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ジム・ジャームッシュ監督の『ゴースト・ドッグ』を国内盤DVDで観た感想。
『GHOST DOG:THE WAY OF THE SAMURAI』(99年)
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
撮影:ロビー・ミューラー
音楽:RZA
出演:フォレスト・ウィテカー、ジョン・トーメイ、クリフ・ゴーマン、ヘンリー・シルヴァ、ヴィクター・アルゴ、トリシア・ヴェッセイ、カミール・ウィンブッシュ
(日本語公式サイト)
初見。
ジャン=ピエール・メルヴィル監督の『サムライ』(67)にインスパイアされたという評判がきっかけで観始めた映画だが、実際のところ、ほとんど『サムライ』のリメイクに近いくらいの内容であった。
『サムライ』との大きな相違点は、警察の存在が全くといってよいほどストーリーに関連してこないこと、そして、主人公の殺し屋が『葉隠』を愛読し、“サムライ”という存在を自ら強く意識している点である。
思い起こしてみれば、メルヴィルの『サムライ』において、アラン・ドロン演じる殺し屋ジェフ・コステロは自身が“サムライ”であることを意識していたわけでななかった。
“武士道”という本の言葉が冒頭に出てきていたが(実際は監督のメルヴィルの創作)、映画を観る限りにおいては、ジェフ・コステロ自身がそのことを意識しているというような描写はない。
あくまでも結果として、彼の行動様式が“サムライ”に模されたということだった。
しかし、『ゴースト・ドッグ』においては、フォレスト・ウィテカー演じるゴースト・ドッグの声によって『葉隠』の言葉が何度も紹介されるように、殺し屋は『葉隠』を愛読しながら、自身が“サムライ”たらんことを強く意識し、常にその行動様式の中で生きようとしている。
その意味においては、(良し悪しの問題ではなく)『サムライ』以上に“サムライ色”の強い作品といえるかもしれない。
ただ、内容はシリアス一辺倒ではない。
というか、マフィアの描き方に代表されるように、コメディの要素がかなり強い作品である。
車を盗む手口やナンバープレートを変えるところなど、ほとんど『サムライ』のパロディといってよく、『サムライ』を知っていたらもう笑ってしまうほどだ。
そういう意味で、『サムライ』を知っていて観るか否かによって、この作品に対する感じ方がかなり変わってくると思われる。
しかし、これはこれで実に面白い、いい作品だと思う。
どうしても『サムライ』との比較で、観る前はフォレスト・ウィテカーの存在感に大いなる疑念があったのだが、観ているうちに全然気にならなくなった。
というか、この映画のフォレスト・ウィテカーはとても良かった。
ゴースト・ドッグとアイスクリーム屋の友情関係や、鳥との関係、過去にゴースト・ドッグを救ってくれた男との主従関係なども魅力的に描かれている。
また、ところどころで流れるRZAのヒップホップに最初は抵抗感を覚えたが、これもだんだん気にならなくなった。
むしろ、映画の内容にはよく合っていたと思う。
中にはメルヴィルの『ギャング』や『仁義』を思わせるシーンもあり、ジャームッシュのメルヴィル・ファンぶりが窺える。
当然のことながら、エンドクレジットの“PERSONAL THANKS”の中に“JEAN-PIERRE MELVILLE”の名も出てくる。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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