も大きい。
●ザ・バンド『南十字星』…ザ・バンドのアルバムは『ステージ・フライト』、『カフーツ』等、一般に評価が高くないものまで含めてどれも同じくらい好きだ。
しかし、これは中でも別格。
中でも『浮浪者のたまり場』…今さらだが、リチャード・マニュエルはなんという素晴らしいヴォーカリストだったのだろう。
●ジェフ・バックリィ『グレース』…80年代以降でエントリーしたアルバムはこれだけ。
それだけでもいかに私がこのアルバムを評価しているかがわかっていただけると思うが、実際それだけの内容を誇るアルバム。
ジェフ・バックリィはこの一枚だけでロックの偉人たちに肩を並べた。
●ザ・キンクス『不良少年のメロディ』…キンクスのアルバムからこれだけを選んだのは少々乱暴かもしれない。
確かにこれより優れたキンクスのアルバムなら他に何枚も挙げられるが、一番好きなアルバムといったらやっぱりこれになる。
それにしても、このアルバムのことを考えると、キンクスのアルバムを久々に浴びるように聴きたくなってしまうのだから困る。
●ヴァン・モリソン『ムーンダンス』…本当はキリの良いところで10枚で収めようとしたら、私の心の中でこのアルバムがどうしても引き下がらなくなったので入れざるを得なくなった(笑)。
ヴァン・モリソンの魅力をダイレクトに伝えてくれたアルバムとして決して忘れることのできないアルバムであり、特に前半の流れは完璧。
ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の『商船テナシチー』をレンタルビデオで観た感想。
『LE PAQUEBOT TENACITY』(34年)
監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ
脚本:ジュリアン・デュヴィヴィエ、シャルル・ビルドラク
撮影:ニコラ・エイエ
音楽:ジャン・ウィエネル
出演:アルベール・プレジャン、ユベール・プレリエ、マリー・グローリー、マディ・ベリー、ピエール・ローレル、ニタ・アルヴァレス、レイモン・エイムス
初見。
港町を舞台に友情と恋愛、運命の残酷さを描いたメロドラマ。
ジュリアン・デュヴィヴィエ監督らしい作品であると同時に、いかにもこの時代のフランス映画らしい作品である。
脇役に至るまで俳優陣が皆いい。
アルベール・プレジャンといえば、『巴里の屋根の下』(30)などルネ・クレール作品というイメージが強いが、デュヴィヴィエ作品にも違和感なく収まっている。
ヒロイン役のマリー・グローリーの容姿も決して古臭くないのがいい。
撮影は後にメルヴィルの『いぬ』(62)も担当することになる名手ニコラ・エイエ。
ジャン=リュック・ゴダール監督の『軽蔑』を国内盤DVD(東北新社)で観た感想。
『LE MEPRIS』(63年)
監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
原作:アルベルト・モラヴィア
撮影:ラウール・クタール
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演:ミシェル・ピコリ、ブリジット・バルドー、ジャック・パランス、フリッツ・ラング
再見。
アルベルト・モラヴィアの原作を映画化したもので、カルロ・ポンティ、ジョルジュ・ド・ボールガール製作。
ゴダールとしては異例の高額予算で撮られた大作映画である。
何度も観ている映画だが、正直なところ、それほど好きなゴダール映画というわけではない。
しかし、後半のカプリ島の海、そして舞台となった別荘が美しく印象的で、それを観るためにこの映画をまた観ようという気になっているような気がする。(もちろん、それだけではないが)
ところで、上記二人の製作はメルヴィルの『モラン神父』(61)『いぬ』(62)と同じである。
それもそのはず、この原作は、メルヴィルがジャン=ポール・ベルモンド、ジャンヌ・モロー主演で映画化するという話もあったという。
一方、ゴダールも元々はフランク・シナトラ、キム・ノヴァク主演で映画化を計画していたらしく、結局ミシェル・ピコリ、ブリジット・バルドー主演で落ち着いたわけだが、結果的にゴダールがメルヴィルの企画を横取りしてしまった映画だと言えるだろう。
もしかしたら、この映画がメルヴィルとゴダールの仲違いの原因のキッカケとなってしまったのかもしれない。
どちらにせよ、ブリジット・バルドーが出演したゴダール映画は後にも先にもこの一作。
その意味でも貴重であるが、ゴダールがバルドーにアンナ・カリーナのような演技を求めたために、バルドーが撮影中にキレてしまったと言われている。
大スター、バルドーにしてみたら、当時のアンナ・カリーナなど格下のまた下くらいの存在であったろうから、それはプライドが許さなかったのだろう。
ゴダールにしてみたら、この映画にはアンナ・カリーナとの自身の結婚生活の苦悩が明らかに投影されており、バルドーにアンナ・カリーナ的なものを求めるのは自然なことだったのかもしれない。(ちなみに、映画中にバルドーが着用する黒髪のウィッグは『女と男のいる舗道』(62)でカリーナが着用したものとクリソツである。またミシェル・ピコリが着用している帽子はゴダールの私物だったという)
大雑把なストーリーとしては夫婦関係の崩壊を描いた単純なものであるが、映画産業における製作者と監督、脚本家の関係も包含しているので、なかなか深い。
中盤の夫婦のアパートの中でのいがみ合いの場面がちょっと長く感じるが、全体としてはゴダールらしいハチャメチャ具合は少ない。
その点が物足りなく感じる人もいるかもしれないし、だからこそ落ち着いて観られるという人も多いだろう。
特筆すべきはフリッツ・ラングが実名の映画監督役で出演していることで、登場シーンも多めなのが嬉しいが、その存在感、貫録、気品とも素晴らしい。
ジョルジュ・ドルリューの音楽は、それ自体は素晴らしいが、同じテーマがあまりにも何度も繰り返し使われているのは少々興醒めである。
フランソワ・オゾン監督の『しあわせの雨傘』(公式サイト)をスクリーンで観た感想。
『POTICHE』(2010年)
監督・脚本:フランソワ・オゾン
撮影:ヨリック・ル・ソー
音楽:フィリップ・ロンビ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、ファブリス・ルキーニ、カリン・ヴィアール、ジュディット・ゴドレーシュ、ジェレミー・レニエ
77年のフランスを舞台とした、コメディタッチの人生讃歌。
カトリーヌ・ドヌーヴが雨傘工場の社長夫人という役柄で、あの『シェルブールの雨傘』(64年)に対するオマージュを感じさせる作品であるが(この邦題はちょっと…)、70年代後半の時代背景(労働問題や男女同権問題)が作品の重要な要素となっている。
ドヌーヴもいいが、ストーリーもよく練られていて見応えがある作品。
映画冒頭のジャージ姿でジョギングするドヌーヴの姿を観て、現在の彼女の現実を観客はいきなり突き付けられるわけだが、映画が進行してゆくにつれ、どんどん美しく見えてくるから不思議だ。
確かに美貌は衰えたが、女優としての存在感はいささかも衰えていないのはさすがとしか言いようがない。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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