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アート・ペッパーの77年のNYヴィレッジ・ヴァンガードにおけるライヴ盤が国内盤CD4枚バラ売りで久々に再発されたので(『ユニバーサルJAZZ THE BEST \1100 バイ・リクエスト50』シリーズ)、まずはその中から『サーズデイ・ナイト・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード+1』と『サタデイ・ナイト・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード+1』の2枚を購入して聴いてみた。
概してアート・ペッパーは50年代の演奏ばかりが人気あり、70年代に復活してからは芸風が変化したこともあり、顧みられることは多いとは言えない。
私個人はどちらの時代のペッパーも好きだが、70年代のペッパーは50年代以上に楽器の鳴りが素晴らしいし、演奏にも深みが増したと高く評価している。
特に、このヴィレッジ・ヴァンガードにおけるライヴは、アート・ペッパーとしても、ヴィレッジ・ヴァンガードにおけるジャズのライヴ盤としても、まずは最高の内容である。
もともと、このライヴは、CD初期には輸入盤で今回のように4枚のCDに分けてバラ売りで発売されていたが、国内盤ではまとめて4枚組、それ以降は未発表音源も加え、9枚組のCDボックスにコンプリート化されて発売されていた。
私も以前はボックスを所有していたクチだが、お世辞にもちゃんと聴いていたとは言いがたい。
というのも、これに限らないことだが、ボックスは概して聴かないものなのである。
いや、たとえ聴いても、聴くこと自体が目的化し、音楽そのものにじっくり浸ろうというふうにはなかなかならない。
あまりに分量があるために、枚数を“こなし”、聴いたという事実だけで満足してしまうのである。
それでも、このライヴの印象が強烈だったのは、やはり演奏があまりに素晴らしかったからだ。
今回の発売はCD初期の輸入盤と同じ4枚バラ売りである。
9枚組ボックスに比べ、マスタリングなどの表示がないので、音質的には評価が難しいが、一枚一枚買ってじっくり聴いてみるにはかえって好都合であるし、当然のことながら価格の安さも魅力的である。
そして、このライヴの大きな魅力は、共演者がジョージ・ケイブルス(p)、ジョージ・ムラーツ(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)と最高のメンツである点。
実際、彼らの演奏は例えようもないほど見事だ。
特に絶品というべきがジョージ・ケイブルスのピアノで、随所で聴かれるソロはどれも素晴らしいし、ジョージ・ムラーツのベースとの絡みはジャズの醍醐味を堪能させてくれる。
エルヴィン・ジョーンズのドラムは、その二人に比べれば意外と目立たないが、その存在感、スケールの大きさはやはり余人に替えがたいものがある。
そして、なんといっても、ペッパー本人のプレイが実に感動的。
特に、『サーズデイ・ナイト・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード+1』においては、1曲目『悲しきワルツ』から2曲目『グッドバイ』、3曲目『ブルース・フォー・レス』という流れが最高に素晴らしい。
ここまでサックスの“音”が哀感をもって聴く側の心に迫ってくる演奏が他にどれだけあるだろうか。
ジャズを通して男の哀愁とか、男のダンディズムとかに触れたかったら、是非ともこれを聴いて欲しい。
これらを聴いていると、これが人生、これがジャズだ、とキメぜりふの一つも言いたくなってしまう。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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