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またしてもジャン・ギャバン出演作の『獣人』(ジャン・ルノワール監督)を国内盤DVDで観た感想です。
『LA BETE HUMAINE』(38年)
監督:ジャン・ルノワール
原作:エミール・ゾラ
脚本:ジャン・ルノワール
撮影:クロード・ルノワール、クルト・クーラン
音楽:ジョセフ・コズマ
出演:ジャン・ギャバン、フェルナン・ルドー、シモーヌ・シモン、ジュリアン・カレット、ジェラール・ランドリ、ジャン・ルノワール
エミール・ゾラの原作を映画化したもの。
この映画の国内盤DVDは随分前に買ってあったものの、観ていませんでした。
その間に、この映画のリメイク作であるフリッツ・ラング監督の『仕組まれた罠』(54年)の方を先に観てしまいました。
ラング版は今となっては内容をよく覚えていないながらも、印象としてはイマイチに感じてしまったのですが、このルノワール版はさすがに素晴らしい出来です。
機関士ジャック・ランチエ役のジャン・ギャバンが、もともと大酒飲みの家系の遺伝で、衝動的に暴力に駆られるという難しい役柄。
普段は大人しいナイスガイなのですが、その病気の一点のせいで、観ていてなかなか合点が行かないというか、理解しがたい役柄となっています。
個人的には、嫉妬に狂ったフェルナン・ルドー演じる助役の方がよほどヒステリックで獣人に感じられましたが、シモーヌ・シモン演じる助役の美しい妻を巡る様々な演出が上手いので、知らず知らずのうちにストーリーに惹き込まれてしまいます。
その悪女ぶりは、先日観た『殺意の瞬間』でのダニエル・ドロルムほどのどぎつさはないものの、これもまたファム・ファタールものと言え、ジャンルとしてはフィルム・ノワールに区分けされる作品でしょう。
シモーヌ・シモンのネコっぽい風貌は、その後のクラウディア・カルディナーレ、今でいうとキャサリン・ゼタ・ジョーンズあたりを思い起こさせます。
個人的には少し微妙な顔つき…(笑)。
機関士役のジャン・ギャバンも当然魅力的で、とりわけ、後半が名演。
スクリーンプロセスを使わず実写にこだわったという蒸気機関車の疾走シーンが、少しくどい印象はあるものの、さすがに迫力満点ですし、機関士たちの仲間内の人間関係が細やかに丁寧に描かれている点はルノワール的と言えるかもしれません。
そのジャン・ルノワールが、誤認逮捕されて殺人の容疑者となってしまう役柄で、俳優としても登場します。
最後に、パイオニアによるこの映画の国内盤DVDは、DVD制作スタッフがきちんと明記されている上、付属の冊子も4ページながら読み応えがあり、好印象でした。
画質も、キズがところどころ目に付くものの、観やすかったと思います。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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