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フランスのAmazonに注文していた『この手紙を読むときは』(53年)のVHSビデオが先日届きました。
この作品はジャン=ピエール・メルヴィル監督の長編3作目にあたる作品ですが、私の知る限り、世界的にもいまだDVD化されておりません。
もちろん、日本においては、未だに公開すらされておりません。
よって、この作品を観るには、過去にフランスで発売されたというVHSビデオを観るしか方法はないわけです。
ところが、実のところ、私は以前、海外の某海賊盤サイトでこの作品のDVD-R(おそらくこのビデオをコピーしたもの)を入手し、そのお蔭でこの作品を観ることができてはいたのですが、やはり、できることなら正規商品(?)が欲しかったので、今回注文したというわけです。
フランス本国でもこのビデオは入手困難品なためか、かなり高額でしたが…。
ビデオが無事手元に届いてからも、一つ大きな問題が生じました。
DVDにおいて、海外盤が国内のDVDプレーヤーで再生できないのと同様に、VHSビデオも海外版は国内のVHSビデオレコーダー等では規格が異なるせいか再生できないのです。
致し方ないので、駅でたまたま見つけたフィルム現像サービス店が海外ビデオのダビングサービスをやっているとのことなので、そこに頼むことにしました。
これも決して安くはありません。(3千円ほど)
その結果、ようやく中身を観ることができたというわけです。
ダビングされたDVD-Rを観た限りでは、以前観た海賊盤に比べ、特に画質が良いわけではありません。
覚悟はしていたものの、その意味ではちょっと残念でした。
もちろん、字幕もありません。
この作品は、メルヴィル監督作品中、監督が脚本を書いていない唯一の作品であり、そのせいもあってか、彼自身、最も気に入っていない作品だということです。(ルイ・ノゲイラ著「サムライ」99ページ参照)
世界的にも決して評価が高くないことは、いまだにDVD化されていない点からも明らかでしょう。
しかし、実際のところ、大多数のファンにとっては、観ることができないので、評価しようにも評価しようがないというのが実情ではないでしょうか。
その意味でも、こうして作品を観ることができるのは幸運だと言えましょう。
内容はいかにもこの時代のフランス映画らしいメロドラマで、実際のところ、メルヴィルらしからぬ作品だという印象は拭えませんが、ジュリエット・グレコ、フィリップ・ルメールといった当時のスター俳優を使った作品はそれなりの魅力があり、決して悪い作品だという印象はありません。
いつの日か海外等でDVD化される日も来るかと思われますが、その時はそれなりの再評価がなされることでしょう。
『Rififi in Paris』(66年)
監督:ドニ・ド・ラ・パトリエール
原作:オーギュスト・ル・ブルトン
撮影:ワルテル・ウォティッツ
音楽:ジョルジュ・ガルヴァランツ
出演:ジャン・ギャバン、ジョージ・ラフト、クラウディオ・ブルック、ナディア・ティラー、ミレーユ・ダルク 、ゲルト・フレーベ
密輸絡みのやくざの争いを描いた国際スパイ・ギャング映画。
この作品でジャン・ギャバンは、やくざの親分役を演じています。
ジョージ・ラフトとの共演というのは、他にもあるのかどうか分かりませんが、どちらにせよ、二人の共演が観られる今作は実に貴重と言えましょう。
ジョージ・ラフトはさすがに往年の精彩は感じられませんが、『暗黒街の顔役』(32)でのトレードマークともいえるコイン投げを、この映画で一瞬ながら見られるのが嬉しいところ。
セルフ・パロディなんでしょうかね。
ギャバンとラフトの対峙するシーンは、ギャング映画が好きな方なら感涙モノのシーンではないでしょうか。
ゲルト・フレーベとナディア・ティラーの年の離れた夫婦が不思議な存在感。
途中、東京のシーンもありますが、空港の駐車場に鳥居があったりとか、高速道路のシーンなのに祭囃子がバックに流れていたりとか、芸者風の給仕がホテルの部屋にお茶を入れにきたりとか、少々日本への偏見が感じられ、変な感じです。(フランソワ・トリュフォー監督の『家庭』(70)を観ても、当時のフランス人の日本理解はそんなものだったのだろうと思いますが)
映画全篇のストーリーはなかなか面白い映画なのですが、どこか“ゆるい”といいますか、視点が拡がり過ぎでもう一つ締りがあれば、という印象もあります。
ギャング組織にスパイとなって潜り込むクラウディオ・ブルックがなかなかの存在感を示しますが、今一つ身のこなしに緊張感がなく、そのあたりのスリルをもう一つビシっと描いていれば、さらに面白い映画になったような気もしました。
ところで、ジョルジュ・ガルヴァランツのテーマ音楽が、どことなくあの『ペッパー警部』に似ている気がするのは私だけ?
ところで『地下室のメロディー』には、主に端役でメルヴィル作品に関係する俳優が数多く出演しています。
以前HPのBBSにいただいた情報を元に、どんな人たちがどんな役で出演しているのかまとめてみます。
●『賭博師ボブ』ジャン役のクロード・セルヴァルは警察署長役
●『いぬ』バーテンダー役のシャルル・ブイヨーは旅行客役
●『ギャング』ルイ・バルテル役のシルヴァン・レヴィニャックは列車の乗客役
●『サムライ』ジェフのアパートの隣人役、『仁義』ビリヤード場の管理人役のエドワール・フランコムはマルセル役
●『サムライ』ナイトクラブの客役のジョルジュ・ビリーは列車の乗客役
●『サムライ』でジェフを犯人だと断定するナイトクラブの客役のジャン・ゴールドはレストランの給仕長役
●『サムライ』ナイトクラブの客役、『影の軍隊』ドゴール将軍役のアドリアン・カイラ=ルグランはカジノ使用人役
●『仁義』看守役ピエール・コレはカミーユ役
もしかしたら、まだまだいるかもしれません。
ちなみに、以前も紹介したことですが、『地下室のメロディー』の編集を担当したフランソワーズ・ボノは、メルヴィル作品の多くの編集を担当したモニーク・ボノの娘であり、『影の軍隊』の編集も担当しています。
そして、監督アンリ・ヴェルヌイユの奥さんでもありました。
この名作を久々に観直しました。
『Melodies En Sous-Sol』(63年)
監督:アンリ・ヴェルヌイユ
原作:ジョン・トリニアン
脚本:アンリ・ヴェルヌイユ、アルベール・シナモン、ミシェル・オーディアール
撮影:ルイ・パージュ
音楽:ミシェル・マーニュ
助監督:クロード・ピノトー
出演:ジャン・ギャバン、アラン・ドロン、ヴィヴィアーヌ・ロマンス、モーリス・ビロー、カルラ・マルリエ
前回観たのはレンタル・ビデオのカラー版だったかと思います。
今回は紀伊国屋書店から発売されているモノクロ版DVDで観ました。
結果としては、全くカラーである必要性を感じませんでしたので、やはり、この作品はモノクロで味わいたいと改めて思いました。
この映画に関しては、結末を知っていると面白さが半減するような思いもありましたが、やはりというべきか、それでも面白かったです。
かえって、ストーリー以外の部分も集中して観ることができたかもしれません。
それと、今回観て改めて気づいたことですが、映画前半のジャン・ギャバンとヴィヴィアーヌ・ロマンスの夫婦の場面が実に良いんですよね。
ギャバンにいかにも出所後というような風情がありますし、それを淡々として受け止める妻のヴィヴィアーヌ・ロマンスに、中年夫婦のなんとも言えない腐れ縁的信頼感(?)が感じられて良かったです。
ヴィヴィアーヌ・ロマンスはデュヴィヴィエ監督の『地の果てを行く』(35)『我等の仲間』(36)でもギャバンと共演しているとか…年代からいっても、おそらくその頃の彼女はこの映画とは印象が全然違うと思われるのでどんな役柄だったか思い出せないんですが、またいずれ確認してみたいと思います。
それにしても、この映画の彼女は色気があって良いと思います。
それでこの映画、中盤から後半にかけては完全にドロンの映画なんですね。
ちょっと品のない、ギラギラした野心を感じさせるチンピラ風情を実に巧みに演じています。
ただ、前回観た時も感じたのですが、恋人役のカルラ・マルリエにもう一つ存在感がないので、ドロンとの二人のシーンがどうも物足りなく感じます。
一方で、ギャバンとドロンの共演シーンは、二人の関係が素のような自然さでいい感じ。
ギャバンが目を剥き出しにしながらドロンに文句を言う姿を観るだけでもう満足です。
また、ドロンの義理の兄役を演じるモーリス・ビローも、いかにもそれらしい良い味を出してます。
ミシェル・マーニュの音楽はお馴染みの名曲ですが、とりわけラストシーンでの使われ方がサスペンス感を盛り上げていて見事ですね。
そして、そのラストシーンは、やっぱり何度観ても衝撃的です。
音楽も含め、演出の見事さは言うまでもありませんが、今回、ドロン、ギャバンの抑えた演技が素晴らしいと改めて思いました。
あと、この作品へのメルヴィル関連の出演者に関しては次回取り上げてみたいと思います。
『La lecon particuliere』(68年)
監督:ミシェル・ボワロン
脚本:ミシェル・ボワロン、クロード・ブリュレ、アネット・ヴァドマン
撮影:ジャン=マルク・リペール
音楽:フランシス・レイ
出演:ナタリー・ドロン、ルノー・ベルレー、ロベール・オッセン
ジャン=ピエール・メルヴィル監督の『サムライ』(67)において女優デビューを飾ったナタリー・ドロン。
その『サムライ』でナタリーの愛人ヴィエネル氏を演じたミシェル・ボワロンが監督をし、ナタリーを主演に起用した作品がこの『個人教授』です。
内容は、高校生(?)の若者が、レーサーの彼氏を持つ年上女性と知り合い、恋に落ちる…というラヴ・ストーリー。
いかにも60年代後半のフランス映画という雰囲気のある映画で、パリの街をロケ撮影した映像も魅力的。
タイトルから、なんとなくエロ映画を期待しがちですが(私だけ?)、残念ながら、そういった要素はほとんどありません。
むしろ、実に脚本のしっかりした映画なので驚かされます。
印象的なシーンはいくつもありますが、特にスキー場でのチークダンスのシーンは素晴らしい。
全篇で流れる、フランシス・レイの流麗で感傷的な音楽も大変印象的。
そして、ヒロインであるフレデリクを演じるナタリー・ドロンが美しく、演技、存在感ともに素晴らしい。
学生役のルノー・ベルレーも役柄にピッタリで、あまり美男過ぎないのが良いのか、結構感情移入して観てしまいます。
また、フレデリクの年長の彼氏であるカーレーサー、エンリコ・フォンタナを演じるロベール・オッセン(特別出演)の存在感が際立っていて、彼の登場する後半から物語が締まってくるような感があります。
ロベール・オッセンが乗っている車が、その世代には懐かしいランボルギーニ・ミウラ(しかも黄色!)というのも嬉しいところ。
『サムライ』で味をしめた(?)のか、オリヴィエの父親役にミシェル・ボワロン自ら出演しています。
前回お伝えした『影の軍隊』のDVDの発売と同時(8月7日)に、ユニバーサル・ピクチャーズからフランス映画の注目すべきDVDが3点発売になります。
しかも、どれも初DVD化、1500円という廉価です。
右画像は『雨のしのび逢い』のジャケット。
ジャンヌ・モローの表情が実に良い感じです。
発売されるのは次の3点。
●『追悼のメロディ』(77年。監督:アンリ・ヴェルヌイユ、出演:ジャン=ポール・ベルモンド、マリー=フランス・ピジェ、ベルナール・ブリエ)Amazonへのリンク
●『雨のしのび逢い』(61年。監督:ピーター・ブルック、出演:ジャンヌ・モロー、ジャン=ポール・ベルモンド、ディディエ・オードパン)Amazonへのリンク
●『大追跡』(66年、監督:ジェラール・ウーリー、出演:ブールヴィル、ルイ・ド・フュネス、アリダ・ケッリ)Amazonへのリンク
ユニバーサルの関連ページへのリンクはこちら。
DVD化された作品の少ないジャン=ポール・ベルモンドの出演作が2点DVD化されるのも嬉しいですし、主演作が全くと言ってよいほど国内DVD化されていないブールヴィルの主演作『大追跡』のDVD化というのも密かにビッグ・ニュースではないでしょうか。
フランス映画のDVDは、一部レーベルで品質に問題があったり、高価であったり、すぐ廃盤になったりと、ファンにはなかなか期待に沿うものが少ないのが現状ですが、今後も(できる限りファンの期待に沿う形で)どんどん発売して欲しいものです。
『影の軍隊』のユニバーサル・ピクチャー・ジャパン盤DVDが、ようやく8月7日再発売されることになりました。
前回同様1500円という廉価、初回限定生産盤です。
Amazonではすでに予約が始まっています。
ご存知のとおり、昨年発売されたDVDはあっという間に市場から消え、その後は中古盤がAmazonやオークションなどでプレミアがついている状態が続いていました。
今回の再発売前の6月からはTSUTAYA DISCASでもレンタルが始まるとのことで、その状況はかなり改善されることは間違いありませんが、今回も油断しているとあっという間に売り切れる可能性もありますので油断はならないと思います。
ところで、個人的に今回の再発で一番気になっていた点は、ジャケット裏のパッケージに記載されていた内容紹介において、【ルクの弟ジャン(ジャン・=ピエール・カッセル)の裏切りによってアジトが急襲されるに及んで組織は逼迫】という、ストーリーの明らかな誤りの記述が訂正されるか否かでしたが、Amazonのページに記載されている内容紹介を見る限り、文章の内容は前回と全く同じで、誤りは訂正されておりません。
実際、作品をご覧になれば、誤解される方は多くないとは思われますが、それでも、内容を混乱したり、誤解する可能性もなくはなく、その点が極めて残念です。
その点から推測されますに、おそらく字幕等も含め、前回発売されたものと内容は全く同一であることが考えられます。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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