[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
アンリ・ヴェルヌイユ監督の『シシリアン』を国内盤DVDで観た感想です。
『LE CLAN DES SICILIENS』 (69年)
監督:アンリ・ヴェルヌイユ
原作:オーギュスト・ル・ブルトン
脚本:ジョゼ・ジョヴァンニ、アンリ・ヴェルヌイユ、ピエール・ペルグリ
撮影:アンリ・ドカ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ジャン・ギャバン、アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、イリナ・デミック
この作品、以前観た時はレンタル・ビデオでしたが、それはオリジナルのフランス語音声だったような気がします。(確信なし)
今回観た国内盤DVDは、オリジナルのフランス語音声ではなく、英語音声なので、ギャバン、ドロン、ヴァンチュラが英語でセリフをしゃべるという妙なことになっています。
この作品のDVDは、DVD化以前から切望していましたが、発売前に英語音声であることが分かったのでしばらく買う気になりませんでした。(当DVDには日本語の吹き替えも収録されていますが、未聴です)
先日、某中古店で安く売られていたのでようやく購入しましたが、英語音声であることは分かっているので、その点をできる限り気にしないように、期待半分で観始めました。
とはいえ、観始めると、やはり英語には違和感があります。
英語音声であることにとりわけ違和感が強いのはリノ・ヴァンチュラです。
声も明らかに別人の吹き替えでしょう。
ヴァンチュラのあの渋い声が聞けないのは残念です。
ギャバンの英語は別人かどうか判断がつかないくらい本人に近い声で、ヴァンチュラほどの違和感は感じません。
ドロンの英語はおそらく本人でしょう。
実際、ギャバンとドロンはハリウッド映画に出ていた経験がありますから、本人の英語であっても不思議ではありません。
と、いきなり作品の内容、ストーリーよりも音声に関することばかり書き連ねてしまいましたが、このフランス三大スターが揃った唯一の大作が英語音声というのは、どうしても納得いかないからです。
ただ、英語のセリフに口の動きがよく合っているようにも感じましたので、英語での配給をもともと念頭に置いて撮影されたのかもしれません。
アメリカ資本が入った映画なので(20世紀フォックス配給)、この点は仕方なかったのかもしれません。
作品の面白さは改めて言うまでもありませんし、国内盤DVDの画質もとてもキレイでしたから、フランス語音声にこだわらない方にはこのDVDは自信を持ってオススメできます。
フレンチ・ノワールを代表する三人の名優が出演したこの映画の原作者は、あの『男の争い』(ジュールス・ダッシン監督)の原作者であり、メルヴィルの『賭博師ボブ』の台詞も担当していた、あのオーギュスト・ル・ブルトン。
脚本にはジョゼ・ジョヴァンニが加わり、また、撮影にアンリ・ドカというフレンチ・ノワールを支えた豪華なスタッフが揃っています。
事実、フィルム・ノワールの大作との世評も高い作品ですが、改めて観ますと、フィルム・ノワール的な雰囲気や緊張感は希薄に感じます。
夜の場面がほとんどないせいでしょうか。
もっとも、脚本を担当した(共同)ジョゼ・ジョヴァンニは、監督のアンリ・ヴェルヌイユが勝手に脚本を変えてしまうので、大いに不満だったそうです。
そのことで20世紀フォックスを通じて抗議したが、受け入れられなかったとのこと。
エンニオ・モリコーネの音楽もアクション映画風で、ノワール的ではありません。
ただ、これはこれで映画にはよく合っており、音楽そのものも魅力的です。(私はサントラCDも持ってます)
豪華なメンツが揃ったキャストでは、アラン・ドロンの二枚目ぶりが際立っています。
髪を振り乱してのアクションシーンの数々は大きな見もの。
リノ・ヴァンチュラ演じる刑事の禁煙のエピソードは、ユーモラスなタッチを作品に加えています。
そして、この二人を向こうにまわしても、ジャン・ギャバンの重厚な存在感はやはり凄い。
旧友のトニーと空港で待ち合わせするシーンや、二つに破ったお札が一致するエピソードなど、印象的でした。
ギャバンとヴァンチュラによるラストシーンはいかにもフランス映画的で堪能できましたが、名優三人並び立つ場面が一つもないのは、やはり残念です。
他には、ジャンヌ役のイリナ・デミックの色気や下世話な感じも良かったですし、メルヴィルの『リスボン特急』で冒頭の銀行強盗のシーンで行員に撃たれるギャングを演じていたアンドレ・プッスが、『シシリアン』では偽造パスポート用のカメラマン役で出ています。(ヴァンチュラに殴られる役)
あと、『サムライ』のピアニスト役だったカティ・ロジェが、この作品では、NYのドロンの部屋に飾られた大きなポスターにて登場しています。
そのポスター自体はストーリーとは何の脈絡もないので、ドロンが絡んでいる点からも、『サムライ』へのオマージュと受け取れないこともありませんが、どうなのでしょうか。
わたしもノワールというよりアクション映画という印象でした。
でも、とても好きな作品です。
>英語音声なので、ギャバン、ドロン、ヴァンチュラが英語でセリフをしゃべる・・・
残念であるとは言え、英語版が基本的に20世紀フォックスのオリジナルなのでしょうね。
映画の特徴からもフランス映画というより、ハリウッド作品として割り切る見方もしかたがないのかなあ?「パリは燃えているか」もそうですよね。
わたしが好きなシーンは、ドロンが売春宿で、ヴァンチュラからすんでのところで逃げるところ、ドロンが妹と別れるところ、ドロンがアメリカでギャバンに裏切られたことがわかるところ、そして、ヴァンチュラに連行されるラスト・シーンのギャバンなど・・・。
「あの胸にもういちど」はドロンをもう一度英語圏で売り出そうという戦略もあったと聞きます。そしてブロンソンとの共演。
「ジェフ」、「ボルサリーノ」もアメリカ資本ですし、ドロン作品での純粋なフランス映画のほうが少ないように思います。
ファンとしては、ドロンのプロダクション設置もこの時期で、その因果関係も興味のあるところです。
では、また。
TBありがとうございました<(_ _)>
『悪魔のようなあなた』『さらば友よ』も英語版と仏語版が存在してますから
この時代
『シシリアン』も両方製作されたのでしょうね
勿論3作品ともドロンさんはご本人のお声だと私も思いますよ
マサヤさんが今回購入された邦版『シシリアン』は英語でしたが
私は吹替え版を観たことが無かったので買いました!
音楽も印象的ですよね♪珍しく私もサントラ盤を購入
かなり聞き込んでおります^^v
こちらも些細な記事ですがTBさせていただきます
建設中の道路に飛行機着陸させちゃうスケールの大きさ、キャストもストーリーも全てが豪華。間違いなくハリウッド的な作品ですね。
しかしドロンを射殺した後のギャバン&ヴァンチュラの絡みのシーンで穴の開いたコートを見るあたりはやっぱフランスの香りがします。
中学の頃 荻さんの「月曜ロードショー」で観て興奮したのを今でも思い出します。
コメント&TBありがとうございます。
やはりノワール的要素は薄いですよね。
でも、ノワールでないからこその面白さなのかもしれません。
トムさんがご指摘になったいくつかのシーンは、私も印象に残りました。
>「あの胸にもういちど」はドロンをもう一度英語圏で売り出そうという戦略もあったと聞きます。
そうなんですか。
英語圏での成功もまだ捨てていなかったということなのでしょうかね。
『ジェフ』は未見なので分かりませんが、『ボルサリーノ』は確かパラマウントでしたよね。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
リンク、コメント、TB等はご自由にどうぞ。