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これまたDVDを買ったままほったらかしにしていた『メグレ警視 サン・フィアクル殺人事件』 (『Maigret et l'affaire Saint-Fiacre』)を観ました。
監督:ジャン・ドラノワ
出演:ジャン・ギャバン、ピエール・フランクール、ヴァランティーヌ・テシエ、ロベール・イルシュ、ミシェル・オークレール
59年の作品
ジョルジュ・シムノン原作のメグレ警視シリーズでも、当たり役として有名なジャン・ギャバン主演の1作。
ギャバンのメグレ・シリーズでは、以前『殺人鬼に罠をかけろ』(58年。監督:ジャン・ドラノワ)も観て、面白かったのですが、これもフィルム・ノワールの雰囲気は薄いものの、実に面白い作品であることに変わりありません。
なんといっても、ジャン・ギャバンの存在感に尽きます。
のっさのっさ歩いている後姿を観るだけで、もう満足なのですが、とりわけ、子供の頃通った駄菓子屋(?)に入って、顔見知りのおばちゃんに「キャラメルが欲しい」というシーンの面白さったらなかったですね。
脇の俳優も、一癖も二癖もある連中が揃って、見応えがあります。
映画作品としての出来栄えは、『殺人鬼に罠をかけろ』の方が上のような気もしますが、この作品も謎解きの面白さに最後まで惹きつけられる作品です。
その肝心の謎解きがよく分からないような気もしましたが、私も理解不足かもしれません。
最近観た映画というわけではありませんが、仏フィルム・ノワールの傑作『男の争い』『DU RIFIFI CHEZ LES HOMMES』(55)を紹介したいと思います。(ネタバレは極力避けています)
原作:オーギュスト・ル・ブルトン、監督:ジュールス・ダッシン、撮影:フィリップ・アゴスティーニ、脚本: ジュールス・ダッシン、オーギュスト・ル・ブルトン、ルネ・ウェレル、美術:アレクサンドル・トローネル
映画のストーリーですが、5年の刑期を終え出所したトニー・ステファヌワ(ジャン・セルヴェ)が、仲間に誘われて宝石強盗を計画、実行するのが映画の前半。
トニーの昔の女を巡って、ナイトクラブのオーナー、ピエールとの確執から、双方の争いへと発展するのが映画の後半です。
共に宝石強盗に挑むのは、ジョー(カール・メーナー)、マリオ(ロベール・マニュエル)、金庫破りの名人であるイタリア人、セザール(監督のジュールス・ダッシン本人)。
一方、昔の女絡みで、トニーと対立するナイトクラブのオーナー、ピエール(マルセル・リュポヴィシ)、ヤク中毒の弟レミ(ロベール・オッセン)、ピエールの手下にデビュー間もないピエール・グラッセ(『マンハッタンの二人の男』『ギャング』)。
女優陣も粒揃いで、トニーの元愛人で、現在はピエールの愛人に収まっているマドー(マリー・サブレ)、セザールが惚れるクラブのダンサーのヴィヴィアン(マガリ・ノエル)、ジョーの妻(ジャニーヌ・ダルセイ)、マリオの妻(クロード・シルヴァン)など。
この作品、現在では紀伊国屋書店よりDVDが発売されていますし、ビデオレンタルも大手のところでは見掛けます。
メルヴィルの『賭博師ボブ』などと同様、ジョン・ヒューストンの『アスファルト・ジャングル』からの大きな影響を受けたと思われる“押し入り強盗もの”です。
あるインタビューにおいて、メルヴィルが「『男の争い』はもともと私が監督するはずだったんだ」と語ったという記事を読んだ記憶がありますが、真偽のほどは分かりません。
実際のところ、メルヴィルがこの作品を気に入っていたのは事実のようです。
キャストでは、なんといっても、主演のジャン・セルヴェの中年男の魅力が素晴らしい。
風貌はどこか指揮者のカラヤンを彷彿とさせる二枚目ですが、雰囲気というか佇まいがなんとも渋く、魅力的です。
この人の出演作は、他に『美しき小さな浜辺』(48)『ガラスの城』(50)『宿命』(57)『熱狂はエル・パオに達す』(59)などがありますが、個人的に観たものでは、ベルモンド主演の『リオの男』(63。監督:フィリップ・ド・ブロカ)ぐらいしか思い浮かびません。
他に配役の点で特筆すべきは、監督のジュールス・ダッシン本人が、重要な役であるセザールを演じていることでしょう。
しかし、彼はもともと役者を目指して演技の勉強をしていたくらいですから、ここで俳優として出演しているのも決して不思議ではないのです。
この作品のおいて、正装したセザールが宝石に下見に行き、金庫を発見するシーンなど、『仁義』のイヴ・モンタン演じるジャンセンのそれを予見するシーンだと言えるでしょう。(ジャンセンは警報システムの場所などをチェックします)
事実、ダッシン監督は、この作品の後も自らの監督作品に俳優としても出演しているようです。
ちなみに、私はダッシン監督の他の作品ではハリウッド時代の『深夜復讐便』、『裸の街』を観ていますが、どちらもきびきびとしたテンポが心地良い素晴らしいサスペンスです。
中でも『裸の街』はニューヨークの街でのロケ撮影が印象的な作品ですが、そのロケ撮影の巧みさは、この『男の争い』でも存分に発揮されています。(もちろん、こちらの舞台はパリ)
赤狩りによって、ハリウッドを追われ、フランスに来て撮ったのがこの作品だったとのことで、ダッシン監督は、この作品で55年のカンヌ映画祭において監督賞を受賞しています。
そして、この作品は、宝石強盗のシークエンスが凄い。
床に穴を開け、下階に降りて宝石店を襲うというアイデアはもちろん、傘などの小道具を実に巧く利用しているのに感嘆させられます。
この間、セリフは全くありませんが、置き時計や、男たちの目配せや汗が(間違えて鳴ってしまうピアノの音までも!)緊迫した状況を見事に表現しています。
宝石店の天井に穴が開いて、そこから上階のほの暗い明かりが見えるシークエンスが美しく、実に印象的。
個人的に、唯一この作品で苦手な点は、ストーリーに子供の誘拐が絡んでくるところです。
これは私の個人的な趣向の問題なのですが、どうもこういったサスペンスものに子供が絡んでくると落ち着かないというか、居心地の悪さを感じてしまうのです。
しかし、他は文句の付けようのない見事な作品だと思います。
ジャン・ベッケル監督の『勝負(かた)をつけろ』をレンタルビデオで観た感想。
『勝負(かた)をつけろ』(61年)
監督:ジャン・ベッケル
撮影:ギスラン・クロケ
出演:ジャン=ポール・ベルモンド、ピエール・ヴァネック、ミシェル・コンスタンタン
監督のジャン・ベッケルは言うまでもなくジャック・ベッケルの息子で、この作品が監督デビュー作。
映画の原作は、ジャック・ベッケル監督の遺作『穴』(60)の原作者のジョゼ・ジョヴァンニで、脚本もジョヴァンニとジャン・ベッケルの共同。
ジャック・ベッケルと親しかったメルヴィルも映画に協力したらしく、映画のオープニングクレジットでは、ジャン=ピエール・メルヴィルの撮影所で撮られたという旨の表示が出てきます。
撮影は『穴』のギスラン・クロケ。
この映画は特に前半がいい。
舞台が、いかにもジョヴァンニ原作の映画らしい暗黒街で、若き日のベルモンドのクールな魅力が味わえます。
後半は刑務所を舞台とした男二人の友情物語となりますが、前半とは大分印象が変わります。
正直なところ、映画がトーン・ダウンしてしまう印象。
地雷除去のシーンで、展開が、後のジョゼ・ジョヴァンニ監督作品『ラ・スクムーン』(72年、主演はベルモンド)と瓜二つだということに気づきましたが、後で調べて、原作が同じだということが分かりました…。
映画としては、『ラ・スクムーン』の方に軍配が上がるでしょう。
この映画には、『ラ・スクムーン』にも出演しているジョヴァンニ作品の常連、ミシェル・コンスタンタンも悪役で出ていますが、手下を連れて夜の街を練り歩く様は迫力満点。
ベルモンドの友人役を演じるピエール・ヴァネックは、ジュールス・ダッシン監督の『宿命』に出演している俳優のようです。
他にはジュリアン・デュヴィヴィエ監督の『わが青春のマリアンヌ』やルネ・クレマン監督の『パリは燃えているか』にも出ているようですし、近年ではミシェル・ゴンドリー監督の『恋愛睡眠のすすめ』という映画に出ています。
『凶悪犯』『BRIGADE ANTI-GANGS』という映画を紹介します。
原作オーギュスト・ル・ブルトン、監督ベルナール・ボルドリー、撮影アンリ・ペルサン、音楽ミシェル・マーニュ、出演ロベール・オッセン、レイモン・ペルグラン、ピエール・クレマンティ
1966年のフランス映画、カラーです。
この作品は当時、日本では『凶悪犯~ギャング特捜隊十人の刑事~』というタイトルで公開されたようです。
監督のベルナール・ボルドリーは、エディ・コンスタンティーヌ主演のレミー・コーション・シリーズや、リノ・ヴァンチュラ主演の『情報(ネタ)は俺が貰った』などの監督で、60年代にはミシェール・メルシエ主演で『アンジェリク』五部作を監督、フランスで大ヒットを飛ばしました。
この五部作は、公開当時、日本では第1作のみしか公開されなかったようなのですが、調べてみますと、現在ではなんと全5作がDVDボックスで発売されています。
これにはホント驚きました。(Amazonへのリンク)
ちなみに、撮影のアンリ・ペルサンは『アンジェリク』五部作すべてのキャメラを担当していますが、あの『史上最大の作戦』のキャメラもワルター・ウォティッツ(『リスボン特急』)らと共に担当していたんですね。
また、音楽のミシェル・マーニュもやはり『アンジェリク』五部作すべての音楽を担当していますが、他の作品にあの『地下室のメロディ』、『冬の猿』、『太陽は知っている』、ブレッソンの『白夜』などがあります。
この作品ではジャズを前面に出した音楽ですが、それがノワール的な作風によく合います。
ビッグ・バンド&オルガンという組み合わせのテーマ音楽も魅力的。
ところでこの『凶悪犯』という映画、これまで存在すら知りませんでしたが、大手レンタル店でたまたま見かけ、借りてみました。
パッケージのノワール的雰囲気と、なにかとメルヴィル絡みのキャストに興味津々だったからです。
刑事役のロベール・オッセンの出演作は『殺られる』(エドゥアール・モリナロ監督)ぐらいしか観た記憶がありませんが、あの『ギャング』に出ていたレイモン・ペルグランの出演作、しかも主演クラスの映画が観られるというのが大きかったのです。
そして、この映画の撮られた年(66年)はベルグラン出演の『ギャング』が撮影され、公開された年でもあります。
つまり、ほぼ同時期の作品ということになるのです。
また、あのピエール・クレマンティまで出ていますし、なんとレイモン・ペルグランの奥方役がシモーヌ・ヴァレール、あの『リスボン特急』でリカルド・クッチョーラの奥方を演じた彼女なのです。(彼女は、私生活ではあのジャン・ドサイの奥方です)
『リスボン特急』よりも6年前に撮影した作品ですから、かなり若く見え、上品な美しさがよく分かります。
イエイエの元アイドルという役柄のピエール・クレマンティは、あの『昼顔』(ルイス・ブニュエル監督)に出演した年であり、あのイメージそのままの弾けた印象なのが嬉しいですね。
そして、ロベール・オッセンの部下の刑事役には、メルヴィルの『この手紙を読むときは』に主演していたフィリップ・ルメールまで出ています。
他の部下の刑事よりも為所のある重要な役で、着ているジャケットも色目の違う洒落たものを着て、他の刑事たちとは一線を画しています。
肝心の内容ですが(ネタバレは避けます)、レイモン・ペルグランらの強盗団と刑事たち、そして、ペルグランの娘の彼氏役のクレマンティの若者集団との関わりが興味深く、かなり面白いものでした。
また、ロベール・オッセンの弟が、サッカー、フランス代表チームのエース・ストライカーという設定がなかなか面白いです。
正直言いまして、いわゆる大傑作の類の作品ではないと思いますが(時間も85分程度と短め)、内容も比較的分かりやすいので、この手のノワール作品がお好きな方には観て損のない映画でしょう。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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