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image66.jpgモラン神父』(61年)はジャン=ピエール・メルヴィル監督の傑作の一つですが、日本ではいまだ劇場未公開。
もちろん、ビデオ化、DVD化もされておりません。
メルヴィル監督というと、“男性映画”というイメージがあり、もちろんそれは間違いではありませんが、この『モラン神父』はジャン=ポール・ベルモンド主演作ではあるものの、内容を観ますと、女優エマニュエル・リヴァ(代表作に『二十四時間の情事』)が主演の作品と言ってよく、事実上“女性映画”と言ってもおかしくない作品なのです。

内容的にはメルヴィル監督作品らしく、いかにも地味なのですが、エマニュエル・リヴァのキメ細かな演技が実に素晴らしく、それを引き出したメルヴィル監督の演出能力を実感できる作品となっています。
また、アンリ・ドカの陰影深いモノクロ映像もまた実に見事です。(ドカの傑作の一つだと思います)

もちろん、あのジャン=ポール・ベルモンド神父役を演じているという異色作でもあり、内容的に宗教をテーマとした映画という側面もあることはあるのですが、当のメルヴィル監督は信仰心の問題にはさほど関心がなく、むしろ全く立場の異なる男女の関係性を描きたかった作品のようなのです。

昨今のメルヴィル作品の国内DVD化事情を鑑みますに、そろそろDVD化されてもおかしくない状況ではあると思います。
可能性としては、このところメルヴィル作品やジャン=ポール・ベルモンド主演作が続々とDVD化されているユニバーサルが最も高いでしょう。
もちろん、最近頑張っている紀伊国屋書店あたりから発売されるとしたら、これはこれでとても嬉しいですが。

個人的に、この作品のDVDは、フランス盤、BFI盤(イギリス盤)のDVDを所有しておりますが、鑑賞上フランス盤は字幕がないので問題外、イギリス盤も私の語学に問題ありでなかなか充分にこの作品を楽しめない状態です。
是非とも、国内盤の字幕で、この作品を心行くまで楽しみたいと思っているのですが。

ところで、現在YouTubeには何点かの『モラン神父』の映像がアップされています。(削除される可能性もあり)

予告編
ベルモンドとリヴァの対話のシーン』(実際の映画とは無関係な音楽入り)
女同士のケンカのシーン
後半の抜粋
ベルモンドの説教シーン』(実際の映画とは無関係な音楽入り)

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ジャン・ルノワール監督の『どん底』を国内盤DVD(ジュネス企画)で観た感想です。

image63.jpgLES BAS-FONDS』 (1936)
監督:ジャン・ルノワール
脚本:ジャン・ルノワール、シャルル・スパーク
撮影:F・ブルガース、ジャック・メルカントン
音楽:ジャン・ウィエネル
出演:ジャン・ギャバン、ルイ・ジューヴェ、シュジー・プリム、ジュニー・アストル、ウラジミール・ソコロフ、ジャニー・オルト

 
ロシアの文豪ゴーリキーの原作を映画化したもの。
原作は読んでません。

再見。
ゴーリキーの『どん底』の映画化といえば、黒澤明監督の『どん底』(57年)も有名です。
私も過去に黒澤版を観ていますが、あちらはあまりにリアリティにこだわり過ぎた結果でしょうか、長屋の汚らしさが直に感じられて、正直なところ、素直に楽しめませんでした。
内容はそれなりに面白かったのですが。

それに比べると、 このルノワール版は、ジャン・ギャバンを始めとする“どん底”の住人たちと、ルイ・ジューヴェ演じる落ちぶれ貴族のエピソードがバランス良く、親しみやすい印象。
人々に向ける視線がいかにもルノワール的な温かさという感じ。

image64.jpgそれに、なんといっても、ジャン・ギャバンルイ・ジューヴェの共演がいい。
とりわけ男爵役を演じるルイ・ジューヴェの演技が圧巻
アクの強い俳優なので、これまでは少々苦手と感じることもありましたが、この作品の演技の見事さには脱帽しました。

ジャン・ギャバンの良さも言うまでもなく、実にいきいきとした演技です。
とりわけ怒りの表現が素晴らしい。
ファム・ファタール的役柄を演じるシュジー・プリムの存在感も凄い。
黒澤版で山田五十鈴がやっていたのも強烈な印象でしたが。

“どん底”の住人たちも芸達者が揃っており、バッハのカンタータ風を思わせるジャン・ウィエネルの音楽も映画に溶け込んでいます。

国内盤DVDの画質はこのメーカーのものとしてはまずまず。

ジャン=ピエール・メルヴィル監督の遺作『リスボン特急』(72)のラストシーンは、凱旋門そばのホテル『SPLENDID HOTEL』前が舞台となります。
ここでコールマン警部(アラン・ドロン)は、友人であり犯罪者でもあるシモン(リチャード・クレンナ)と相対するわけです。
シモンはこのホテルの最上階、凱旋門の見える南側の部屋に宿泊しているという設定です。
このホテルは、シャンゼリゼ大通りから凱旋門に向かって、右側の奥、つまり方角的には北側に位置しています。(地図

私は2年前にパリを訪れた際、その舞台となったホテルが現存していることをこの目で確認しました。
パリ旅行の際に書いた記事
その際、いろいろ写真も撮りました。

左側が『リスボン特急』のワンシーン、右側が私がその時に撮影した写真です。
よろしければクリックして画像を拡大して見比べて下さい。

image54.jpg
入り口こそ変わっていますが、建物そのものは変わっていません。

3611c750.jpeg
ドロンに声を掛けられ振り向くクレンナ。左向こうにはドヌーヴの車が停まっています。

image57.jpg
上の写真の反対側の風景。クレンナに拳銃を向けたドロンが立っていた場所のすぐ近くです。

image58.jpg
ホテルの北側。ポール・クローシェの後ろに微かに“BAR”の文字が。現在はレストランのようです。

画像をご覧になっていただくとよく分かりますが、写真の構図は違いや、建物の細部の違いはあるものの、舞台となったホテルと全く同じホテルであることが御確認できるでしょう。
名称は『HOTEL SPLENDID ETOILE』と変わったようです。
ホテルのホームページ
ちなみに、凱旋門前の広場の名称は、現在『シャルル・ド・ゴール広場』ですが、1970年以前は『エトワール広場Place de l'Etoile)』と呼ばれており、現在もそう呼ばれることが多いそうです。

この地で『リスボン特急』が撮影されたのは1972年のことです。
それから35年経っても、舞台となったホテルがほぼそのままの姿で残っていることに私は密かに感動しました。
こういった古い建物がそのまま残っている点がいかにもパリらしい、といえるかもしれません。

以前別サイトにて書いたフランソワ・トリュフォー監督作品のレビューの転載です。(一部手直しあり)
今回は『家庭』。

c71513f4.jpegDOMICILE CONJUGAL』 (70年)
監督:フランソワ・トリュフォー
脚本:フランソワ・トリュフォー、クロード・ド・ジヴレー、ベルナール・ルヴォン
撮影:ネストール・アルメンドロス
音楽:アントワーヌ・ドゥワメル
出演:ジャン=ピエール・レオー(アントワーヌ・ドワネル)、クロード・ジャド(クリスチーヌ・ドワネル)、キョーコ・ヤマダ(松本弘子)
98分、カラー

夜霧の恋人たち』に続く、“ドワネルもの”第4弾。
アントワーヌとクリスチーヌは一見人も羨むような幸せな新婚夫婦…その結婚生活の様がコミカルに描かれています。

私は特に前半の明るさと楽しさが好きです。
2人の夫婦生活のみならず、アパート住人(変人だらけ!)の生活の様子も生き生きと描かれていて、それらのエピソードも楽しいの一言。彼らは中庭に面したアパートに住んでいますが、その舞台設定がいかにもフランス映画らしいというか、トリュフォーの映画らしく、その賑やかで明るい雰囲気が本当に魅力的なのです。

アパートの住人は、カフェの主人、外出嫌いの退役軍人、アントワーヌに言い寄る女、時間に厳しいオペラ歌手と、対照的に時間に愚図な妻、“絞殺魔”と呼ばれる男・・・。
それに、これはアパートの住人ではありませんが、『夜霧の恋人たち』でも出てきたアントワーヌの旧友で、会う度にアントワーヌから金を借りる“借金男”…。
そして、特別出演(?)のユロ氏・・・(残念ながらタチ本人ではない)。
いってみれば映画の役柄としては脇役の連中ばかりですが、彼らの存在感が大変面白く、この作品の大きな魅力なのです。

そして、肝心のドワネル夫妻。
映画の前半でアントワーヌは花の着色、クリスチーヌはヴァイオリンの教師をして生計を立てていますが、アントワーヌは例によって、仕事の方はイマイチ落ち着かず…。
いつまでたっても“大人”になりきれていないのは相変わらずで、日本人女性との浮気も火遊びなのかなんなのか自分でもよく分かってなさそう…。

一方、妻のクリスチーヌは堂々としたもの。
彼女を演じるクロード・ジャドが2年前の『夜霧の恋人たち』の頃に比べ、すっかり女らしくキレイになっているのにもビックリです。
アントワーヌの浮気相手となるキョーコ(松本弘子)の描写は少々滑稽で、これが当時のフランスにおける日本人女性の姿だとしたらちょっと寂しい気もします…。

protectedimage.jpgHPのトップページのNEWS欄でもお知らせ済みですが、英Oprimum Releasingより、メルヴィル作品の6枚組DVD・BOXが3月2日に発売されます

収録作品は、『賭博師ボブ』(56)、『モラン神父』(61)、『いぬ』(62)、『影の軍隊』(69)、『仁義』(70)、『リスボン特急』(72)の6作品。
内容が詳しく紹介されたDVD Timesへのリンク

英盤なので、リージョン2PAL盤英語字幕付きです。
『賭博師ボブ』と『リスボン特急』以外の4作品は以前英BFIから出ていたものと同一のもののようです。

BOXにしては価格が安いのも特徴で、現在英Amazonでは32.99ポンド、つまり日本円にして4600円ほどと破格の安さです。(送料別)
個人的にBFI盤は『モラン神父』『いぬ』『仁義』を所有していますが、どれも1枚4000円前後しましたから、6枚組でこの価格はお得ですね。

ここ一年ほどでメルヴィル作品は国内盤が次々と発売されていますので、正直なところ、海外盤の有難味は徐々になくなりつつありますが、例えば『モラン神父』などはいまだに国内盤はありませんし、『仁義』のBFI盤は国内盤とはお話にならないくらい画質が良いですから、関心のある方には大いに勧められるBOXかと思います。

ちなみに、このDVD・BOXのデザインもメルヴィルらしくて実にいいですね。
日本でも同じようなボックスが発売されると嬉しいですが…。

00000911642L.jpg本日2月28日紀伊国屋書店よりロベール・ブレッソン監督の『抵抗―死刑囚は逃げた』のDVDが発売されます。
言うまでもなくブレッソン監督の傑作で、個人的にもブレッソン作品中で最も衝撃を受けた作品です。
あらゆるサスペンス映画の中でも最も迫真に満ちた作品の一つではないでしょうか。
以前書いたこの作品のレビュー

ただ、個人的に気になるのがこの邦題で、これではある種のネタバレではないかと思うのは私だけでしょうか。
脱走が本当に成功するのか否か、まさしく手に汗握る映画ですので、この邦題はちょっとないと思うのですが。
それとも、結末が分かっていても、この映画は内容が凄いのだから、問題ないという解釈なんでしょうかね。
実際、私の記憶に間違いがなければ、この作品は本邦公開時、『抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-』というタイトルで公開されたようです。
こちらのタイトルならば、ネタバレにはならないと思うのですが…。

ところで、Amazonでは発売前だと大抵の場合、割引率が高いので私もよく利用しますが、特にこのDVDのような価格が高めのもの(税込5040円)などは助かります。
このDVDも発売前はずっと26%オフでしたので、予約注文するつもりでしたが、ずっと延び延びになり、昨日ようやく予約、なんとか26%オフには間に合いました。

以前この作品を観た時はレンタルビデオでしたので、画質もどうなっているか気になりますし、とにかく、あの凄みのある大傑作をDVDで観られるというだけでも楽しみです。

ジェラール・ウーリー監督の『大追跡』を国内盤DVDで観た感想です。

image26.jpgLe Corniaud』(65年)
監督:ジェラール・ウーリー
脚本:マルセル・ジュリアン、ジェラール・ウーリー
撮影:アンリ・ドカ
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演:ブールヴィル、ルイ・ド・フュネス、アリダ・ケッリ、ベバ・ロンカー、ランド・ブッツァンカ

60年代のフランスのコメディ俳優といえば、個人的にはジャック・タチが馴染み深いのですが、当の本国フランスではブールヴィルルイ・ド・フュネスが大変な人気で、彼らが主演したこの『大追跡』、後の『大進撃』(66年)などはフランス映画史でもトップクラスの大ヒットを記録したといいます。
これらの作品は当時日本でも公開されたようですが、日本の観客の受けはどうだったのでしょうか。

かくいう私も、彼らのコンビ作を観るのは今回が初めてだったのですが、内容はかなり面白かったです。
作風としては地味と言えば地味ですし、これといったスター俳優、スター女優は出てきませんので、その辺が日本で今一つ受けていない(?)理由かもしれませんが、ストーリーのテンポが実に良く、脇役も含め、俳優陣が皆魅力的な作品でした。

特に、お人好しのアントワーヌを演じるブールヴィルがいい。
こういう作品を観ると、メルヴィルの『仁義』(70)において、彼が演じたマテイ警視役がいかに彼にとって大きな挑戦であったのか分かってくるような気がします。
そして、『仁義』での警視役は卑劣なこともする割には、どこか温かみを感じさせる人間像でしたが、それは、ブールヴィルの生まれ持ったキャラクターによるものだということが、分かってくるような気がします。
もちろんブールヴィルのそういった要素を活かしたメルヴィル演出という側面もあるのでしょう。

彼に絡む女優二人も良く、アンリ・ドカによる撮影、ジョルジュ・ドルリューの音楽も結構なものでした。

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テンプレ作った人:おみそ
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HN:
マサヤ
性別:
男性
趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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