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山下耕作監督の『昭和残侠伝 人斬り唐獅子』(69年)をDVDで観た感想。

シリーズ第6作
先日、シリーズ第7弾の『死んで貰います』は最高傑作ではないというようなことを書いたが、この『人斬り唐獅子』を観ながら、これこそ最高傑作なのではないかとの思いを強くした。

なによりドラマがしっかりしているし、丁寧な演出によって各々のキャラ立ちが明白。
任侠映画独特のベタベタ感がこの作品は薄く、どこか格調の高さが感じられるのが個人的には高評価。

キャストでも片岡千恵蔵が圧倒的存在感で締めているし、この作品ではヒロイン役小山明子のサラッとした持ち味が却って好印象。
当然のことながら高倉健池部良も堪能させる。
音楽の使い方も効果的で巧い。

監督の山下耕作は『昭和残侠伝』シリーズで唯一の監督作だが、実にもったいないとしか言いようがない。

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マキノ雅弘監督の『昭和残侠伝 死んで貰います』(70年)をDVDで観た感想。

シリーズ第7弾
シリーズ最高傑作なんて声もあるが、それは言いすぎかと。
映画全体のプロットの仕掛けはそれなりに巧妙なのだが、監督がこのシリーズ独特のお約束に酔っていない感じがする。
お約束の高倉健の抑えた怒りが爆発するまでの仕掛けに物足りなさがあるし、個人的に最大の見ものである池部良との道行シーンもどこかあっさり気味。
個人的にはそのあたりに不満がある。
泣かせるエピソードもあるし、映画としては当然見ごたえはあるのだが、シリーズ第7弾ともなればさすがに製作側にマンネリ感があったのか。


シンコー・ミュージックディスク・コレクションという単行本シリーズは、ポピュラーミュージック全般からジャズに至るまで、いったい何冊出ているのか分からないほど数多くの種類が出ているが、何故かこれまでフレンチ・ポップスに関するものが出ていなかった。
確か10年くらい前に次期刊行予定といった形で一度発売が告知されたことがあったが、それっきり。

それが先日「フレンチ・ポップ」というタイトル(佐藤 篁之氏監修)でようやく発売になった。
本屋でパラパラめくった感じでは、いわゆる大物以外の知られざるアーティストも数多く取り上げられ、時代的にも満遍なくフレンチ・ポップ全般に目の行き届いた内容という印象である。
少々値は張るが、CDショップでもフレンチ・ポップスの取り扱いの少ない昨今、貴重な本であることに違いはない。


マーヴィン・ルロイ監督の『ジョニー・イーガー』(41年)を国内盤DVD(ブロードウェイ)で観た感想。

久々にフィルム・ノワールの傑作を観たような気がする。
キャスト、演出、ストーリー、いずれも見事。
マーヴィン・ルロイ監督ロバート・テイラー主演といえば『哀愁』(40年)が有名だが、これはその翌年の作品であり、ロバート・テイラーの美男ぶりが素晴らしい。

だが、それにも増して魅力的なのがヒロイン役のラナ・ターナーである。
ジョン・ガーフィールドと共演した、あの名作『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(46年)の5年前の作品だが、すでにというか、男を一瞬で落とす魔性がある。
テレビ画面を通じて彼女の濃厚な色気、芳香が漂ってくるようだ。
比較しては悪いが、マリリン・モンローなんかより(失礼!)彼女の方がよっぽど色気があって魅力的だと思うのは私だけか。
なんというか、男を惹きつけるオーラが違う。
肉感的な肢体といい、声の良さといい、まさしく最強のファム・ファタールである。

あと、この映画で忘れてはならないのがアル中男色(?)の友人役を演じたヴァン・ヘフリン
とここまで書いて調べてみたらなんと!この映画でアカデミー賞助演男優賞を得ていたという。
納得の名演技である。

ボブ・ディランのニューアルバム『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』(『SHADOWS IN THE NIGHT』)が発売になったので、さっそく国内盤を買って聴いてみた。

以前のブログで、このアルバムにはあまり期待していないというようなことを書いた。
簡単に言えば、ここ20年くらいのディランの声が苦手だからだ。
しかし、実は数日前にあるサイトで収録曲『ステイ・ウィズ・ミー』を聴いて感動してしまったのである。
なにより声が違う歌い方が違う
このアルバムに対する期待が一気に高まった。

全10曲、収録時間35分はCD時代のアルバム収録時間としてはかなり短い方だろう。
全曲がアメリカン・スタンダードの作品ばかりのようで(私もほとんど知らない曲ばかりだ)、菅野ヘッケル氏のライナーノーツを読む限り、やはりフランク・シナトラへのトリビュートの色合いが濃いようだ。
全曲が一発録りで、オーバーダビング等もないという。

アルバム全体の印象は極めて地味で、ロック・ビート皆無のバラード・アルバムである。
それも、同じような雰囲気のバラード・ナンバーが現れては消える。
バック・バンドの演奏もどの曲もほとんど変わり映えがない。
こんなアルバムはディラン史上一枚もなかった。

このアルバムを聴いたディラン・ファンは面食らうのではないか。
もちろん、私もその一人だが、このアルバムを理解する鍵はやはりシナトラではないかと思う。
このアルバムはロサンゼルスのキャピトル・スタジオで録音されたという。
シナトラは50年代前半から60年代前半にかけてキャピトル・レコードに所属し、まさしくこのスタジオで多くのアルバムを録音した。

この時期はシナトラのジャズシンガーとしてのまさしく絶頂期で、スイング・アルバムとバラード・アルバム両方に傑作がひしめいている。
そして、この『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』はキャピトル時代のシナトラのバラード・アルバムにインスパイアされたのではないかと思われるのだ。
アルバムの空気感、雰囲気がとてもよく似ているのである。

もっとも、キャピトル時代のシナトラのアルバムはネルソン・リドルビリー・メイゴードン・ジェイキンスといった優れたアレンジャーがアレンジを担当しており、バラード・アルバムの多くはストリングスのアレンジに印象的なものが多かった。
ところが『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』にはストリングスは一切ない。
ごく控えめな管楽器奏者の他は、いつものディラン・バンドの面々だけである。

ディランはこう語っている。
『こういうものをずっと前からやりたいと思っていたが、30人編成向けの複雑なアレンジを5人編成のバンド用に精製する勇気をもつことがなかなかできなかった』

想像するに、ディランはシナトラのキャピトル時代のバラード・アルバムを参考としながらも、全く同じものを作ろうという気はなかった。
シナトラのような大編成のバックは起用せず、あくまでも自身のバック・バンドを起用して同じような音楽世界を描き出したいと思ったのではないだろうか。

この試みが成功しているかどうかは私もまだ判断が付かない。
しかし、私個人はこのアルバムが大変気に入っている
買ってからもう何度聴いたか分からない。
収録時間が短いこともあるが、あっという間にアルバム一枚聴き通してしまうのである。

これまで他人の曲も数多く歌っているディランだが、これほど真摯に歌っているディランは久しぶりではないか。
声は私の苦手な近年のダミ声ではなく、意外なほど伸び伸びとした声質である。
ライナーノーツの菅野ヘッケル氏によれば、この数年ディランの声はどんどんクリアになっているという。
私が知らない間にディランは変貌しつつあるのかもしれない。

また、ライナーノーツによれば、ディランと生前のシナトラには親交があり、折につけディランはシナトラからアドバイスを受けていたという。
こうしたエピソードは双方のファンとしては嬉しい。
シナトラに限らないが、ディランという人は先人に対する畏敬の念を隠そうとしない。
私がディランの好きなところである。

偶然かもしれないが、今年はシナトラ生誕100年
シナトラに対するディランの信奉の念が、このような真摯な一枚を作らせたのではないだろうか。

参考:シナトラのキャピトル時代のバラード・アルバム
●『Songs For Young Lovers』(53年)
●『In The Wee Small Hours』(55年)
●『Close to You』(57年)
●『Where Are You?』(57年)
●『Only The Lonely』(58年)
●『No One Cares』(59年)
●『Point Of No Return』(61年)

昔、私はこれらすべてのアルバムを聴いた。
内容をすべて覚えているわけではないが、どれも優れた出来栄えであったと記憶している。
個人的な一押しは『In The Wee Small Hours』。
シナトラのみならず、ジャズ・ヴォーカル史上の傑作。
続いて『Only The Lonely』だろうか。

先日、昨年の紅白における松田聖子について書いたが、個人的に一番良かったのは中島みゆきであった。
私は中島みゆきが前回紅白に出た時に観ていないから、中島みゆきがテレビで歌っている姿を観ること自体ほとんど初めてと言ってよかった。

その昔、私は中島みゆきのファンであった。
といっても70年代後半から84年くらいまでの短い間だが、当時は中島みゆきがテレビの歌番組に出るなんて有り得ない出来事だったのだ。

中島みゆきで好きなアルバムは『愛していると云ってくれ』(78年)、『親愛なる者へ』(79年)、『臨月』(81年)の3枚。
しかしその後、『寒水魚』(82年)、『予感』(83年)、『はじめまして』(84年)と聴いていって彼女の歌への興味を失った。
それ以後のアルバムは一枚も聴いていない。
もちろん、シングルも。
彼女はずっと活躍していたから、何かの拍子に歌が耳に入ることはあったが、良いと思った記憶すらない。

どうしてここまで彼女の歌への興味を失ってしまったのか、今となっては自分でも不思議でならないのだが、82年から84年に発表された上記の3枚のアルバムの内容が、私の好みとはどんどん違う方向へと進んでいったことは確かだ。

寒水魚』はバカ売れし世間的にも絶賛されていたが、私にはそれ以前のアルバムと比べるとさして良いとは思えなかったし、『予感』を聴いた時には明らかにそれまでの中島みゆきとは違う方向に彼女が向かっているのを感じた。
そして、『はじめまして』を聴いた時、もはやこれまで、と思い、今後彼女のアルバムは買わないと固く決意した。
それから30年、確かに一枚のアルバムも買っていないから、我ながらよほど固い決意だったと見える。

中島みゆきの歌が私の好みとどう違っていったのか?
それを考える余裕は今はないので割愛。
今回の主題は彼女の膨大な作品の中から偏愛の一曲を紹介することだ。

私にとって、彼女の数多い名曲の中から際立った何曲かを選ぶことはそれほど難しい作業ではない。

●『ひとり上手』(シングル曲。アルバム『臨月』収録)
●『化粧』(アルバム『愛していると云ってくれ』収録)
●『タクシードライバー』(アルバム『親愛なる者へ』収録)
●『狼になりたい』(アルバム『親愛なる者へ』収録)

あたりに絞られるが、1曲となるとやはり『ひとり上手』を選ぶ。

中島みゆきを知ったのは多聞に漏れず『わかれうた』(77年)であった。
そこから数年の間に『おもいで河』、『りばいばる』、『かなしみ笑い』と怒涛の名曲シングルラッシュが私を襲った。
もちろん、遡って『時代』も聴いた。
そんな中、ダメ押しの如くリリースされたシングルが『ひとり上手』(1980年10月21日発売)だった。

この曲の衝撃といったらなかった。
完璧なメロディ、完璧な歌詞世界、完璧なアレンジ、完璧なヴォーカル・・・このような完璧な曲がこの世に存在すること自体奇跡のように思われた。
小犬を抱えた彼女の姿を捉えたドーナッツ盤のジャケットに至るまで、ビジュアルも含めた世界観の表現は今見ても全く見事という他ない。
その衝撃の強さは、30年以上前に初めてラジオで聴いた頃の空気感を今でも心に鮮明に呼び起こすほどだ。

それから中島みゆきの音楽から離れた私だが、実は『ひとり上手』はずっとカラオケの定番レパートリーだった。
何度聴いても、何度歌っても感動する、まさに究極の偏愛の一曲である。



ジャック・ドレー監督の『ボルサリーノ』(70年)を国内盤ブルーレイで観た感想。

この映画を観るのは久しぶりである。
人気絶頂にあった頃のアラン・ドロンジャン=ポール・ベルモンドが共演した唯一の映画だが、ご存知の通り、長らく国内盤DVDは発売されなかった。
昨年ようやく待望のDVDとブルーレイが発売、私もすぐさまブルーレイを購入したのだが、
ブルーレイの画質がアマゾンでボロクソに叩かれていた上、私自身映画から離れていた時期ということもあってこれまで観る機会がなかった。

それに正直言うと、私はこれまで『ボルサリーノ』という映画があまり好きでなかった。
理由は我ながらはっきりしないが、おそらく30年代の雰囲気が好みでなかったのと、あまりにもギャング映画然とした内容に深みを感じなかったせいだろうと思う。
クロード・ボランの音楽もさして魅力的と思わなかった。

ところが今回、それらの点はほとんど気にならなかった。
過去に観ていて免疫があったせいだろうか。

タイトルのボルサリーノとは言うまでもなくイタリアの帽子ブランドの名前だが、さすがにこの映画における登場人物たちのファッションは素晴らしく、とりわけドロン、ベルモンドのスーツ姿のカッコ良さには惚れ惚れとさせられる。
なによりも、全盛期の大スター二人が実に楽しげに同じ画面に収まっている・・・これぞ映画の奇跡であり、映画を観る幸福そのものである。

もちろん、二人はその後パトリス・ルコント監督の『ハーフ・ア・チャンス』(98年)でもう一度共演を果たしている。(過去に書いた『ハーフ・ア・チャンス』の記事
しかし、当然のことながら『ボルサリーノ』と『ハーフ・ア・チャンス』の共演は全く意味合いが異なる。
二人がまだ若く、名実ともに最高のスターであったこの時期に『ボルサリーノ』という映画が作られ、こうして今観る事ができるという事実に我々は感謝するべきだ。
この映画を観ていると素直にそう思わされる。

評判の悪いブルーレイの画質については、確かに失望しないと言ったらウソになるだろう。
しかし、これも予め覚悟していたせいか、想像していたよりはマシに感じた。
それどころか、映画が進むにつれ、気にならなくなっていった。
これも映画の魅力のなせる業か。

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趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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