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久しぶりにジャン・ルノワール監督関係の記事を書いたと思ったら、偶然にも『ピクニック』のデジタル・リマスター版が6月に日本公開されるというニュースを知る。(公式サイト

40分という短い映画ですが、ルノワールのエッセンスがつまった大傑作です。
以前『ピクニック』について書いた記事

劇場は今のところ渋谷シアター・イメージフォーラムだけの予定のようですね。
紀伊国屋から出ていた国内盤DVDは廃盤で中古はプレミア価格になっておりますし、この作品をスクリーンで観られる機会はめったにないと思われますので、これは貴重な上映となりそうです。

これを機にリマスター版のブルーレイなど発売されたらさらに嬉しいですね。

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ジャン・ルノワール監督の『ランジュ氏の犯罪』(36年)を国内盤DVDで観た感想。

 先月発売された『フィルム・ノワール  ベスト・セレクション フランス映画篇 DVD-BOX1』の中の一篇。
もちろん、これまで国内でソフト化されていなかった幻の作品です(たぶん)。

まず言っておきたいのは、せっかくのフィルム・ノワールのBOX中の作品であるにもかかわらず、この映画はとてもフィルム・ノワールとは言えない作品だということ。
フィルム・ノワールの定義はともかくとして、この作品をフィルム・ノワールと言ってしまうと、殺人事件を扱った映画はすべてフィルム・ノワールということになってしまうでしょう。
それくらい映画全体のトーンがフィルム・ノワールから掛け離れた作品になっています。

フィルム・ノワール云々の話はともかくとして、問題はこの映画が良い作品か否かですが、観た印象として、おそらくルノワールの中でもトップクラスの作品でしょう。
30年代後半のルノワールは『どん底』、『ピクニック』、『大いなる幻影』、『ゲームの規則』など映画史に残る傑作が目白押しですが、それらに匹敵する作品であることは間違いありません。
つまりは、すべての映画の中でもトップクラスの作品だということです。

複雑な人間模様の中での男女間の機微を始め、ルノワールならではの人間観察の深さと温かさが感じられる作品で、とりわけルノワール風なパーティーシーンの素晴らしさは白眉。
脚本はジャック・プレヴェール、縦横無尽に動き回るキャメラワークが印象的な撮影はルノワールの盟友ジャン・バシュレ

主演のランジュ氏を演じるのはルネ・ルフェーヴル
メルヴィル作品に詳しい方ならこの名前にピンと来たのではないでしょうか。
いぬ』(62年)の冒頭でセルジュ・レジアニに銃殺される故買屋の男、あれがルネ・ルフェーヴルです。
この映画では当然のことながら若く、見た目はほとんど別人ですが、さしてスター性の感じられない存在感がかえってランジュ氏の平凡な人間像に合っています。

対照的にジュール・ベリー演じる、強欲かつ好色な出版社のオーナー編集長がどこか憎めない魅力的なキャラクターとして描かれています。

さらに女優陣も魅力的。
洗濯屋の主人ヴァランティーヌを演じるフロレルはまるで『或る夜の出来事』のクローデット・コルベールのようですし、その下で働くエステル役のナディア・シヴィルスカヤはアンナ・カリーナとミレーユ・バランを足して二で割ったような可憐さ。
ピクニック』の主演女優シルヴィア・バタイユまでジュール・ベリーの愛人秘書役で出ていますが、出番は少ないものの、やはり最高に魅力的。

最後にDVDの画質について。
残念ながら国内盤DVDの画質はお世辞にも良いとは言えません。
ハッキリ言ってVHS並みです。
いくら製作された年が古いとはいえ(36年)、同年の『ピクニック』のDVDは素晴らしい画質で国内盤が出ていますし(さすがに紀伊国屋。現在廃盤)、やはり同年の『どん底』のDVD(ジュネス企画)もこれほど悪くありません(というかこれに比べたらだいぶマシ)。
画質の悪さは映画を観ているうちに少しずつ気にならなくなってきましたが、作品が素晴らしいだけに、やはりこの画質は残念です。

アラン・コルノー監督の『メナース』(77年)を国内盤DVD(IVC)で観た感想。

真夜中の刑事』(76年)に引き続きアラン・コルノー監督とイヴ・モンタンが組んだ作品。
脚本は監督自身とダニエル・ブーランジェ、撮影はトリュフォー作品で有名なピエール=ウィリアム・グレン、 音楽はバリトン・サックスの巨匠ジェリー・マリガン

無実の罪を課せられた女を助けるために男が偽装工作を働く、というポリス・スリラー。
運送会社が舞台だけにトラックが大きな役割を果たしている。
モンタンとトラックといえばクルーゾー監督の『恐怖の報酬』(52年)だが、肉体派としての魅力のあった当時に比べ、この映画ではすっかり落ち着いた中年男性に成長しているので、なんとなく違和感がある。

後半はアクションシーンもあるが、全体としてはかなり静かな映画という印象が強い。
ストーリーもかなり回りくどく、また説明もほとんどないので(メルヴィル風?)、場面ですぐに状況を把握できなかったりするのが難。
二人のヒロイン、キャロル・ロールマリー・デュボワも、どこか使い方が勿体ない感じが残る。(もっともマリー・デュボワはこの作品でセザール賞助演女優賞受賞)
ジェリー・マリガンの音楽も必要最低限しか使われておらず、もっと使い道はなかったのかと思う。

それでも最後まで画面に惹きつけられたのはモンタンの存在感と、刑事役のジャン=フランソワ・バルメが良かったからだ。
46年生まれのジャン=フランソワ・バルメは当時30そこそこで、かなり複雑な性格の刑事役を見事に演じ、セザール賞助演男優賞にノミネートされている。

国内盤DVDの画質は特別良くもないが、悪いというほどでもない。
画面が暗いシーンが多いのは画質のせいなのか撮影のせいなのか。

昔から『カム・レイン・オア・カム・シャインCome Rain Or Come Shine)』(ハロルド・アーレン作曲、ジョニー・マーサー作詞)という曲が好きだ。

降っても晴れても』という邦題は直訳過ぎるせいかどうもピンとこないが、この曲が入っているだけでそのCDが欲しくなったりする。
実際、名曲だけに多くの名歌手に歌われており、インストのものも含め名演奏は枚挙に暇がない。

ヴォーカルものだと、古くはビリー・ホリデイのヴァーヴ盤、フランク・シナトラのリプリーズ盤、レイ・チャールズの録音、近年伝記映画が公開され話題となったモニカ・ゼッタールンドビル・エヴァンス・トリオの録音などが強く印象に残っているし、近年ではノラ・ジョーンズウィントン・マルサリス他と共演したものや、B.B. キングエリック・クラプトンのデュエットも好きだ。

歌抜きのジャズ・ヴァージョンとなると、アート・ペッパーのアルバム『インテンシティ』における録音も良いのだが、やはりビル・エヴァンス・トリオの『ポートレイト・イン・ジャズ』の1曲目に収録されたヴァージョンだろうか。
終わり方がまたなんとも素晴らしいのである。

どれを紹介するか迷いに迷ったが、やはりシナトラのものにしよう。
ストリングスとビッグ・バンドが合奏する間奏も感動的だが、歌詞を見ながらシナトラのスケールの大きな歌を聴くと、これが史上最高のラヴ・ソングの一つであることが確認できるからだ。



ビクトル・エリセ監督の稀代の傑作『ミツバチのささやき』、『エル・スール』がともにブルーレイ化のニュースに驚愕。
発売元がIVCということにさらに驚愕。

この二つの作品は以前は東北新社から国内DVD化、その後に紀伊国屋書店からも国内DVD化されていました。

東北新社盤は画質にかなり問題がありましたが、すぐに廃盤となりプレミア化、入手困難な状態が長く続いておりました。
それでいてレンタルにはひょっこり置いてあったりしましたが。

紀伊国屋盤は監督自身の監修によるHDニューマスターとのことで、東北新社盤よりはかなり画質が改善されていましたが、バラ売りされずボックスのみの発売が残念でした。
私は現在どういうわけか紀伊国屋盤の『エル・スール』のみ所有しておりますが、勿体無くてなかなか見る機会がないですね。(もちろん、この2作はこれまで何度も観ております)

国内ブルーレイ化はもちろん今回が初めてですが、発売元が近年ヨーロッパ映画の名作を次々とブルーレイ化しているIVCというのにも驚きました。
アマゾンの商品説明によれば、監督自らが監修したHDマスター使用とのことですから、紀伊国屋盤と同じマスターの使用でしょうか。

DVDも同時発売、また、2作をツインパックしたブルーレイも初回限定で発売されます。

このところアン・バートン(1933~1989)の旧譜が再発されているのは嬉しい。
つい最近も74年の日本録音のアルバム『バイ・マイセルフ・アローン』が再発された。
しかも廉価。


昨秋には77年の高知におけるライヴ盤『アン・バートンの夜~宵のひととき』が復刻された。
これなど以前は中古盤屋を探し回り、プレミア価格の旧盤を買った憶えがある。
新盤のジャケットは旧盤とは異なるが、音質が良くなっているようなら買い直したいところだ。


同じく昨秋には世界初CD化となる『シングス・フォー・ラヴァーズ』まで発売された。
これも廉価だが、最新のDSDリマスターなのも嬉しい。


アン・バートンのアルバムは、レアな輸入盤まで入れると少ないようで意外と多く、たまに見たことも聞いたこともないようなCDもあったりする。
彼女のアルバムは入手可能な限り購入するようにしているが、CDの発売状況はなかなか複雑で、完全には把握できていない。
おそらくは本国オランダ以外では日本での人気の高いシンガーなので、これからも旧譜の発売に期待したいところである。

メルヴィルの『マンハッタンの二人の男』(58年)より劇中歌『マンハッタン・ストリート』のシーン。
歌手役の女優はグレンダ・リー(Glenda Leigh)。
作詞:ジョー・ウォーフィールド(Jo Warfield)、作曲:クリスチャン・シュヴァリエ(Christian Chevallier)。

映画自体どこをとっても素晴らしいですが、これはさり気なくも大変印象的なシーンの一つです。



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マサヤ
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男性
趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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