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フリッツ・ラング監督の『スカーレット・ストリート』を国内盤DVD(紀伊国屋書店)で観た感想です。

image85.jpgSCARLET STREET』(45年)
監督:フリッツ・ラング
脚本:ダドリー・ニコルズ
撮影:ミルトン・クラスナー
音楽:ハンス・J・サルター
出演:エドワード・G・ロビンソン、ジョーン・ベネット、ダン・デュリエ、マーガレット・リンゼイ

初見。
フィルム・ノワールの名作”との世評高い作品ですが、実際観てみると、正直なところ微妙な作品という印象。
初老の男が若い女性に騙されるというストーリーも分かりますし、内容的には充分に面白いのですが、男が趣味で書いている奇妙な絵が評論家から絶賛されて高額で買われたり、まして女が画家だと嘘をつく展開などはあまりに陳腐な感じがしてしまうのです。
同じフリッツ・ラング監督作品『飾窓の女』と同じキャストが3人揃っていますが、以前観た『飾窓の女』の方が個人的には好みです。

それでも、この映画がそれ自体として充分に魅力的なのは、いかにもフィルム・ノワールらしい典型的なファム・ファタールを演じたジョーン・ベネットの存在感が圧倒的だからでしょう。
この女優の魅力は写真では伝わりにくいのではないかと思います。
映像で観てこそ魅力的な女優なのです。
つまり演技や物腰がいいってことですね。

image86.jpgジョーン・ベネットに惚れる初老の男を演じるエドワード・G・ロビンソンも、キャラ的にあまりにも鈍いというか情けない点が気になるので、この作品では今一つ感情移入しきれません。
もちろん、彼ならではという持ち味を感じましたし、演技も良いのですが…。

あと、この作品がもう一つ好きになれなかった理由は、ダン・デュリエ演じるヒモ男のキャラが好きになれなかったことかもしれません。

ただ、映像はさすがにフリッツ・ラングという感じでなかなか良く、またそれ以外にもそこはかとない魅力が隠された作品という感もありましたので、また再見してみたい作品ではあります。

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アンソニー・マン監督の『最前線』を国内盤DVD(紀伊国屋書店)で観た感想です。

0293153b.jpegMEN IN WAR』(57年)
監督:アンソニー・マン
脚本:ベン・マドウ
撮影:アーネスト・ハラー
音楽:エルマー・バーンスタイン
出演:ロバート・ライアン、アルド・レイ、ロバート・キース

初見。
1950年の朝鮮戦争を舞台に、大隊から孤立した連合軍歩兵小隊の内部の葛藤と、高地を巡る敵との戦闘を描いた作品。
最近では珍しく2回観ました。

戦争映画は以前は結構好んで観ていたのですが、最近は観たいという気持ちがほとんどなくなってしまいました。
その理由は自分でもよく分からないのですが、戦争映画にありがちな戦闘シーンに感興(?)をそそられなくなったのが大きいかもしれません。

そういえば、以前はあれほど好きだったプロレス格闘技も最近では会場に行くことはもちろん、テレビ中継すら観なくなってしまいました。
年齢を経ることで闘争本能(?)がなくなってしまったのでしょうか…いや、戦争映画とは全く関係ないですね…(ほんとは三沢の死に関しても何か書きたいのですが…長くなりそうなのでやめておきます)。

それはともかくこの映画、DVDのパッケージには“50年代ハリウッド戦闘映画の究極の大傑作”との文字が。
戦争映画を観たい気持ちはなかったものの、アンソニー・マン監督の作品を観たいという気持ちもあり、その宣伝文句に釣られてDVDを買ってみたのです。(ホントは中古で安く手に入れられたのが大きいですが)

観た印象ですが、戦争映画としてはかなり地味な作品ではあります。

d4e4303d.jpegベントン中尉役のロバート・ライアンとモンタナ軍曹役のアルド・レイの信条的対立を軸としながら、描かれているエピソードは最小限に抑えられた至極シンプルな作品。
他の戦争映画にありがちな、喜怒哀楽を全面に出した戦争映画独特のオーラはほとんど感じられません。
むしろ、歩兵小隊の数少ないエピソードだけをもって、ここまで魅せてくれる監督の演出力が断然光る燻し銀のような作品だと思います。

もちろん、戦争映画ですから戦闘シーンもありますが、むしろ、戦闘を行っていないシーンにこそ、監督の優れた演出力が発揮されているように思われます。
戦闘前の兵士たちの緊張や不安や恐怖心といった心模様が、その表情の変化や身振り手振りで見事に描き出されているからです。
その意味で、“人間ドラマ”として実によく出来た映画だと言えるのではないでしょうか。

ロバート・ライアンアルド・レイを始めとするキャストも皆好演でしたし、国内盤DVDの画質も良好でした。

野村芳太郎監督の『砂の器』を国内盤DVDで観た感想です。

68778534.jpeg砂の器』(74年)
監督:野村芳太郎
原作:松本清張
脚本:橋本忍、山田洋次
音楽:芥川也寸志
出演:丹波哲郎、加藤剛、加藤嘉、緒方拳

再見。
子供の頃に観た映画で、内容をずっと忘れ去ってしまった作品というのがいくつかある。
この作品もそうで、中学の時テレビで観た覚えがあるが、親子の巡礼のシーンの強烈な印象だけが残っていた。
その後、数年前にデジタル・リマスター版が劇場公開された際にスクリーンで観て、想像以上に凄い作品であったことに改めて気付かされた。
今回観たのはたぶんその劇場公開されたものと同じと思われるデジタル・リマスター版のDVD。

原作の力なのか、脚本の力なのか、演出の力なのか、俳優の力なのか、はたまた音楽の力なのか(もちろんその全てなのだが)、やはり全篇を貫く迫力に圧倒される。
正直言って、私の期待するストーリー展開となっていないところもあるのだが、細かいことはどうでもいい。
これも一種の大河ドラマで、内田吐夢監督の『飢餓海峡』(65)などもそうだが、日本映画は人間の業(?)を描くのがうまい。
この作品は、殺人事件を巡るサスペンスに親子の情を絡めているところにいかにも日本的な特質を感じる。

実際、この作品の後半で描かれている親子の物語など、ほとんど歌舞伎や人形浄瑠璃における義太夫の世界である。
設定こそ当然違うものの、この映画を観ていると『新口村』やら『沼津』やらの義太夫の親子の情愛の物語が重なり合って見えてしまう。(個人的には前半の殺人事件の謎を追うミステリーチックな探偵劇がすこぶる好きだが)

映像の力も素晴らしく、とりわけ、ここに描かれている日本各地の風景にはこの国ならではの美感が見事に示されている。
それらを巡る列車の旅が作品中に頻発するのも松本清張の原作作品らしい。
冒頭の蒲田駅構内での殺人事件というだけで、いかにも松本清張らしい“GHQ臭さ”(?)を感じ、ワクワクしてしまうのである。

917b28f4.jpeg俳優陣は誰もが素晴らしいが、特に刑事役の丹波哲郎の演技、存在感が強く印象に残る。
先日小林正樹監督の『切腹』(62)も観て、時代劇におけるこの俳優の演技に強い感銘を受けたのだが、現代劇でもやはり大した俳優である。

父親役の加藤嘉の名演技も言うまでもないが、この人の他の出演作を観るとなおさらこの作品における演技の凄さがよく理解できると思う。
芥川也寸志による音楽も少々大袈裟過ぎる傾向はあるものの、メロディ、構成ともに実によく出来ている。
音楽だけで情景が浮かんでくるかのよう。

映画技法的にところどころ稚拙とも思える部分もあることはあるが、(今さらながらだが)この作品が世界映画の傑作群にも劣らぬ大傑作であることは間違いない。

木下恵介監督の『二十四の瞳』を国内盤DVDで観た感想です。

941d0f39.jpeg監督・脚本:木下恵介
原作:壺井栄
撮影:楠田浩之
音楽:木下忠司
出演:高峰秀子、天本英世、夏川静江、笠智衆、浦辺粂子、明石潮

再見。
先日ルネ・クレマン監督の『禁じられた遊び』を観ましたが、あの映画との対比ということで脳裏に浮かんだのがどういうわけかこの『二十四の瞳』でした。(別に比べるつもりはないのですが)

洋画邦画問わず、名画過ぎて(?)観ることを避けてしまっている作品がいくつかありますが、この作品に限らず、機会があったらどんどん観直していきたいと考えています。
この作品も、数年前にこの作品のデジタル・リマスター版が劇場公開された際に見逃してしまい、それ以来、是非とも観直したいと考えていました。

感想ですが、これは…やっぱり泣けました。
始まって30分後くらいからラストまでずっと涙がこぼれっ放し。
いや、泣けるから良い映画だという評価では決してないんですが(最近の映画のCMはそればっかり強調しているのでホントウンザリ)、この映画を観て流れる涙は何故にこれほど清らか(?)なのでしょう。
舞台となった四国の風景、音楽、子役皆いいですね。

子役もその年代ごとに違う人が演じているのに、顔がソックリで、まるで同じ人間が通して演じているように感じさせただけでももう大手柄。
その顔も、今の子供と違った、あの時代相応の顔つきがまた良いんですよ。

image75.jpgそして、なんといっても高峰秀子の大石先生が絶品。
生徒の悲劇にもらい泣きのシーンが多いんですが、決してベタベタした印象がないのは高峰秀子のサッパリしたキャラクターのお蔭だと思います。
仮に他の女優がこの役を演じていたら、さらに湿っぽい作品になって、観る側が引いてしまった可能性も高いのではないかと思います。
また、私は密かに彼女のファンでありながらも、これまで美人だと思ったことは正直あまりないんですが、この映画の彼女の美しさ、輝きはやはり大したものだと思いました。

ベルナルド・ベルトルッチ監督の『暗殺の森』(完全版)を国内盤DVDで観た感想です。

image73.jpgIL CONFORMISTA』(70年)
監督・脚本:ベルナルド・ベルトルッチ
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、ドミニク・サンダ、ステファニア・サンドレッリ、ピエール・クレマンティ、イヴォンヌ・サンソン、エンツォ・タラシオ、ジュゼッペ・アドバッティ
 
再見。
これは…ある意味神がかった作品と言えるのではないでしょうか。
素晴らしい色彩感覚を持ったヴィットリオ・ストラーロによる映像美、作品全体を覆う退廃的な雰囲気、編集の妙、哀感漂うジョルジュ・ドルリューの音楽、そしてジャン=ルイ・トランティニャンを始めとする俳優の魅力など、どれも大変なものだと思いました。

それをここまで見事にまとめ上げたこの頃のベルナルド・ベルトルッチ監督の力量たるや、やはり並みのものではありません。
とりわけ、映像の美しさはこの世のものとも思えないほどで、絵画のように美しく印象的なシーンが続出します。

5e9eb030.jpegそれを彩るドミニク・サンダステファニア・サンドレッリ二人のエロチックな魅力が凄い。
二人のダンスシーンは何度観ても溜め息もの。
映画史に残る名シーンの一つでしょう。
とりわけ、当時若干二十歳そこそこだったとは信じがたいドミニク・サンダの美しさには溜め息しか出ません。

ステファニア・サンドレッリは意外にもデビュー時、メルヴィルの『フェルショー家の長男』(62)に出ています。
拙HPのキャストの項も参照。

むやみに“笑わない”ジャン=ルイ・トランティニャンはマルチェロという役柄に相応しく、その“無表情”だけで見事に作品の核としての役割を担っています。
ちょっとだけ出演しているピエール・クレマンティが観られるのも嬉しい。
a94bf3a4.jpeg
少しだけ写るエッフェル塔の美しさも印象的で、イタリア映画でありながらも、これほどまでにエッフェル塔が、そしてパリが美しく撮られた映画も少ないのではないかと思ってしまいます。

私が所有している国内盤DVDは現在廃盤で中古市場では価格も高騰しているようですが、画質も最高とまでは言えなくとも、まずは満足のいくものです。

ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の『埋れた青春』を国内盤DVD(IVC)で観た感想です。

dfdc5ba0.jpegL'AFFAIRE MAURIZIUS』(53年)
監督・脚本:ジュリアン・デュヴィヴィエ
撮影:ロベール・ルフェーヴル
音楽:ジョルジュ・ヴァン・パリス
出演:ダニエル・ジェラン、マドレーヌ・ロバンソン、シャルル・ヴァネル、ジャック・シャバッソール、エレオノラ・ロッシ=ドラゴ、アントン・ウォルブルック、ベルト・ボヴィ

再見。
ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の戦後の作品中でも傑作の一本だと思います。
緻密に組み立てられた脚本やドラマ構成が見事で、ミステリアスな殺人事件の真相の謎を、男女関係の複雑な恋愛模様や弁護士一家の家庭環境などを絶妙に絡ませながら描き出しています。
世間ではあまり知られていないようなのが残念なのですが、個人的にも大好きな映画の一本。

image70.jpgキャストも素晴らしい。
大学教授役のダニエル・ジェランは、清潔感のある雰囲気、物腰がいいですし、美術評論家ワレムを演じたアントン・ウォルブルックの人間味丸出しの演技も見もの。

また検事役の名優シャルル・ヴァネルの老獪な演技、存在感はさすがですし、その一人息子役ジャック・シャバッソールの迫真の演技も素晴らしい。

3329ac83.jpeg女優では、エリザベート役のマドレーヌ・ロバンソンもいいですが、アンナ役のエレオノラ・ロッシ=ドラゴがとにかく印象的。
この女優は、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の『女ともだち』(55)にも主演していますが、大柄な体格や美貌がイングリッド・バーグマンをどこか彷彿とさせ、とにかく美しい。
それでいて、清潔感のある風貌の裏に淫靡な色気もあり、これでは男は狂うはず(笑)。
その意味において、この作品での彼女の役柄はファム・ファタールと言えなくもありません。

ちなみに彼女に関心があるならば、ジャン=ルイ・トランティニャンと共演したヴァレリオ・ズルリーニ監督のイタリア映画『激しい季節』(60)も必見。

ジャック・ドゥミ初期作品集DVD-BOX』が6月27日に紀伊国屋書店より発売になることはこのブログでも既にお知らせ済みですが、それを記念しまして、来月『ジャック・ドゥミ作品と女優たち』と題したDVD上映会が紀伊國屋サザンシアターにて行われます。

プログラム:ジャック・ドゥミ監督作品
●『ローラ』(84分/1960年/モノクロ) 主演:アヌーク・エーメ
●『シェルブールの雨傘』(91分/1964年/カラー)主演:カトリーヌ・ドヌーヴ
(いずれもDVDでの上映)

amagasa.jpg日時:
7月4日(土) 13:30開演(13:00開場)
会場:紀伊國屋サザンシアター(新宿南口 紀伊國屋書店新宿南店 7階)
料金:1,000円(全席自由、税込)

前売りもあります。
詳しくはこちら

私はこの日東京を離れておりますので残念ながらうかがえませんが、ジャック・ドゥミ作品をスクリーンで、とりわけ“ヌーヴェル・ヴァーグの真珠”(ジャン=ピエール・メルヴィル)と言われる『ローラ』を観られる貴重なチャンスです。

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テンプレ作った人:おみそ
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HN:
マサヤ
性別:
男性
趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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