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●『熱砂の秘密』(43年、監督:ビリー・ワイルダー、出演:フランチョット・トーン、アン・バクスター)

熱砂の秘密』はビリー・ワイルダーのハリウッド進出2作目に当たる作品で、有名な『深夜の告白』や『失われた週末』はこれより後の作品となる。
第2次大戦におけるエジプトでのイギリス軍とドイツ軍の対立を背景とした作品で、反ナチ色の強い作品だが、これまた実に優れたスパイ・スリラー作品で、ストーリーの面白さに釘付けとなってしまう。
ドイツ軍のロンメル将軍を演じたエーリヒ・フォン・シュトロハイムの存在感が圧倒的であり、名優の一挙手一投足を堪能できる点でも嬉しいし、ミクロス・ローザの緊張感のあるスコアも素晴らしい。

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●『』(49年、監督:ロバート・ワイズ、出演:ロバート・ライアン、オードリー・トッター)

』は八百長の絡んだボクシングの試合をサスペンスタッチで描いた作品で、完璧といってよいような完成度の高さを誇る作品。
劇中の時間と実際の映画の上映時間を同時進行させる設定も見事。(昔観た『真昼の決闘』でも同じような設定があった)
ボクシングに特に興味のない人には、映画で俳優のファイトシーンを見せられるのは如何かと思われるだろうが、この作品はセコンドや観客の表情、反応だけでも充分映画になっている。

image68.gifHPのBBSでも指摘されておりますが、『リスボン特急』のワンシーンに、『サムライ』の主人公ジェフ・コステロの名が登場するシーンがあります。

映画前半でアラン・ドロン演じるコールマン刑事が、安ホテルで売春婦と思われる女性の殺害現場の検証を行うシーンがありますが、部屋を立ち去る際に見つめる壁の落書の中にジェフ・コステロの名が登場するのです。(右画像参照、赤の囲ってある部分、クリックすると拡大します)

メルヴィル監督というと、シリアス一辺倒な監督と思いがちですが、このような目立たないところに、意外とお茶目といいますか、ユーモラス(?)なシーンも撮っていたりするのですね。

image63.gifLe Pacha』(68年)
監督:ジョルジュ・ロートネル
原作:ジャン・ドリオンの小説『親指』
脚色:ミシェル・オーディアール、ジョルジュ・ロートネル
撮影:モーリス・フェルー
音楽:セルジュ・ゲンズブール
出演:ジャン・ギャバン、ダニー・カレル、アンドレ・プッス、ロベール・ダルバン

ジャン・ギャバンが刑事役を演じるアクションもの。
同僚刑事であるロベール・ダルバンとの友情関係が下敷きになった、『現金に手を出すな』の刑事版ストーリーのような作品です。
ジョルジュ・ロートネルの演出はスピーディーで無駄が無く、上映時間も80分程度と程よくまとまっていて、かなり楽しめる作品です。

image65.gifセルジュ・ゲンズブールが音楽を担当、サスペンス感を盛り上げていますが、レコーディング風景に自ら出演しているシーンも映画中盤にあり、全篇中の程よいアクセントになっています。
ギャバンとゲンズブールがすれ違うという注目すべきカットもありますが、お互い、何を感じていたのでしょうか。

アンドレ・プッスが残虐な悪役カンカンを好演していますが、このカンカンという名前は、プッスがムーラン・ルージュの芸術監督を務めていたためではないかと思われます。
女スパイ、ダニー・カレルの存在感も良いです。

image60.gifLE COUP DU BERGER』(56年)
製作:ピエール・ブロンベルジェ、クロード・シャブロル
監督:ジャック・リヴェット
脚本:クロード・シャブロル、ジャック・リヴェット、シャルル・ビッチ
音楽:フランソワ・クープラン
撮影:シャルル・ビッチ
助監督:ジャン=マリー・ストローブ
出演:ヴィルジニー・ヴィトリ、ジャン=クロード・ブリアリ、エティエンヌ・ロワノ

男女の恋愛の駆け引きをチェスの手になぞらえたのがこの映画のタイトルです。
28分の短編ですが、ピエール・ブロンベルジェクロード・シャブロル製作による作品で、ヌーヴェル・ヴァーグの最初の作品とも言われています。

image61.gifスタッフを見てもお分かりの通り、ヌーヴェル・ヴァーグの関係者が軒並み撮影に協力した映画であり、出演者のエティエンヌ・ロワノは、ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ(『カイエ・デュ・シネマ』誌の編集長で『唇によだれ』の監督)の俳優名です。

撮影はシャブロルのアパートで行われ、最後のパーティ場面にトリュフォーゴダールがチラリと出ています。(トリュフォーにはセリフもあります。シャブロルも出ているとの説もあり)
山田宏一氏の著書『わがフランス映画誌』掲載のピエール・ブロンベルジェのインタビューによると、メルヴィルアラン・レネも映画に協力し、出演もしているとのことでしたが、画面を見るかぎりハッキリとは確認できません。(国内盤DVDの映像が暗めであることも影響しているかもしれません)
  
そして、これはジャック・リヴェットの処女作とのことですが、とても処女作とは思えない魅力的な作品です。
脚本、構成、撮影に無駄がなくスッキリとまとまっていますし、オチもしっかりしています。
私はこの作品が気に入って、2回続けて観てしまいました。

image62.gifキャストも、ことにヒロインのヴィルジニー・ヴィトリが魅力的で素晴らしい。
また、初期ヌーヴェル・ヴァーグに欠かせぬ顔、ジャン=クロード・ブリアリもすでに彼ならではの存在感を発揮しています。

バロック音楽の作曲家フランソワ・クープランの音楽の使い方も効果的で、メルヴィル監督の『恐るべき子供たち』(50)におけるヴィヴァルディバッハの音楽の使い方を思い起こします。

ちなみに、撮影を担当したシャルル・ビッチは、以前このブログでも紹介したゴダールの『女と男のいる舗道』の助監督であったことで知られる人ですが、メルヴィル監督の『マンハッタンの二人の男』では助監督とカメラオペレーターを、『いぬ』では助監督を務めています。

前回の『めんどりの肉』に続き、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の作品を観ました。

image59.gifDiaboliquement Votre』(67年)
監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ
原作:ルイ・C・トーマ
脚本:ジュリアン・デュヴィヴィエ、ローラン・ラージル、ジャン・ボルバリ
撮影:アンリ・ドカ
音楽:フランソワ・ド・ルーベ
出演:アラン・ドロン、センタ・バーガー、セルジョ・ファントーニ、ピエール・モスバシェル

デュヴィヴィエ監督、ドカ、ド・ルーべ、そしてドロン…このメンツからいっても、期待するなという方がおかしいでしょう。
デュヴィヴィエ監督の遺作ですが、それを感じさせない疾走感ある若々しいオープニングにいきなり驚かされます。
オープニングのフランソワ・ド・ルーべの音楽(オーケストレーションは『影の軍隊』『仁義』のエリック・ドマルサン)も素晴らしい。

image58.gifところが、病院、お城と物語が展開するに従って、隙間風が吹くような白けた空気が映画に漂い始めます。
一見、意味有り気に見えながらもほとんど意味の無い大仏や、ドロン着用の紋付の着物を始めとする妙な感じのオリエンタル趣味、どう見ても中国人に見えない使用人、怪しさ満点の医者、そしてテープレコーダーなど緊迫感の感じられないシーンの数々…。
主演のアラン・ドロンセンタ・バーガー二人とも見た目は美しいので、視覚的にはそれなりに楽しめる映画なのですが、映画前半からなんとなくオチが見える展開といい、サスペンス劇としての作りの甘さが気になってしまいます。

image57.gifデュヴィヴィエ監督というと、心理描写に優れたかっちりしたドラマを作る監督というイメージがありましたが、この映画は本気なのか冗談なのか分からないシーンが続出で、特に映画後半で、コトの真相を女から聞いた男が「もう一回」「いいわ」(SEXのことです)のやりとりを聞いた時は、「これって笑うとこ?」と思ってしまいました…。
また、二体の死体が転がるラストの展開や、その後のオチもどうも締まらない印象ですが、ゴダール作品のようなユーモアとして捉えればいいんでしょうか…よく分かりません。

ジュリアン・デュヴィヴィエ監督は、どちらかというと戦前の作品の評価が高く、戦後の作品の評価は相対的に低いようですが、戦後も、前回紹介した『めんどりの肉』の他にも『埋れた青春』『自殺への契約書』など素晴らしい作品を世に出しています。
その名匠の遺作としては、この作品は残念ながら期待外れの印象でした。
実際のところ、観たソフトが画質の良くないVHSビデオレンタルでしたので、画質の良いDVDで観ると印象が変わるかもしれませんが…。

ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の『めんどりの肉』を観ました。

image54.gif『Chair de Poule』63年
監督・脚本:ジュリアン・デュヴィヴィエ
原作:ジェームス・ハドリー・チェイス
脚本・台詞:ルネ・バルジャヴェル
撮影:レオンス・アンリ・ビュレル
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演:ロベール・オッセン、ジャン・ソレル、カトリーヌ・ルーヴェル

タイトルの「めんどり」とは売春婦を表すスラングとのこと。
一見間の抜けたタイトルで損をしているかもしれませんが、これは紛れも無いフィルム・ノワールの傑作です。

ドライブイン兼レストランが舞台で、店を切り盛りする年の離れた夫婦の元に若い男が来て…というと、あの『郵便配達は二度ベルを鳴らす』を思い起こします。
ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の比較的晩年の作品ですが(69年に監督は事故死)、登場人物の心理状態が手に取るようによく分かり、その語り口の巧さはさすがとしかいいようがありません。
とりわけ、登場人物それぞれの欲望がぶつかり合う映画後半の展開は迫力があります。

image56.gifこの映画の主演には、もともとアラン・ドロンカトリーヌ・ドヌーヴが予定されていたとのこと。
言うまでも無く、メルヴィル監督の『リスボン特急』のコンビですが、どういう事情があったのかその計画は流れ、結果的にロベール・オッセンカトリーヌ・ルーヴェルのコンビとなりました。
もし、『めんどりの肉』でドロンとドヌーヴのコンビが実現していたら、メルヴィル監督の気質からいっても『リスボン特急』のキャスティングはなかったかもしれません…つまり、メルヴィル監督作品とも全く関係のない作品とも言えないのです。
それはともかく、大スター二人の共演の消滅は残念ではありますが、映画そのものは、その不満を全く感じさせない見事な出来栄えです。

image55.gifキャストでは、なんといっても、カトリーヌ・ルーヴェルのファム・ファタールぶりが凄い。
彼女の出演作では、ジャン・ルノワール監督の『草の上の昼食』の明るい健康美が印象に残っていますが、この作品では、それとは全く異なる役柄を堂々と演じきっています。
あまりにもハマリ役で、ドヌーヴのこの役なんかちょっと想像つかないくらい。
相手役のロベール・オッセン(『殺られる』『凶悪犯』)は、スター性は乏しいものの、却ってその普通具合がイイのか、彼の出演作は妙に感情移入して観てしまいます。
仲間のジャン・ソレル(『昼顔』)も存在感がありましたし、他にもジョルジュ・ウィルソン(『かくも長き不在』)、ニコ-ル・ベルジェ(『ピアニストを撃て』)などキャスティングも何気に豪華。

また、『抵抗』『スリ』など、ロベール・ブレッソン監督作品の撮影監督でもあったレオンス・アンリ・ビュレル撮影による、昼か夜か分からない微妙な空合いが印象的。
ジョルジュ・ドルリューの音楽は美しいものの、少々情に流れる感もあります。

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マサヤ
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男性
趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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