[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
アレクサンダー・マッケンドリック監督の『成功の甘き香り』を国内盤DVDで観た感想です。
『SWEET SMELL OF SUCCESS』(57年)
監督:アレクサンダー・マッケンドリック
原作:アーネスト・レーマン
脚本:クリフォード・オデッツ、アーネスト・レーマン
撮影:ジェームズ・ウォン・ハウ
音楽:エルマー・バーンスタイン
出演:トニー・カーティス、バート・ランカスター、スーザン・ハリソン、マーティン・ミルナー、バーバラ・ニコルス
再見。
フィルム・ノワールの古典の一つに数えられる傑作ですが、内容はギャングものではなく、マスコミ業界の内幕を鋭く抉った“社会派ノワール”とも評される作品であり、ここには殺しや拳銃は登場しません。
主人公は新聞の権威あるコラムニスト(バート・ランカスター)と、それにくっついて仕事を得ているプレス・エージェント(トニー・カーティス)の二人。
コラムニストの妹はクラブで働くギタリストと結婚寸前であり、ランカスターとカーティスは様々な手段を使ってこの二人を別れさせようとします。
ある意味、殺しよりもタチの悪い人間の姿がこれでもかと描かれています。
その内容が受けなかったのか、公開当時この映画は当たらず、監督のアレクサンダー・マッケンドリックは自身の監督としてのキャリアをほとんど失ってしまったといいます。
実際、撮影現場では監督とランカスターの意見の対立が幾度となく見られたとか。
私も初めて観た時はその内容にかなり面食らいましたが、今回観直してみて、なんとも抗し難い魅力を感じました。
確かに観る人によって好みは分かれそうですが、内容は実に見ごたえがあります。
キャストも、狡猾で神経質なコラムニストを演じたバート・ランカスターは見事な演技。
プレス・エージェント役のトニー・カーティスも実に素晴らしい。
その人物になりきっているかのようなハマリ役であり、演技もランカスターに劣らぬ見事なものです。
そして、所々に登場する、ロケ撮影によるニューヨークの街の描写がこの映画の圧倒的な魅力。
オープニングのNYの夜景をバックにエルマー・バーンスタインによるビッグ・バンド・ジャズが流れるところからして素晴らしい。
“ベスト・NY・ムービー”と評されるのも納得です。
想像しますに、ジャン=ピエール・メルヴィル監督の『マンハッタンの二人の男』(58年)はこの作品に大きな影響を受けたのではないでしょうか。
実際、メルヴィル監督は、ルイ・ノゲイラ著『サムライ』において俳優のダニエル・コーシー(メルヴィルの『この手紙を読むときは』『賭博師ボブ』に出演したがキャリアを築けなかった)について問われた際、この作品にも言及しています。
“彼なら(引用注:コーシーのこと)、たとえばアレクサンダー・マッケンドリックの『成功の甘き香り』〔一九五七年〕のトニー・カーティスに匹敵し得る役なんかも演じられたろうにな。”(引用―『サムライ―ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』ルイ・ノゲイラ著 井上真希訳 晶文社刊 より)
ナイトクラブのシーンでは、チコ・ハミルトンのグループの音楽をフューチャーしており、実際にハミルトンらも出演しています。
ウェスト・コースト・ジャズ(西海岸のジャズ)で当時名を馳せていたチコ・ハミルトンのグループをNYを舞台にした映画に出演させている点も面白いところでしょう。
フルートやチェロを使ったそのユニークなサウンドが、映画に違和感なく溶け込んでいます。
グループのギタリスト、スティーヴはランカスターの娘のフィアンセという設定であり、これを演じるのは俳優のマーティン・ミルナーなので、バンドのシーンでギターをちゃんと弾けているように見えないのがちょっと残念ですが。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
リンク、コメント、TB等はご自由にどうぞ。