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マルセル・カルネ監督の『天井桟敷の人々』を国内盤DVD(パイオニア)で観た感想。
『LES ENFANTS DU PARADIS』(45年)
監督:マルセル・カルネ
脚本:ジャック・プレヴェール
撮影:ロジェ・ユベール、マルク・フォサール
美術:アレクサンドル・トローネル
音楽:モーリス・ティリエ、ジョセフ・コズマ
出演:アルレッティ、ジャン=ルイ・バロー、ピエール・ブラッスール、ピエール・ルノワール、マリア・カザレス、マルセル・エラン、ルイ・サルー
再見。
『第一部:犯罪大通り 第二部:白い男』と二部構成の3時間に及ぶ大作であり、言うまでもなくフランス映画史上の金字塔。
この映画はあらゆる映画の中でも別格。
日本人特有の名作主義(音楽なら名盤主義)には辟易とさせられることも多いが、やはりいいものはいい。
現在一番好きな映画は?と問われれば、おそらくこの作品か成瀬巳喜男監督の『浮雲』を挙げるだろう。
どちらもラヴ・ストーリーなのが自分でも意外だが…。
この映画の主な登場人物に幸福な人は一人もいないのかもしれない。
しかし、決して暗かったり、重苦しい深刻な映画ではない。
それは、この映画の主な登場人物一人一人が、あくまで自己に忠実に力強く人生を生きているからだろう。
一方で、フュナンビュル座の舞台裏などのユーモラスな場面のスパイスの匙加減も絶妙である。
初めて観た時は、どうしてもジャン=ルイ・バロー演じるバチストに感情移入して観てしまったものだが、何度か観るたびにバチスト以外のキャラクター(キャスト)にも思い入れが強くなっていく。
女たらしの俳優フレデリック・ルメートルを演じたピエール・ブラッスールは、常に道化を演じているようでいて、時おりシリアスになった時の演技がことさら印象深い。
また、犯罪詩人ラスネールを演じたマルセル・エランがなんとも素晴らしく、ほとんど影の主役ではないかと思ってしまう。
この作品は脚本を担当したジャック・プレヴェールによる煌くような名台詞の数々でも有名だが、実際のところ、この作品の名せりふの多くはラスネールの台詞だったりするのである。
この映画の評価で賛否が分かれる点があるとすれば、ヒロインのガランスを演じたアルレッティについてだろう。
いや、この人の演技や存在感には全く問題はないはずだが、撮影時の年齢が40台後半ということから、彼女の視覚的な“老け具合”がマイナス点として指摘されることがよくあるからだ。
確かにその点が全く気にならないと言えば嘘になるかもしれない。
しかし、ガランスという酸いも甘いも噛分けた困難な役柄は、この時期のアルレッティくらい少々“トウの立った”大女優でなければとても演じ切れなかったであろう。
実際、その声とセリフ術の上手さには観る度に唸らされるし、視覚的には、彼女のうなじから肩にかけての美しいラインが絶品の美しさである。
(この項続く)
正にフランス映画史上の金字塔ですね。
私も現在一番好きな映画といったら、この『天井桟敷の人々』と『男と女』『カサブランカ』ですね。
何でか私も好きな作品が全部ラブ・ストーリーでした…(苦笑)。
しかしなんといってもピエール・ブラッスールとマルセル・エラン両役者の存在感と演技力には何度観ても魅了されてしまいます。
楽屋で対面する両者のやりとりの場面がすごく好きですね。
やはり台詞の一つ一つに人生哲学を感じるので、何度観ても飽きないんだと思いますし、自分が歳をとるほどにこの作品の良さが増す感じがしますね。ですから今後もこの『天井桟敷の人々』は何度も何度も観る作品だと思います。年月が経過しても本当に色褪せない作品です。
因みに国内盤DVD(パイオニア)と500円DVD(宝島社)では、やはり字幕が微妙に違っていましたね…。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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