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以前別サイトにて書いたフランソワ・トリュフォー監督作品のレビューの転載です。(一部手直しあり)
今回は『野生の少年』。

20498349.jpgL’ENFANT SAUVAGE』(70年)
監督:フランソワ・トリュフォー
脚本:ジャン・グリュオー、フランソワ・トリュフォー
撮影:ネストール・アルメンドロス
音楽:アントワーヌ・ドゥワメル
出演:ジャン=ピエール・カルゴル(ヴィクトール)、フランソワ・トリュフォー(ジャン・イタール博士)、ゲラン夫人(フランソワ・セーニエ)
85分、モノクロ


18世紀後半、フランスの山中で見つかった獣同然の野生児の少年。
その実話を、イタール著「アヴェロンの野生児」を題材に映画化したドキュメンタリータッチの作品。
 
大人は判ってくれない』から10年、トリュフォーは今度は子供の側からではなく、教育する大人の立場に立った作品を作ることになります。
それがこの『野生の少年』で、この映画がジャン=ピエール・レオーに献辞という形で捧げられているのもそのためでしょう。

久しぶりのモノクロ映像で、初めてトリュフォー作品の撮影を担当したネストール・アルメンドロスの奥行きのある美しいカメラワークが見事です。
彼はそれまで主にエリック・ロメールの作品の撮影を担当していましたが、そのカメラワークに惚れ込んだトリュフォーはこれ以後、出来る限り彼を起用することにしたとのことです。

少年を演じるジャン=ピエール・カルゴルはもともと本物のジプシーの子供だったとのこと。
だからというわけではないでしょうが、ここでの演技は本当に素晴らしく、本物の野生児ではないかと思うほど。
それにしても、この撮影は本当に大変だったことでしょう。
その野生児をヴィクトールと名づけ、人間として生きるための教育を施すイタール博士役トリュフォー自身が出演。
ここでの彼は正にはまり役で、その演技もなかなかの出来です。
実話を基にした映画ということで、全体的に痛々しく感じてしまう部分もあり、観ていてそれがツライですが、一映画作品として実に感動的な作品に仕上がっています。

最後に、この映画を観たアルフレッド・ヒッチコックからトリュフォーに宛てた祝電を紹介しましょう。
「『野生の少年』を観た。素晴らしい映画だ。医師イタールを演じた素晴らしい俳優のサインを送ってほしい。この映画を観ながらとめどなく涙を流していた妻のアルマに上げたい。愛をこめて、ヒッチコック」

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以前別サイトにて書いたフランソワ・トリュフォー監督作品のレビューの転載です。(一部手直しあり)
今回は『暗くなるまでこの恋を』。

LA SIRENE DU MISSISSIPPI』(69年)
監督:フランソワ・トリュフォー
脚本:フランソワ・トリュフォー
撮影:ドニ・クレルヴァル
音楽:アントワーヌ・ドゥワメル
出演:ジャン=ポール・ベルモンド(ルイ・マエ)、カトリーヌ・ドヌーヴ(マリオン)、ミシェル・ブーケ(コモリー)
123分、カラー


ウィリアム・アイリッシュの原作「暗闇へのワルツ」をトリュフォーが映画化したもの。
(前作『夜霧の恋人たち』でホテルの夜番をしているアントワーヌが、この原作を読んでいるシーンがあります)
ジャン=ポール・ベルモンドカトリーヌ・ドヌーヴの顔合わせという、トリュフォーの作品には珍しく大物俳優二人を起用した大作志向の作品で、ミステリアスなサスペンス作品です。

全体的に、面白い場面、美しい場面も多いですし、映画の前半でマリオンが失踪する辺りから、かなり面白い展開になりそうな気配があるのですが、後半はストーリーがどういう方向に向かっているのか少々読みにくいというか、役の心理が今一つ伝わってこないもどかしさがあり、この作品の評価が低いのもその辺に理由がありそうです。
また、その設定というかストーリー展開に、どこかヒッチコックの『めまい』を思わせるところがあり、ベルモンドが夢にうなされるシーンなど『めまい』のジェームズ・スチュワートそっくり(笑)。

カトリーヌ・ドヌーヴは言うまでもなくその美しさが大変魅力的なのですが、マリオンという役柄が今一つ理解しがたい役柄。
その心理と行動もなんとも同調しかねるところがあり、これならいっそ悪女に徹した方が面白かった気も・・・。

ジャン=ポール・ベルモンド演じるマエという役柄に対し、トリュフォーはベルモンドはミスキャストで、シャルル・デネだったら…と述べているようですが、確かに性格的に弱さを感じさせるマエという役柄はベルモンドらしい男性的な魅力が活かし切れない役柄のような気がします。

結局、ベルモンドのトリュフォー作品出演はこの1作のみとなりましたが、トリュフォー作品に登場する男性像は、残念ながらベルモンドの持つイメージとはもともと掛け離れていたのかもしれませんね…。

●『夜の女たち』(48年、監督:溝口健二、出演:田中絹代、高杉早苗)

戦後、夫と子に先立たれた一人の女性が、実の妹と再会し…という大阪を舞台にしたお話。
溝口作品は歯応えがあるので、観るのにちょっとばかり勇気が必要です。
これは、これまで未見だった作品ですが、やはりというべきか、想像以上の歯応えでした…。
この容赦ない世界観、サディスティックな描写は凄い…。
公開当時は、田中絹代がパンパンを演じるということで話題となった作品のようですが、映画の前半ではノーマルないつもの彼女が観られるので、今観ても、その変身ぶりに驚かされます。
やっぱり大した女優ですね。

0011000162880.jpgすでにHPのトップページ等でお知らせ済みですが、5月9日ユニバーサルより『賭博師ボブ』の初となる国内盤DVDが発売されることが決定しました

以前ユニバーサルから発売されたメルヴィル監督の『影の軍隊』、『リスボン特急』、『いぬ』と同様に1500円という廉価、初回限定盤です。

ご存知の通り、『賭博師ボブ』はジャン=ピエール・メルヴィル監督の初のフィルム・ノワール作品となった作品で名作然とした風格には乏しいながら、脚本、キャスト、撮影、音楽など、どこをとっても魅力たっぷりな作品であり、未見の方には是非ともオススメしたい作品です。(手前味噌ながら、『賭博師ボブ』についてはこちらのページを参照のこと)

今回発売されるDVDですが、ユニバーサルのこれまでの実績からいって、今回もおそらくPAL盤でしょう。
現に、今回のユニバーサル盤の表示時間は98分、正規尺のCriterion盤の表示時間は102分ですし、今回のDVDのジャケットは、PAL盤であるUK盤とジャケットがほぼ同じです。

また、ユニバーサルの“お家芸”といえる字幕も心配ですが、こればかりは実際に見てみないとなんとも言えません。
欲を言えばキリがありませんが、まずは今回のDVD化を素直に喜びたいと思います。

ところで、このDVDはAmazonでもすでに予約が始まっていますが(リンク)、内容紹介の欄に明らかに他の作品の説明文が交じっています。(『賭博師ボブ』は怪奇映画でもホラー映画でもありません)

また、「出演者について」のロジェ・デュシェーヌイザベル・コーレイの紹介文は、明らかに拙HPのCASTのページからの転載ですね。
別に腹も立ちませんが、こんなのでいいの?とちょっとビックリしました。

アラン・コルノー監督の『真夜中の刑事』をレンタルビデオで観た感想です。

image46.jpgPOLICE PYTHON 357』(76年)
監督:アラン・コルノー
脚本:アラン・コルノー、ダニエル・ブーランジェ
撮影:エチエンヌ・ベッケル
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演:イヴ・モンタン、フランソワ・ペリエ、シモーヌ・シニョレ、ステファニア・サンドレッリ、マチュー・カリエール

アラン・コルノー監督の最新作『マルセイユの決着(おとしまえ)』が現在国内でも公開中ですが、監督の出世作と言われているのがこの作品です。
いまだ国内DVD化されていませんが、70年代のフレンチ・ノワールの名作として挙げられることもある作品で、キャストもイヴ・モンタン始め、この手の作品にはお馴染みの豪華なメンツです。

簡単な内容は、イヴ・モンタン演じる独身の中年刑事が、ある事件をきっかけに知り合った女性と恋に落ちますが、その女性は実は警察署長(フランソワ・ペリエ)の愛人だった。
そこから殺人事件が発生しますが、モンタンがその事件に巻き込まれる…というもの。

ラスト、いろいろな謎がすんなり解決とならず、それまでの流れとは全然違う事件の解決というのがちょっと納得しがたいですが、内容はなかなか面白かったです。
内容は適度に重く、モンタン演じる刑事役も、颯爽たるカッコ良さというよりは、人間的な弱さを感じさせる役作りです。

image47.jpg二人の男性に愛される女性を演じたステファニア・サンドレッリは、当時のイタリアのトップ女優。
代表作としてはベルトルッチ監督の『暗殺の森』(70)などが挙げられますが、“脱ぐ女優”としても有名。
ちなみに、この映画ではちょっとだけヌードシーンがあります。
デビュー間もない頃にはメルヴィルの『フェルショー家の長男』(62)に出演、ジャン=ポール・ベルモンドとも共演しています。

この映画には、イヴ・モンタンの実生活の夫人シモーヌ・シニョレも出演していますが、この作品ではフランソワ・ペリエの夫人役。
これがまた、モンタン、ペリエのお母さんのような堂々たる存在感です。
フランソワ・ペリエも実に渋い存在感ですが、老けた感じはほとんどありません。

ジョルジュ・ドルリューの音楽は、作品の内容に応じてか、少々重苦しい印象。

image50.jpg『影の軍隊』、『仁義』の音楽を担当したエリック・ド・マルサンによれば、ジャン=ピエール・メルヴィルは大変なジャズファンで、ジャズのレコードのコレクターだった。
音楽を通して、二人は熱心な議論を交わしたという。

どうやら、フランスの(往年の)映画監督にはジャズファンが多かったようだ。
あのジャック・ベッケルがそうだった。
そして、ベッケルが助監督としてずっと付いていたジャン・ルノワールは、ベッケルの影響でジャズファンとなるのである。

ジャズをサントラに使った映画の最高傑作ともいえる『死刑台のエレベーター』のルイ・マルもジャズが好きだったのだろうし、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズをサントラに起用したエドゥアール・モリナロロジェ・ヴァディムもそうだったのだろう。

もともとメルヴィルやベッケルの作品には、アメリカ映画の影響が強く、ベッケルなどはデューク・エリントンの演奏が聴きたいがためにアメリカにまで渡ったというくらいだ。
この二人が親しかったのも偶然ではないのかもしれない。(ベッケルの遺作『』はメルヴィルの撮影所であるジェンネル撮影所で撮影されている)

ところでメルヴィルだが、特に彼はモダン・ジャズ・カルテット(以下MJQと略す)の大ファンだった。
メルヴィルが最も大きな影響を受けたと告白している戦後のアメリカ映画は、ジョン・ヒューストン監督の『アスファルト・ジャングル』(50)とロバート・ワイズ監督の『拳銃の報酬』(59)の二本だが、『拳銃の報酬』のサントラを手がけたのはMJQのピアニスト、ジョン・ルイスであった。

エリック・ド・マルサンによれば、メルヴィルは、ジョン・ルイスによる『拳銃の報酬』のスコアをとりわけ好んでいたという。
メルヴィルは、後に『仁義』(70)の音楽を急遽エリック・ド・マルサンに依頼した際、『拳銃の報酬』のサントラ・テープを聞かせながらド・マルサンにこう語る。
これこそが私が求めている色なんだ!

そして、ついに監督作『ギャング』(66)の音楽を、熱望していたジョン・ルイスに依頼することに成功するのである。
ところが、ここからがなんともメルヴィルらしいところなのだが、ジョン・ルイスが『ギャング』のために用意した音楽がどうしても気に入らなかったメルヴィルは、これを一方的に破棄した。
いわば、ジョン・ルイスをクビにしたのだ。

音楽界、映画界の違いはあるとはいえ、ジョン・ルイスといえばジャズ界でも大物中の大物である。(あのオーネット・コールマンもジョン・ルイスの強力な推薦があって50年代末にレコード・デビューを果たしている)

『ギャング』公開前はまだフランス映画界でも大物とは言えなかったメルヴィルが、そのアメリカ音楽界の大物のクビを切ったのだ。(本当にメルヴィルがフランス映画界の大物と言えるようになるのは『ギャング』(66)『サムライ』(67)公開以後のことでであろう)
この事実は、いかにメルヴィルが、映画作りに妥協をしなかったかを示しているのではないだろうか。

結果、ベルナール・ジェラールが『ギャング』の音楽を担当することになるが、実際はベルナール・ジェラールが用意した音楽のごく一部しか映画には使用されなかったという。

思えばメルヴィルほど音楽に“うるさい”映画監督もいなかったのかもしれない。
有名な話だが、『仁義』においては、あのミシェル・ルグランをクビにしているのだ。
ミシェル・ルグランが『仁義』のために用意した音楽は、近年発売されたメルヴィル作品のサントラCD『Le Cercle Noir』にも収録されているから、耳にした人も多いだろうが、確かに『仁義』という映画には少々似つかわしくない印象がある。

しかし、なにしろ大物ミシェル・ルグランであるから、並みの監督ならさすがにクビにまではしないだろう。
それをやってしまうのがメルヴィルという監督なのである。
マンハッタンの二人の男』(58)の音楽を担当したクリスチャン・シュヴァリエなどは、メルヴィルの厳しい要求に耐え切れず、ノイローゼにまでなってしまったという。

ちなみに、ジョン・ルイス作曲の『ギャング』の音楽はマスター・テープも残っていないとのことで、レコード化、CD化された形跡はない。

MJQの音楽自体は私も大好きなので、今度好きなアルバムについて書いてみたいと思っている。

ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の『白き処女地』を国内盤DVD(ジュネス企画)で観た感想です。

image48.jpgMARIA CHAPDELAINE』(34年)
監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ
脚本:ジュリアン・デュヴィヴィエ
撮影:ジュール・クリュージェ
音楽:ジャン・ウィエネル、ロジェ・デゾルミエール
出演:マドレーヌ・ルノー、ジャン・ギャバン、ジャン=ピエール・オーモン、A・リニョー

ルイ・エモンの原作小説を映画化したもので、カナダに住むフランス系住民たちが過酷な自然の中で力強く生きる姿を描いた作品。
後の傑作『地の果てを行く』や『望郷』などに代表される、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督ジャン・ギャバンの深い結びつきは有名ですが、そのキッカケとなったのがこの作品だと言われています。
事実、ジャン・ギャバンは、すでにここでもジャン・ギャバンならでは、としか言いようのない役柄を演じています。

image49.jpgとはいえ、この作品の主人公は、原題でも分かる通り、マリア役のマドレーヌ・ルノー
純真で信心深いマリアを見事に演じています。
彼女はジャン・グレミヨン監督の『曳き船』(41)でもジャン・ギャバンと共演していました。

この作品はマリアを巡る、3人の男たちの求婚物語でもあります。
技術的には、スクリーン・プロセスの使い方がまだまだ稚拙であり、ストーリーの面白さという点でも正直それほどでもないのですが、3人の男たちの性格づけが明確なのと、マリア役のマドレーヌ・ルノーが魅力的なので、充分楽しめます。
マリアの父親役の俳優もいい。

ちなみに、マリアに求婚するいい男の方は『北ホテル』(38)や『アメリカの夜』(71)などにも出演しているジャン=ピエール・オーモン

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テンプレ作った人:おみそ
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プロフィール
HN:
マサヤ
性別:
男性
趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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