[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
黒澤明監督の『悪い奴ほどよく眠る』を国内盤DVDで観た感想。
『悪い奴ほどよく眠る』(60年)
監督:黒澤明
脚本:小国英雄、久板栄二郎、黒澤明、菊島隆三、橋本忍
撮影:逢沢譲
音楽:佐藤勝
出演:三船敏郎、森雅之、香川京子、三橋達也、志村喬、西村晃、加藤武、藤原釜足
初見。
さすが黒澤。
とにかく面白く、全篇ほとんど息つく暇もない。
黒澤には珍しい社会派サスペンスで、黒澤作品の中では上位に位置する作品ではないのかもしれないが、世間的広しと言えどもこれほどの作品が他にいくつあるのかと言いたくなるくらいの傑作である。
キャストも、三船敏郎が良いのは当然として、香川京子の可憐さが魅力的であり、加藤武もいいキャラクターだ。
西村晃、藤原釜足の少々大時代な演技(メーキャップ含む)が決して作品の中で浮いた印象になっていないし、ヘンに分別くさくやられるよりもよっぽどいい。
それはそうと、副総裁岩渕を演じたのが森雅之だとは全く気づかなかった。
久々に山本陽一という懐かしい名を目にした。
良いニュースではないのが残念だが…。
リンク
山本陽一といって思い出すのは『パンツの穴』(鈴木則文監督)である。
菊池桃子のスクリーン・デビュー作としても知られる84年の映画だ。
私はこの映画を観たのは(どこでどのように観たのか未だによく覚えていないのだが…)、当時菊池桃子のファンだったから。
彼女がデビューしてから2~3年はファンだったんじゃないかな…。
当時の菊池桃子は女優というよりは歌手として活躍していたが、セカンドシングル『Summer Eyes』でファンになり、続いて発売された1stアルバム『Ocean Side』は超名盤と言ってよいような素晴らしい内容だった。
なにしろ全曲が林哲司の作曲とサウンドプロデュースによるもので、歌はどうしようもなくヘタだったが、幸い彼女は楽曲に恵まれていた。
このアルバムは最初LPで買って、後にCDでも買い直したくらいである。
彼女は現在でもテレビによく出るしあの年代にしては美貌をよく保っていると思うが、今では全く何の興味もなくなってしまったのが自分でもおかしい。
『パンツの穴』に話を戻すと、内容はハチャメチャな青春映画で、当時とすればかなりH(表現が古い…)な内容だったのだが、映画の中での菊池桃子の輝きは凄かった。
それとともに是非ここに書き残したいのは『パンツの穴』のサウンドトラックについてである。
映画の中で使われた音楽が実に感動的で素晴らしかったので、当時サウンドトラックのLPを買ったほどだった。
そのジャケットもタイトルもどんなアーティストが作曲したものかも覚えていなかったが、さっきネットで調べてみたら、惣領泰則とジム・ロックスによるものだということが分かった。
残念ながらCD化はされていないようだが…。
YouTube『パンツの穴』オープニングとクライマックスシーンの動画(リンク)
本当は動画を直接ブログに貼りたいのだが、この動画に関してはできないのでご勘弁…。
ちなみに動画の前半は映画のオープニングでバックに山本陽一の歌、動画の1分50秒くらいからバックに惣領泰則とジム・ロックスによる『LOVING CARE』が流れる。
このシーンが菊池桃子も含め実にいいので是非観て欲しい。
オープニングシーンの菊池桃子の登場シーンも印象的で、昨今のアイドル(?)が束になっても敵わぬオーラが当時の彼女にはあると思う。
川島雄三監督の『風船』をDVDで観た感想。
『風船』(56年)
監督:川島雄三
脚本:川島雄三、今村昌平
撮影:高村倉太郎
音楽:黛敏郎
出演:森雅之、芦川いづみ、三橋達也、新珠三千代、二本柳寛、北原三枝、左幸子
豪華なキャストを誇る作品だが、全体的にどことなく散漫な印象が残る。
ストーリーはなかなか面白い作品なのだが、もう一つ焦点が絞りきれていないせいか。
それでもかなり好きな作品だが…。
会社社長役の森雅之はここでは老け役で、キャラ的にあまりに分別がありすぎる印象だが、その物腰や佇まいはさすがに魅力的である。
ただ、三橋達也の父親役という設定は少々無理がある気も…。
その娘、珠子を演じた芦川いづみが純真な役柄を見事に演じきっていて、これはもう実質的な主役。
彼女自身、川島監督の出演作でこの作品が一番気に入っているという。
それも納得の素晴らしさである。
二本柳寛の存在感がところどころ印象的なのだが、キャラクターがもう一つハッキリしないのがなんとも惜しい。
ハッキリしないといえば、新珠三千代の役柄もそうで、このあたりどうにも勿体ない気がする。
その点、シャンソン歌手役の北原三枝は儲け役といえるだろう。
彼女が着ている衣装も森英恵デザインというだけあって印象的だ。
この時代のナイトクラブの風俗描写が興味深い作品であり、ラストもいい。
森一生監督の『ある殺し屋の鍵』をDVDで観た感想。
『ある殺し屋の鍵』(67年)
監督:森一生
原作:藤原審爾
脚本:小滝光郎
撮影:宮川一夫
音楽:鏑木創
出演:市川雷蔵、西村晃、佐藤友美、山形勲、中谷一郎、金内吉男、内田朝雄
初見。
同じく森一生監督、市川雷蔵主演の『ある殺し屋』(67)の続編にあたる作品。
第1作の『ある殺し屋』は随分前に観ましたが、かなり面白かった記憶があります。
市川雷蔵はなんといっても時代劇が最高ですが、こういった現代劇もいいです。
メイクの関係で顔立ちが若干地味に見えることは否定できませんが、かえって顔立ちのノーブルさ(?)が引き立つと感じるのは私だけでしょうか。
このシリーズで雷蔵演じている新田という“殺し屋”の役柄は、奇しくも同じ年に撮られたジャン=ピエール・メルヴィル監督の『サムライ』(67)でのアラン・ドロン演じるニヒルな殺し屋のキャラクターを思わせ、事実、ストーリー的にもこの作品は『サムライ』に近いものを感じます。
正直なところ、第1作の『ある殺し屋』に比べて、この作品は質的に若干落ちる気がしますが、雷蔵が日舞の師範という役柄なのが面白く、また、西村晃、佐藤友美といったキャストも良かったので十分合格点の出来映えだと思います。
また、鏑木創の音楽も良かったですし、名匠宮川一夫のキャメラがさすがの素晴らしさです。
田中徳三監督の『眠狂四郎 殺法帖』をDVDで観た感想。
『眠狂四郎 殺法帖』(63年)
監督:田中徳三
原作:柴田錬三郎
脚本:星川清司
撮影:牧浦地志
音楽:小杉太一郎
出演:市川雷蔵、中村玉緒、城健三朗、小林勝彦、真城千都世、沢村宗之助、伊達三郎
初見。
市川雷蔵主演の『眠狂四郎』シリーズは今のところまだ4~5作くらいしか観ていないが、時おり無性に観たくなる時がある。
このシリーズにおける雷蔵の清潔感あるクールな色気が、私のような男性から見てもなんとも魅力的だからだ。
この『殺法帖』は『眠狂四郎』シリーズ第1作となった作品で、観てみると他の作品に比べそれほど完成度の高い作品とは思えない。
しかし、雷蔵による狂四郎のキャラクターが第1作にしてほぼ確立していることに驚かされるし、完成度云々を別とすればストーリーもそこそこ面白く、それなりに楽しめる作品だ。
雷蔵以外のキャストでは城健三朗(若山富三郎)が役柄は微妙ながら彼なりの味を出しており、中村玉緒のしっかりした演技も光る。
川島雄三監督の『洲崎パラダイス 赤信号』をDVDで観た感想です。
『洲崎パラダイス 赤信号』(56年)
監督:川島雄三
原作:芝木好子
脚本:井出俊郎、寺田信義
撮影:高村倉太郎
音楽:真鍋理一郎
出演:新珠三千代、三橋達也、轟夕起子、芦川いづみ、植村謙二郎、牧真介、小沢昭一
初見。
先日このブログでも紹介した成瀬巳喜男監督の『女の中にいる他人』に出演していた新珠三千代と三橋達也がその10年前に主演していた作品で、昭和30年頃の東京の洲崎界隈を舞台にした作品。
これはなんとも魅力的な映画。
まず、洲崎という舞台設定が風情があって良い。
そして、監督の登場人物を見つめる視線が温かい。
そのためでしょうか、観ていて全然イヤな気分にならなりませんでした。
ちなみに、洲崎という土地名は昨今では聞き慣れぬ名だが、現在の江東区木場のあたりらしい。
キャストでも、三橋達也がどうしようもないダメ男をうまく演じているほか、新珠三千代もいつもとは違ったアバズレ(?)キャラを見事に演じている。
夫に逃げられながらも飲み屋を切り盛りする女将を演じた轟夕起子も実にいい味を出しているし、蕎麦屋のアルバイト役の芦川いづみがまた一服の清涼剤のような存在感。
小林正樹監督の『切腹』を国内盤DVDで観たのでその感想です。
『切腹』(62年)
監督:小林正樹
原作:滝口康彦
脚本:橋本忍
撮影:宮島義勇
音楽:武満徹
出演:仲代達矢、三國連太郎、丹波哲郎、岩下志麻、石浜朗
初見。
これは凄い。
風説に違わぬ傑作、いや、信じがたいほどの傑作というべきか。
凄いという評判は聞きながらも、これまでなんとなく敬遠してきた作品だが、もっと早く観ればよかった。
黒澤明監督の作品の脚本を数多く担当した橋本忍による脚本で、これは黒澤作品のような娯楽性は薄いが、画面の作り方になんというか厳格さというか品格が漂っており、重厚感と緊張感のある内容は実に見ごたえがある。
構成も見事。
これはある種台詞劇と言えるが、誰も彼も台詞がうまい。
仲代達矢と三國連太郎の台詞のやりとりが素晴らしい。
仲代達矢の隙のない演技、存在感は大したものだし、三國連太郎の演技もそれに劣らぬくらい凄い。
仲代の台詞に対してピクッと動く顔の演技など、絶妙な上手さである。
また、仲代達矢と丹波哲郎の対決シーンが信じられないくらい凄い。
いくら作り物だと分かっていてもこれは圧倒的。
丹波哲郎といえば、先日取り上げた『砂の器』の見事な刑事役のように現代劇の俳優だと勝手に思っていたが、こういった時代劇でも素晴らしいのには驚かされた。
殺陣の所作も見事である。
仲代の娘役の岩下志麻も良かった。(観ている間、岩下志麻だと分からなかった)
琵琶を使った(たぶん)武満徹の緊張感のある音楽も効果的。
むやみやたらに音楽で映画を盛り上げようとしない点もいい。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
リンク、コメント、TB等はご自由にどうぞ。