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ジャック・ベッケル監督の『肉体の冠』を国内盤DVD(ジュネオンエンタテイメント)で観た感想です。
『CASQUE D'OR』(51年)
監督:ジャック・ベッケル
脚本:ジャック・ベッケル、ジャック・コンパネーズ
撮影:ロベール・ルフェーヴル
音楽:ジョルジュ・ヴァン・パリス
出演:シモーヌ・シニョレ、セルジュ・レジアニ、クロード・ドーファン、レイモン・ビュシェール、ウィリアム・サバティエ、ダニエル・マンダイユ
再見。
19世紀末のパリが舞台の映画。
原題は“黄金の兜”という意味で、主人公の娼婦マリーが、ブロンドの髪を兜型に結っている姿を表しているとのこと。
この映画に関しては、傑作という言葉しか出てきません。
初めから最後まで全く隙のない映画で、特に後半の展開など、息つく暇がないほどです。
シモーヌ・シニョレがとにかく素晴らしい。
彼女というと、個人的に、中年後の太った姿がどうしても強い印象として残ってしまっているのですが、この映画での彼女は実に美しい。
その、女そのものとでもいった佇まいや表情がなんとも魅力的なのです。
それに比べると相手役のセルジュ・レジアニはもう一つ存在感に乏しい感はありますが、シニョレとの相性が想像以上に良いので、そういった物足りなさをほとんど感じさせません。
二人の川原での逢瀬のシーンは、ジャック・ベッケルの師匠であるジャン・ルノワールばりの自然描写の見事さも相まって素晴らしいシーンとなっています。
また、ギャングの親分ルカを演じたクロード・ドーファンがいいです。
前半の貫禄たっぷりな姿が、次第に人間性を露にしてゆくところなど巧いですね。
物語はもちろんシニョレとレジアニの恋愛が大きな柱ですが、一方でレジアニとレイモン役のレイモン・ビュシェールの男同士の友情関係ももう一本の大きな柱となっています。
その二人の関係がまたなんともいいんですよね。
『現金に手を出すな』や『穴』もそうですが、男同士の友情をさり気なくも鮮烈に描いてジャック・ベッケルに匹敵するフランスの映画作家はいないのではないでしょうか。
ご承知の通り、私はメルヴィルのファンですが、さすがのメルヴィルもこの域にまでは達していないようにも思います。
(ここからネタバレ)
印象的なシーンをいくつか。
レジアニが自首して、ビュシェールの代わりに拘置所に入るシーン。
ルカを撃ち殺す時のレジアニの表情。
処刑場へ引っ張ってゆかれるレジアニの姿、それを見つめるシニョレの表情。
先日、同じシモーヌ・シニョレ主演、マルセル・カルネ監督の『嘆きのテレーズ』を観たのですが、タイトル通り、禁断の恋に落ちた人妻役のシニョレの“嘆き”の表情がとても良かったですね。
確かにこの頃のシニョレは美しいですよね。若い頃はこんなに美しかったのかと…。どうしても『影の軍隊』での印象が強かったもので…(苦笑)。
管理人さんが仰る通り、ベッケル監督は男同士の友情をさり気なく描くのがとても素晴らしいですよね。
メルヴィルも同様、ベッケルも五十代で夭折してしまったのが悔やまれる偉大な監督ですが、メルヴィルやベッケルが益々熟練した六十代・七十代で撮った作品なんかを観て観たかったですね…。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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