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休刊(廃刊?)が決まったスイング・ジャーナル最新号を本屋の店頭で立ち読みしてきた。
いや、最終号ということもあってホントは買うつもりだったのだが、実際はそんな気にならなかった。
表紙はジョン・コルトレーン。
中身もビル・エヴァンスの名盤の特集と、私がスイング・ジャーナルを読み始めた20数年前とちっとも変わらない。(ちなみに私がちゃんと毎月買っていたのは90年頃から95年頃まで。最近は立ち読みする機会もなくなっていた。)
これでは休刊もやむなしと感じたのは私だけではないだろう。
いつまでたってもコルトレーン、エヴァンス、マイルス、ロリンズら、50~60年代の名盤特集の繰り返し。
今さらレコーディング秘話とかなんとかいったところで、それで雑誌の購買意欲を煽る力にはなり得ないし、アルバムレビューでいえば、業界御用評論家諸氏たちのどこかで読んだようなカビの生えたレビューよりも、ネットの方がもっと屈託のない率直な意見が多く見受けられるのだから(しかもタダ同然で)、雑誌の存在感などなくなるのは当然といえば当然だ。
結局、この数十年の間、ジャズ界において、彼らに変わりうる、もしくは匹敵するようなスターも出ず、アルバムも出なかったということだろう。
CDを買わない人がスイング・ジャーナルを愛読するとも思えない。
その意味で、音楽ソフトの供給ジャンルとしてのジャズの停滞(減退?)という側面は否定できない事実なのだろうと思う。
そして、これはジャズだけの現象ではないのかもしれない。
先日伝えられたHMV渋谷店閉店のニュースは、開店時からあの店を利用してきた客の一人としてはショッキングな出来事だったが、ここ数年は、一方の雄タワーレコードに比べて、価格の高さ、品揃えの悪さ、ポイントサービス等におけるサービスの悪さ等々の理由から自然と足が遠のいていたから、ある意味非常に納得のいく結果であるとも言えた。
上記の理由から、ここ数年は、HMVで買い物をするということは、何か特別やむを得ない事情があった場合のみとなってしまっていたくらいだから。
閉店の理由として、業界全体でCDが売れなくなってきたから、と言われているようだが、それはもちろんネットの普及による通販等の影響は大きいだろうが、聴く者を惹きつける魅力ある音楽がここ10年ほどで急速に生まれなくなってしまっていることが大きいのではないか。
ロック、ポピュラー関係でも、新譜において、これといった大ヒットアルバムの数は明らかに少なくなっているようだし、我々保守的な中年たちにとっては、ここ15年ほどは新譜よりは60~80年代の旧盤のリイシューにしか関心がいかなくなってきていたのもまた確かである。
ただ、名盤のリマスターやら紙ジャケやらの繰り返しにもまた限界があって、今度は音がいいとか、なんとかビットリマスターとか、揚句の果てにはHMCDとかSHM-CDとか言われても、同じアルバムを一体何回出せば気が済むんだよ、さすがにもういい加減にしてくれという気分になってきているのもまた否定できない。
いくら内容が素晴らしいとはいえ、同じアルバムばかり買ってもしようがないのだ。
ある意味、音楽の様式の進化?としては、ほとんど新たな未来の姿が見出せなくなっているジャズはともかく、ロックまでこんなに早く商業規模が衰退し始めるとは思いもよらなかった。
例えば、クラシックは19世紀には膨大な数の傑作を生んだが、20世紀に入るとその数は激減した。
コンサートのレパートリーに残っている20世紀の作品の数を思えばそのことは納得せざるを得ない事実だろう。
ジャズはフリーだ、フュージョンだとなんだかんだ言われつつ、結局は50~60年代の様式(簡単に言えば4ビートのハードバップ)の焼き直しより他にリスナーの関心を繋ぎ止めることができなかった。
『スイング・ジャーナル』の表紙、中身はなによりの証左である。
ここから分かるのは、結局、いいものが生まれる幸福な時代というものがある一方で、その時代が過ぎてしまえば、そのジャンルは創造的には衰退せざるを得ないということだ。
それに比べ、市場規模やポピュラリティからいって一見安泰と思われていたロックも、黄金時代であった70年代以降、知らず知らずのうちにゆっくりと衰退期に入っていたのかもしれない。
それが21世紀になって明らかに、それも急激にジャンルとしての魅力を失いつつあるように思える。
CD売り上げの減少は、そのジャンルそのものの魅力の減退の表れでもあるし、それが大衆と結び付きの強いロックともなれば猶更だ。
CDショップの売り上げを牽引するのはジャズでもクラシックでもなく、やはりポピュラー、とりわけロックだろう。
ジャズやクラシックは商業規模からいって、もともとそんなに売れるジャンルではない。
HMVの閉店に代表される出来事は、結局、ポピュラー、ロックのCDが売れなくなったからなのだろう。
それにしても、昔懐かしいWAVE(とりわけ渋谷店、六本木店、池袋店)、VIRGIN(とりわけ新宿店、京都河原町通り店)に続いてHMVまで撤退ということになったら(いずれおそらくそうなるだろう)さすがに寂しい。
私は仕事で全国を回ることが多いが、大阪にしても、京都にしても、中古CDショップまで激減しているという状況がある。
以前は重宝していた優良店がどんどん店を畳んでしまっているのだ。
HMVのような大手CDショップだけでなく、どうして中古店にまでリスナーの足が向かなくなったかというと、結局は、欲しいCDはすでに皆手元にあって、新たに買い足す必要のある(魅力ある)CDが見当たらないからだと思う。
こう考えてくると、音楽業界はとんでもない氷河期に入ってきているような気がする。
しかも、問題の本質は売り上げ云々という量的なものではなく、質的なものだからより深刻…なのではないだろうか。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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