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336021_001.jpgジョニー・トー監督の『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』をスクリーンで観た感想。

Vengeance 復仇』(09年)
監督:ジョニー・トー
脚本:ワイ・カーファイ
撮影:チェン・シウキョン
出演:ジョニー・アリディ、アンソニー・ウォン、ラム・シュ、ラム・カートン、サイモン・ヤム

スクリーンで映画を観るのは久々です。
こと新作映画に限れば、アラン・コルノー監督の『マルセイユの決着(おとしまえ)』以来かもしれません。
このところジョニー・トー監督の作品をDVDで観る機会があり、どれも大変面白かったので、今回、最新作をスクリーンで観られるのはとても楽しみでした。
一部情報ではメルヴィルの『サムライ』に影響を受けているとの話もあり、もちろん、その楽しみもありました。

主演はフランス人俳優・歌手のジョニー・アリディ
しかし、私はこの人が出た映画はほとんど観たことがありません。
その中ではパトリス・ルコント監督の『列車に乗った男』(02)は良かったのですが、共演のジョン・ロシュフォールの方が数段魅力的でした。

ともかくも、このこの『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』(もうちょっと簡潔なタイトルにできなかったのか?)は、娘婿、孫二人を殺し屋組織に殺された(娘は辛うじて生き残った)ジョニー・アリディが、その復讐を誓うというのが簡単なストーリーです。

336021_004.jpgところが、主役のジョニー・アリディよりも、アンソニー・ウォン、ラム・シュ、ラム・カートン3人の殺し屋たちの方が遥かに魅力的に思えました。
どう贔屓目に見ても、あの3人たちの方が人間味といい、キャラといい、描写のカッコ良さといい、“こっちの方が主役じゃないか!”と思ってしまったほどです。
まぁ、残された者が殺された家族の仇を討つという、いかにもありがち復讐話よりも、それをあくまで仕事として、何があっても男気で請け負う3人のストーリーの方が魅力的に見えてしまうのはある意味当然かもしれませんが…。

あと、映画の簡単な印象だけ言うと、とても面白い映画で、好きな映画ですが、私個人の生理的感覚からすれば、銃撃シーンが全体的に長すぎるきらいがあるようにも感じました。
特にラストなど。
あと、ジョニー・アリディの記憶喪失の件なども、全体のストーリーの中での意味合いがもう一つ弱いようにも感じました。
前半に出てくる刑事役のマギー・シュウなど、刑事にしては美人過ぎるものの(笑)、いかにも刑事らしい隙のなさそうな物腰が存在感を発揮しているので、出番が少ないのが残念でした。
そういった意味において、以前観た、素晴らしく魅力的な『エグザイル/絆』や『ザ・ミッション/非情の掟』などに比べますと、ジョニー・トー監督作品としては、この作品は分が悪く感じます。

それと、『サムライ』やメルヴィルの影響が語られる監督だけあって、この映画にはメルヴィル・ファンなら思わずニヤリとするシーンが(特に前半)続出します
思いつくままに挙げてみますと(カッコ内は元ネタと思われる作品)

●殺し屋が仕事に使った道具を川に放るシーン(『サムライ』)
●仕事をやり遂げた殺し屋が部屋を出た瞬間に人に顔を見られる(『サムライ』)
●ホテルの鍵を表から外すシーン(『リスボン特急』)
●森の中で敵二人に迫られ、絶体絶命かと思われるものの、その後ろに味方が助けに来るという構図(『仁義』)
●首実検のシーン(『サムライ』)
●拳銃を調達するオヤジの存在(『サムライ』)

思い出せる限りではこんなところでしょうか。
どちらかというと、これらのシーンは映画全体のストーリーには大きな影響がなく、ジョニー・トー監督が遊びの感覚で撮っているという印象の強いシーンでした。

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無題
こんにちは、ご覧になったのですね。メルヴィルに詳しいマサヤさんがこの映画にどのような感想をもたれるのか楽しみにしてました。
タイトルはあくまで配給側の都合で、トー監督は「長すぎるし、内容を反映していない」とダメ出ししてましたし、私も原題の方が好きです。
アンソニー・ウォンたちの存在感は仰せの通りで早々にいなくならざるを得なかったものと思われます。
ラストの銃撃戦も長すぎですよね。子供たちがシールを貼る募金活動は午前中までなので、そこから日が暮れた後までってマカオの警察は?という感じです。
ホテルの鍵のシーンはさすがにリスボン特急まんまではコメディになってしまいそうだしホテルのドアはそんな薄くないと思うのでああいう感じなんだと思いますが、今後あの手のドアのホテルに泊まるのはちょっと恐いですねえ。。
トー監督のスリはご覧になりましたか?
mon 2010/06/12_Sat_12:55:09 編集
復仇
monさん
誤解を与えるような書き方ですみません、タイトルが長いのではなく、邦題が長いですよね。
それにしても、監督本人にダメ出しされるようでは問題ですね。
最近のフレンチ・ノワールものにしても同じような雰囲気の邦題が多いですが、昔の映画のように40年経っても語り継がれるようなタイトルと言えるのかどうか…。

ラストの銃撃戦は長すぎて、その前にアンソニー・ウォンたちの銃撃戦で高揚した気分がクールダウンしてしまいました。
前回ご紹介いただいた『スリ』はまだ観る機会がありませんが、『PTU』は観ました。
近くブログにアップします。
マサヤ 2010/06/13_Sun_12:52:16 編集
確かに
邦題名がイミフなんですよねぇ。
ジョニー・アリディといえば、この間観た
『最後のマイ・ウェイ』でマイウェイを作ったフランス人歌手・クロード・フランソワが、アリディにライバル意識を燃やしていた事や、フランソワと恋仲だったシルヴィ・ヴァルタンと結婚した事がありましたねぇ。

そんなイメージがあっただけに…ジョニー・トー監督作の主演、と聞いたときは、どうなんでしょう??と。

で観てみると、おっしゃるとおり殺し屋の方が『仁義』のあの三人みたいにスマートなんですねぇ。

『サムライ』を意識したシーン、拳銃を渡すオヤジと、顔を見られてしまうシーンしか気づきませんでした、トホホです、ワタシ。
chokeemarbo URL 2013/09/05_Thu_22:33:02 編集
ジョニー・アリディ
chokeemarboさん
ジョニー・アリディっていかつい顔のイメージですが、ナタリー・バイとの間にも子供がいますし、主に歌手としてフランス語圏内ではいまだにすごい人気のようですね。
彼の歌をきちんと聴いていないので、凄さがよく分からないというのが実際のところです。
マサヤ@管理人 2013/09/07_Sat_01:17:08 編集
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フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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