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ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の『殺意の瞬間』を国内盤DVDで観た感想です。
『VOICI LE TEMPS DES ASSASSINS』 (55年)
監督・脚本:ジュリアン・デュヴィヴィエ
脚本:C・ドラ、P・A・ブレアル
撮影:アルマン・ティラール
音楽:ジャン・ウィエネル
出演:ジャン・ギャバン、ダニエル・ドロルム、リュシエンヌ・ボガエル、ジェラール・ブラン、ジェルメーヌ・ケルジャン
これはすごい作品だと思う。
といっても、傑作とか名作とかいう表現はちょっと似合わない。
そういうには何かが足りない気がするが、切羽詰った人間の情念とその行動、そして、それを映像作品として組み立ててゆく職人的手腕に圧倒される。
この作品は、デュヴィヴィエの戦後の監督作『埋れた青春』(54)、『自殺への契約書』(59)、『めんどりの肉』(63)などにも共通して見られる愛憎劇だが、知らず知らずのうちにストーリーにずっぽりと惹き込まれてしまう。
その分、好悪が分かれる作品かもしれないが、その濃厚な味わいは絶品である。
悪女ものとかファム・ファタールものとか言われる作品は数多いが、個人的に、この作品のカトリーヌほど許しがたいキャラクターも珍しい。
何故かというと、男同士の友情関係を、自らの目的のために、嘘の積み重ねで崩壊させてしまうからだ。(これ以上はネタバレになるので自粛)
結果、映画を観終わっても、どこかスッキリしない、後味の悪さが残る。
それくらい、観ている最中、あのキャラクターに怒り心頭だったのだ。
ある意味、そこまで映画に乗せられていたということ。
実際、カトリーヌ役のダニエル・ドロルムも、あのギャバン相手にすごい演技をしている。
映画後半の河辺のシーンでのジェラール・ブランとのシーンは名演である。
そのジェラール・ブランも素晴らしい。
クロード・シャブロルの『美しきセルジュ』、『いとこ同志』、フランソワ・トリュフォーの『あこがれ』など、ヌーヴェル・ヴァーグのスターでもあった彼だが、この映画は55年の作品で、それらの作品よりも以前に撮影されたものである。
しかし、もしかしたら、私はこの役の彼が一番好きかもしれない。
役柄も魅力的なのだが、一つ一つの表情の演技が実に上手い。
もちろん、ジャン・ギャバンの存在感と演技については言うまでもないだろう。
とりわけ、怒りを抑えた演技が見事だ。
あと、カトリーヌの母ガブリエルを演じるリュシエンヌ・ボガエル、また、アンドレの老母役のジェルメーヌ・ケルジャン、二人の怪演ぶりもまたすごい。
IVCから出ているDVDで観たが、画質はこのメーカーのものとしてはかなりマシなものである。
これは意外であった。
その批評が縁で「あこがれ」につながるわけですけど、あの短編で2人は仲たがいをしてしまうんですよね。
ジェラール・ブランも監督作がいくつかあるのですが、それもトリュフォーはきちんと評価してるっていう点に好感がもてますね。
ジェラール・ブランはハワード・ホークスの『ハタリ!』でもおいしい役で、あれもよかったです。
『いとこ同士』『美しきセルジュ』は文句なしですけど。
『殺意の瞬間』も今度、観てみますね。
トリュフォーがこの映画を絶賛していたとは意外です。
彼が非難していた旧世代の映画に属する作品でしょうからね。
でも、そんな縁で『あこがれ』を撮ったとなると納得です。
『あこがれ』ではブランの当時の妻であったベルナデッド・ラフォンばかり撮っていたのでジェラール・ブランが怒ってしまったらしいですね。
ある意味、凄い配役ですが。
ジェラール・ブランに監督作があるとは知りませんでした。
近く『いとこ同志』も再見してみたいと考えています。
ジェラール・ブランは、この作品でヌーヴェル・ヴァーグの作家たちに発見されたことは、何かで読んだことがあります。
トリュフォーは、この作品や大嫌いなオータン・ララ(ドロンはオータン・ララが大好きだそうです)の「パリ横断」も評価しています。
ヌーヴェル・ヴァーグ前後の巨匠たちの作風にも興味のあるところですが、マルセル・カルネの「危険な曲がり角」、デュヴィヴィエの「殺意の瞬間」、ヴェルヌイユの「冬の猿」、オータン・ララの「可愛い悪魔」・・・
そして、そして、ルネ・クレマンの「太陽がいっぱい」・・・わたしは、今この作品の本当の映画史的な意味を追求すると、クロード・シャブロルの「いとこ同士」にそれを紐解く鍵があるように思えてならないんです。
すみません、また熱くなってしまいました。
では、また。
この映画でのジェラール・ブランの瑞々しい演技はヌーヴェル・ヴァーグの作風にピッタリでしたね。
トリュフォーは『パリ横断』も評価していたのですか。
先日日本でも初公開されましたが、観に行けなかったのが残念です。
>クロード・シャブロルの「いとこ同士」にそれを紐解く鍵があるように思えてならないんです。
『いとこ同志』を観るのがますます楽しみになりました。
私の頭脳では、トムさんの仰っている意味が理解できるかどうか自信がありませんが…。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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