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ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ監督の『唇によだれ』を国内盤DVDで観た感想。
『L'eau a la Bouche』(60年)
監督:ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ
脚本:ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ、ジャン・ジョゼ・リシェール
撮影:ロジェ・フェルー
音楽:セルジュ・ゲンスブール、アラン・ゴラゲール
出演:ベルナデット・ラフォン、フランソワーズ・ブリヨン、ミシェル・ガラブリュ、ジャック・リベロル
再見。
監督のジャック・ドニオル=ヴァルクローズは、フランスの映画評論誌「カイエ・デュ・シネマ」編集長だった人物。
タイトルにある“唇”は“くち”と読むのが正しい…らしい。
前回観たのは随分前なので、ほとんど内容も覚えていなかったが、見直してみて思っていた以上に楽しめる作品だった。
城館を舞台にした4人(+2人)の恋愛ゲームとでもいうべき内容で、男女の心理の微妙の綾が面白く描かれた作品である。
とりわけパーティーの場面が官能的ですばらしい。
全体的にロジェ・フェルーによる計算し尽くされたカメラワークが印象的であり、セルジュ・ゲンスブールの音楽も作品によく合っている。
キャストでは、ベルナデット・ラフォン以外はほとんどが無名だが、皆なかなか魅力的。
とりわけ、ミレナを演じたフランソワーズ・ブリヨンは知的な美貌が印象的だった。
ロベール役のジャック・リベロルや、好色なセザールを演じたミシェル・ガラブリュもいい。
クレジット上は一番上になるベルナデット・ラフォンはメイド役で、この群像劇ではそれほど目立つ存在ではないが、持ち味は十分に発揮している。
川島雄三監督の『洲崎パラダイス 赤信号』をDVDで観た感想です。
『洲崎パラダイス 赤信号』(56年)
監督:川島雄三
原作:芝木好子
脚本:井出俊郎、寺田信義
撮影:高村倉太郎
音楽:真鍋理一郎
出演:新珠三千代、三橋達也、轟夕起子、芦川いづみ、植村謙二郎、牧真介、小沢昭一
初見。
先日このブログでも紹介した成瀬巳喜男監督の『女の中にいる他人』に出演していた新珠三千代と三橋達也がその10年前に主演していた作品で、昭和30年頃の東京の洲崎界隈を舞台にした作品。
これはなんとも魅力的な映画。
まず、洲崎という舞台設定が風情があって良い。
そして、監督の登場人物を見つめる視線が温かい。
そのためでしょうか、観ていて全然イヤな気分にならなりませんでした。
ちなみに、洲崎という土地名は昨今では聞き慣れぬ名だが、現在の江東区木場のあたりらしい。
キャストでも、三橋達也がどうしようもないダメ男をうまく演じているほか、新珠三千代もいつもとは違ったアバズレ(?)キャラを見事に演じている。
夫に逃げられながらも飲み屋を切り盛りする女将を演じた轟夕起子も実にいい味を出しているし、蕎麦屋のアルバイト役の芦川いづみがまた一服の清涼剤のような存在感。
ジャック・ベッケル監督の『赤い手のグッピー』を国内盤DVD(東北新社)で観た感想です。
『GOUPI-MAINS ROUGES』(44年)
監督:ジャック・ベッケル
原作・脚本:ピエール・ヴェリ
撮影:ピエール・モンタゼル
音楽:ジャン・アルファロ
出演:フェルナン・ルドー、ロベール・ル・ヴィギャン、ブランシェット・ブリュノワ、リーヌ・ノロ
初見。
ジャック・ベッケル監督の長編第2作で、やはり、というべきかこれも傑作。
殺人事件を巡るサスペンスと、コメディが渾然一体となった、なんとも不思議な作品です。
舞台がフランスの田舎町ということもあり、パリを舞台とした映画とはまた違った、いかにもそれらしい長閑な雰囲気もあり、その意味でも、この時代のフランス映画らしい雰囲気を味わえる作品だと思います。
大家族がお互いをそれぞれ渾名で呼び合うという設定も面白いのですが、その一人一人のキャラもなかなか魅力的に描かれています。
大家族が誰が誰なのか分かりにくいのが玉に疵ではありますが…。
中でも、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の『地の果てを行く』(35)でも印象的だったロベール・ル・ヴィギャンのキャラクターがここでもなかなか強烈。
小林正樹監督の『切腹』を国内盤DVDで観たのでその感想です。
『切腹』(62年)
監督:小林正樹
原作:滝口康彦
脚本:橋本忍
撮影:宮島義勇
音楽:武満徹
出演:仲代達矢、三國連太郎、丹波哲郎、岩下志麻、石浜朗
初見。
これは凄い。
風説に違わぬ傑作、いや、信じがたいほどの傑作というべきか。
凄いという評判は聞きながらも、これまでなんとなく敬遠してきた作品だが、もっと早く観ればよかった。
黒澤明監督の作品の脚本を数多く担当した橋本忍による脚本で、これは黒澤作品のような娯楽性は薄いが、画面の作り方になんというか厳格さというか品格が漂っており、重厚感と緊張感のある内容は実に見ごたえがある。
構成も見事。
これはある種台詞劇と言えるが、誰も彼も台詞がうまい。
仲代達矢と三國連太郎の台詞のやりとりが素晴らしい。
仲代達矢の隙のない演技、存在感は大したものだし、三國連太郎の演技もそれに劣らぬくらい凄い。
仲代の台詞に対してピクッと動く顔の演技など、絶妙な上手さである。
また、仲代達矢と丹波哲郎の対決シーンが信じられないくらい凄い。
いくら作り物だと分かっていてもこれは圧倒的。
丹波哲郎といえば、先日取り上げた『砂の器』の見事な刑事役のように現代劇の俳優だと勝手に思っていたが、こういった時代劇でも素晴らしいのには驚かされた。
殺陣の所作も見事である。
仲代の娘役の岩下志麻も良かった。(観ている間、岩下志麻だと分からなかった)
琵琶を使った(たぶん)武満徹の緊張感のある音楽も効果的。
むやみやたらに音楽で映画を盛り上げようとしない点もいい。
成瀬巳喜男監督の『女の中にいる他人』を国内盤DVDで観た感想です。
『女の中にいる他人』(66年)
監督:成瀬巳喜男
脚色:井手俊郎
撮影:福沢康道
音楽:林光
出演:小林桂樹、新珠三千代、三橋達也、若林映子、草笛光子、藤木悠
初見。
エドワード・アタイヤの『細い線』という原作を脚色、映画化したもので、成瀬巳喜男監督作には珍しい(?)心理サスペンス劇。
監督晩年の作品で、名作然とした風格には乏しいが、ストーリーは明快で内容も大変面白い。
小林桂樹始め、キャスト誰もがハマリ役でいいが、とりわけ妻役の新珠三千代が素晴らしい。
着物姿も美しいし、夫の秘密を聞いてから心が次第に変化してゆく様が見ものである。
ちょっとだけ顔を出すだけの草笛光子や藤木悠もいい味を出している。
ロバート・アルトマン監督の『ロング・グッドバイ』を国内盤DVDで観た感想です。
監督:ロバート・アルトマン
撮影:ヴィルモス・ジグモンド
出演:エリオット・グールド、スターリング・ヘイドン、ニーナ・バン・パラント
レイモンド・チャンドラーの原作小説『長いお別れ』を映画化したもの。
原作の小説は数年前に読みましたが、私が読んだのは当時大変話題になった村上春樹訳のものではなくて、清水俊二訳のものでした。(ハヤカワ文庫)
単に文庫で安かったからそうしたのですが、訳には特に不満もなく、というか、普通に楽しめました。
小説そのものも、ちょっと長かったですが大変面白かったです。
あの複雑な小説の内容を2時間弱の映画に収めるのはそもそも無理な話で、この映画はストーリー的には本当に骨格だけなぞっているに過ぎないように思われます。
よって、ストーリーだけを追っていては、この映画にはかなりの不満があることは確かです。
しかし、この映画の“キモ”は雰囲気描写ではないでしょうか。
もちろん、原作自体、雰囲気描写が大変に魅力的でしたが、この映画では、それをそのまま再現しているわけではなく、むしろ、この映画独特のムードを新たに作り出しているように思われます。
例えば、マーロウが住んでいる家のエレベーターの感じだとか、隣に住んでいるヤク漬けの女性たちの描写とか、どことなく70年代的な(?)退廃的な雰囲気が印象的でした。
そして、フィリップ・マーロウといえば、一般的にも『三つ数えろ』のハンフリー・ボガートのイメージが当然大きいでしょうし、私もそうです。
この作品でマーロウを演じているエリオット・グールドは、写真で見る限りは、とてもマーロウのイメージに合うとは思えなかったのですが、実際映画を観てみると、思ったより違和感がなく…というか、意外と良いですね。
これは嬉しい驚きでした。
また、飲んだくれの流行作家ロジャー・ウェイドを演じたベテラン俳優スターリング・ヘイドン(『アスファルト・ジャングル』『現金に体を張れ』)がなかなか良かったと思います。
ところで、この映画を観たのは実は半年くらい前なのですが、また観直してみたいという気持ちが強くなっています。
ラストは好みが分かれそうです。
ロベール・ブレッソン監督の『バルタザールどこへ行く』を国内盤DVD(紀伊国屋書店)で観たのでその感想です。
『AU HASSARD BALTHAZAR』(64年)
監督・脚本:ロベール・ブレッソン
撮影:ギスラン・クロケ
音楽:シューベルト
出演:アンヌ・ヴィアゼムスキー、フィリップ・アスラン、ナタリー・ショワイヤー、ヴァルテル・グレーン
初見。
正確に言えば再見なのですが、前回は途中で観るのを諦めました。
その簡潔で厳しい世界に面食らってしまい、観通すことができなかったのです。
前回観たのはイマジカから出ていた旧国内盤DVDでしたが、今回観た紀伊国屋から出ている新たな国内盤DVDはさすがに画質が良くなっていました。
それにしてもこれは…大変な作品。
なんというやるせない物語でしょう。
残酷なシーンもありますが、言葉では言い表せないほど美しい映画です。
ロバの眼があんなに美しいとは思いもしませんでしたし、ラストの素晴らしさなんて…。
これまでブレッソン作品をいろいろ観てきた中では『抵抗』がなんといってもダントツに魅力的な作品でしたが、この作品は趣向こそ違えど、それに肉薄する魅力を湛えた作品だと思いました。
ブレッソン監督の大傑作の一つと言ってよいのではないかと思います。
主演はゴダールの『中国女』の主演等でも知られるアンヌ・ヴィアゼムスキー。
素晴らしいです。
演技どうこうというより、なにより存在感が作品の世界観にピッタリ合っています。
ちなみに、私は『中国女』も意外と好きな作品。
『中国女』の後ヴィアゼムスキーとゴダールは結婚しましたが、別れたそう。
全篇で使われているピアノ音楽はシューベルトのピアノ・ソナタ第20番。
たぶん、その第2楽章でしょう。
ブレッソンとシューベルト…相性良過ぎです。
ちょっと話は変わりますが、シューベルトは学生時代好きでよく聴いており、この曲も昔マレイ・ペライアの生演奏をサントリーホールに聴きに行ったこともありますが、肝心の第2楽章で寝てしまった思い出が…。
撮影はジャック・ベッケルの『穴』(60)等でも知られるギスラン・クロケで、この作品でも見事なカメラワークが随所に見られます。
今回観たDVDのブックレットは、作品の内容や製作の経緯、裏話にまで及んだ大変詳しいものなので、大変読み応えがありました。
このあたりはさすがに紀伊国屋。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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