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ロバート・ワイズ監督の『拳銃の報酬』を国内盤DVDで観た感想。
『ODDS AGAINST TOMORROW』(59)
監督:ロバート・ワイズ
脚本:エイブラハム・ポロンスキー
撮影:ジョセフ・ブルン
音楽:ジョン・ルイス
出演:ハリー・ベラフォンテ、ロバート・ライアン、シェリー・ウィンタース、エド・ベグリー、グロリア・グレアム
『私を最も魅了したアメリカのポリス・スリラー、それは『アスファルト・ジャングル』と『拳銃の報酬』の2本だよ…』
(Criterion盤DVD『仁義』の特典映像に収録されているジャン=ピエール・メルヴィル監督の1973年のインタビュー映像より)
再見。
ロバート・ワイズ監督といえば、『ウエスト・サイド物語』『サウンド・オブ・ミュージック』といった名作ミュージカル映画の監督として有名なので、今ではミュージカル映画の監督のように思われる人もいるかもしれませんが、初期はRKOに所属、低予算のフィルム・ノワール作品を監督していました。
主な作品にロバート・ライアン主演のボクシング映画『罠』(49)があります。
(以前『罠』について書いた記事)
この作品は、それまでのハリウッド映画における黒人の描かれ方に不満を感じていた黒人ポップス歌手のハリー・ベラフォンテが、主演の他に製作も兼ね、ワイズに監督を依頼した作品とのことです。
この映画はこれまで国内ソフトが存在せず、海外盤DVDで観ていましたので、今回初めて日本語字幕付きのソフトで観ました。
改めて観直してみて、ハリー・ベラフォンテ、ロバート・ライアン、エド・ベグリーの主演3人の存在感、バランスがとてもいいですね。
特にハリー・ベラフォンテとロバート・ライアンの黒人白人の対比がいかにもリアリティがあります。
3人のまとめ役エド・ベグリーもなかなか好演しています。
モノクロ時代の最後のフィルム・ノワールとも言われる、犯罪映画の傑作ですが、全体的にどこか“ドヨン”とした弛緩した雰囲気といいますか、倦怠感とでもいったような独特の雰囲気のある映画です。
この雰囲気を好むか否かで映画の評価はかなり異なることでしょう。
私はこの雰囲気がとても好きですが。
今回見直して特に印象的だった場面は、決行当日ハドソン河で落ち合った三人が決行までの数時間を過ごす間の描写です。
三人がそれぞれ別々に何をするでもなく、じっと時の過ぎるのを待っているだけなのですが、映像だけで三人の不安、焦燥感、銀行襲撃にかける思いといったようなものが見事に伝わってきます。
私はこれを観て、メルヴィルの『ギャング』(66)におけるプラチナ強奪シーンを思い起こしました。
ロバート・ライアン絡みでシェリー・ウィンタースとグロリア・グレアムという二人の女優が出演してますが、しどころはあまりありません。
グロリア・グレアムに往年のオーラ?が感じられない点がちょっと残念。
あと忘れてならないのがジョン・ルイスによる音楽の魅力で、作品のムードを見事に表現しています。
メルヴィルの『仁義』(70)の音楽を担当したエリック・ドマルサンは、この『拳銃の報酬』のサントラをメルヴィルに何度も聴かされたということです。
メルヴィル曰く『これこそが私が求めている音色なんだ!』
事実、『仁義』のエンディング・テーマと『拳銃の報酬』のオープニング・テーマはそっくりです(笑)。
皮肉な結末は今見ても説得力があります。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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