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ルネ・クレマン監督の『狼は天使の匂い』を国内盤DVD(紀伊国屋書店)で観た感想。

LA COURSE DU LIEVRE A TRAVERS LES CHAMPS』(72年)
d9985525.jpeg監督:ルネ・クレマン
原作:デヴィッド・グーディス
脚本:セバスチャン・ジャプリゾ
撮影:エドモン・リシャール
音楽:フランシス・レイ
出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、ロバート・ライアン、レア・マッセリ、アルド・レイ、ティサ・ファロー、ジャン・ガヴァン

実に味わい深い作品である。
ハッキリ言って、派手さはない。
全体を流れる空気もどことなくユルいし、ハラハラドキドキの緊迫感もほとんどないから、サスペンス映画として観れば物足りなさを感じる人も多いかもしれない。
もっともこの作品にサスペンスとかミステリーとかいったジャンル分けは無意味に思えるし、ましてや傑作とか名作とかの形容すらも似合わないような気がする。
人目につかないところで秘かに愛でたい、そんな作品である。

それにしても、チャーリー役のロバート・ライアンの魅力はなんなのだろうか。
3bd518df.jpeg最晩年の出演作だが、若い頃から老け顔だった人だから、ここではあまり老けた感じはない。
しかし、年を重ねたことによって一層渋みが増し、同時に死期の近い年代の男性ならではのセンチメンタリズムも感じさせるのがなんとも魅力的である。
それでいて、決して甘ったるい感傷ではないところにこの作品のロバート・ライアンの個性がある。

そして、そのロバート・ライアンと見事な共演を見せるのがトニー役のジャン=ルイ・トランティニャン
この人の魅力もまた、一体なんなのだろうか。
美男?演技が巧い?存在感がある?どれも当たっているようでいて、もう一つピタッとこない。
先日このブログで紹介した離愁を見た時も思ったが、この人の出演作を見ていると、もしかしたら、この俳優が他のどの俳優よりも好きなのではないかという思いすら抱く。
そう感じる俳優は他にも何人もいるから私の感覚など当てにならないが、ともかくも、そう感じるほどにここでのこの人が魅力的な俳優であることは間違いない。

この主役二人の共演を得ただけでも、この作品の成功は大方約束されたと言えるだろうが、脇を固める俳優たちも素晴らしい。
3dcb0b61.jpegシュガー役のレア・マッセリアンリ・ヴェルヌイユ監督シシリアン(69)での色っぽさが印象に残っているが(ギャバンのセリフ『おい、カミサンにまともな服を着せろ!』は最高)、この作品でも自身の役どころにピタリと合った好演である。
ペッパー役のティサ・ファローのつぶらな瞳もこの作品の世界によく合う。
また、フランシス・レイの音楽も作品を雰囲気を強く彩っている。
国内盤DVDの画質が良好なのも嬉しい。
 

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アンドレ・カイヤット監督の『裁きは終りぬ』を国内盤DVD(ジュネス企画)で観た感想。

d6ed9ee7.jpegJUSTICE EST FAITE』(50年)
監督:アンドレ・カイヤット
脚本:アンドレ・カイヤット、シャルル・スパーク
音楽:レイモン・ルグラン
出演:ヴァランティーヌ・テシエ、クロード・ノリエ、ジャック・カステロ、マルセル・ペルス、レイモン・ビュシェール、ディタ・パルロ、ミシェル・オークレール、ジャン・ドビュクール

初見。
アンドレ・カイヤット監督の作品にはこれまで縁がなく未見でした。
この作品は陪審員制度をテーマとした作品ということで堅苦しい内容の作品を予想していましたが、思いのほか親しみやすくてちょっとびっくり。

末期ガンだった愛人を本人の要請に従って毒殺した被告の女(クロード・ノリエ)を7人の陪審員が裁く…というもので、安楽死を巡る問題が大きなテーマになっていますが、映画の内容は、裁判そのものよりも、陪審員一人一人の私生活を丁寧に描いている点が変わっています。
また、描写のタッチもなかなかユーモアに富んでいます。

正直なところ、陪審員の議論の内容にもっと緻密さがあっても良かったと思いますが、陪審員一人一人の私生活を描くことで、自然と陪審員制度の問題点を考えさせられる内容になっているのが面白いと思います。

キャストもいわゆるスター級の俳優は出ていませんが、どこかで見た顔が何人も出演しています。
フェリックスを演じたレイモン・ビュシェールは後にジャック・ベッケル監督の『肉体の冠』(53)でセルジュ・レジアニの友人役という重要な役柄を演じていることになる俳優。

男の陪審員を追うストーカー女性を演じたのはディタ・パルロ
といってもほとんどの人はピンとこないでしょうが、あの『大いなる幻影』の後半でジャン・ギャバンを助けるドイツ人女性といったらお分かりになるのではないでしょうか。
この作品では登場場面が少なかったのが残念。
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被告人エルザ役のクロード・ノリエは他の作品で見た記憶がないのですが、感情を表に出さない無表情から醸し出される存在感がなかなか良かったですね。
一方で、その愛人役のミシェル・オークレール(『情婦マノン』)のヒステリックな部分が効いています。

あと、この作品の音楽を担当しているレイモン・ルグランは、あのミシェル・ルグランの父だそうです。

拙HPのBBSにいただいた、メルヴィル・ファンにとって超ド級の素晴らしい情報です!

コードネームはメルヴィル』と題されたメルヴィル作品の大規模な特集上映が11~12月にかけて東京で開催されます!
もちろん、これほどの特集上映が日本で開催されるのは例がありません。

情報源はENCORE』という東京日仏学院のカルチャーマガジンをpdf化したページです。
60~61Pに簡単な概要が、そしてページの中ほどにある東京日仏学院イベント・カレンダーに東京日仏学院における上映情報が掲載されています。
 

現在の段階で分かっている情報を整理すると…

この特集上映は東京フィルメックス東京日仏学院の共催。(企画協力はアダンソニア)
上映会場によって前半後半二つに分かれる模様。

前半は『第10回東京フィルメックス』という映画祭における上映
期日:11月21日(土)~29日(日)
会場:有楽町朝日ホール
前売:1300円 当日一般:1700円/学生:1300円
現在のところ上映作品は未定

後半は東京日仏学院にて上映
期日:11月30日(月)~12月19日(土)
会場:東京日仏学院エスパス・イマージュ
会員:500円 一般:1000円
東京日仏学院における上映作品、時間は以下の通り。

11月30日(月)
18:00~『仁義』 上映後、ジャン=フランソワ・ロジェのレクチャーあり

12月4日(金)
13:45~『賭博師ボブ
16:00~『いぬ
18:30~『海の沈黙』 上映後、トークショーあり(予定)

12月5日(土)
11:00~『ある道化師の24時間』『マンハッタンの二人の男
14:00~『恐るべき子供たち
16:30~『賭博師ボブ

12月11日(金)
14:00~『いぬ
16:30~『リスボン特急
19:00~『影の軍隊

12月12日(土)
12:30~『恐るべき子供たち
15:30~『ある道化師の24時間』『マンハッタンの二人の男
18:00~『コードネームはメルヴィル

12月13日(日)
11:00~『影の軍隊
14:30~『仁義
17:30~『リスボン特急

12月19日(土)
13:30~『モラン神父
16:30~『この手紙を読むときは

以上

現在のところ、『第10回東京フィルメックス』における上映作品は発表されていない模様ですが、東京日仏学院での上映予定作品のリストを見るだけでも興奮を抑えきれない素晴らしい内容です。

いぬ』、『仁義』を初めとするフィルム・ノワールの名作群が見られるのも嬉しいですが、短編処女作『ある道化師の24時間』、そして『この手紙を読むときは』、『モラン神父』といった本邦未公開作品が一挙に上映されるのは本当に快挙といってよいのではないでしょうか。
惜しむらくは『フェルショー家の長男』、『ギャング』、『サムライ』の3作が欠けている点ですが、これは是非とも東京フィルメックスでの上映に期待したいところ。

11月30日のシネマテーク・フランセーズのプログラム・ディレクターであるジャン=フランソワ・ロジェ氏のレクチャーも楽しみですし、12月12日18:00より上映の『コードネームはメルヴィル』というドキュメンタリー(?)も気になります。

とにかく、この企画を立てた方々に感謝です。

森一生監督の『ある殺し屋の鍵』をDVDで観た感想。

b793e7fb.jpegある殺し屋の鍵』(67年)
監督:森一生
原作:藤原審爾
脚本:小滝光郎
撮影:宮川一夫
音楽:鏑木創
出演:市川雷蔵、西村晃、佐藤友美、山形勲、中谷一郎、金内吉男、内田朝雄

初見。
同じく森一生監督、市川雷蔵主演の『ある殺し屋』(67)の続編にあたる作品。
第1作の『ある殺し屋』は随分前に観ましたが、かなり面白かった記憶があります。
市川雷蔵はなんといっても時代劇が最高ですが、こういった現代劇もいいです。
メイクの関係で顔立ちが若干地味に見えることは否定できませんが、かえって顔立ちのノーブルさ(?)が引き立つと感じるのは私だけでしょうか。

このシリーズで雷蔵演じている新田という“殺し屋”の役柄は、奇しくも同じ年に撮られたジャン=ピエール・メルヴィル監督の『サムライ』(67)でのアラン・ドロン演じるニヒルな殺し屋のキャラクターを思わせ、事実、ストーリー的にもこの作品は『サムライ』に近いものを感じます。
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正直なところ、第1作の『ある殺し屋』に比べて、この作品は質的に若干落ちる気がしますが、雷蔵が日舞の師範という役柄なのが面白く、また、西村晃佐藤友美といったキャストも良かったので十分合格点の出来映えだと思います。
また、鏑木創の音楽も良かったですし、名匠宮川一夫のキャメラがさすがの素晴らしさです。

クロード・ミレール監督の『死への逃避行』を国内盤DVDで観た感想です。

0b12d1b8.jpegMORTELLE RANDONNEE』(83年)
監督:クロード・ミレール
原作:マルク・ベーム
脚本:ミシェル・オーディアール、ジャック・オーディアール
撮影:ピエール・ロム
音楽:カーラ・ブレイ
出演:イザベル・アジャーニ、ミシェル・セロー、ギイ・マルシャン、サミー・フレイ、ステファーヌ・オードラン、マーシャ・メリル

初見。
この映画は公開時の一般的評価は低かったものの、後に一部でカルト作品としての評価が確立したと言われているようです。
実際、この手のサスペンス作品としてはかなり変わった内容の作品。
シリアスともコメディともつかぬぶっ飛び具合が相当に面白く、個人的にもかなり気に入りました。
ある意味、新時代のノワールと言えるのではないでしょうか。

まず、なんといってもイザベル・アジャーニのカメレオンぶりが魅力的。
文芸作品やシリアスな作品での彼女も悪くないですが(というか個人的には苦手かも)、こういったファム・ファタール的な役柄の方がもしかしたら彼女には向いているんじゃないですかね。
実際、これまで観た彼女の主演作の中でこの作品が一番好きかもしれません。

b171ecfc.jpegひょんなことから彼女を付回すことになる探偵役のミシェル・セローはもともと苦手なタイプの俳優なのですが、この作品ではあまり気にならずに観られました。

他にも、サミー・フレイが登場時間は短いものの重要な役柄で出演しているほか、クロード・シャブロル監督作品のミューズ、ステファーヌ・オードランがここでは本人とは信じがたいメイクで登場します。
ラストにちょっとだけ顔を出すマーシャ・メリル(ゴダール『恋人のいる時間』)も若い頃とほとんど変わりのない外見が嬉しい。

ちなみに、この映画の見事な撮影は『影の軍隊』、『まぼろしの市街戦』、『ママと娼婦』などカルト作品(?)を得意とする名手ピエール・ロム

田中徳三監督の『眠狂四郎 殺法帖』をDVDで観た感想。

1d73b1cc.jpeg眠狂四郎 殺法帖』(63年)
監督:田中徳三
原作:柴田錬三郎
脚本:星川清司
撮影:牧浦地志
音楽:小杉太一郎
出演:市川雷蔵、中村玉緒、城健三朗、小林勝彦、真城千都世、沢村宗之助、伊達三郎

初見。
市川雷蔵主演の『眠狂四郎』シリーズは今のところまだ4~5作くらいしか観ていないが、時おり無性に観たくなる時がある。
このシリーズにおける雷蔵の清潔感あるクールな色気が、私のような男性から見てもなんとも魅力的だからだ。

この『殺法帖』は『眠狂四郎』シリーズ第1作となった作品で、観てみると他の作品に比べそれほど完成度の高い作品とは思えない。
しかし、雷蔵による狂四郎のキャラクターが第1作にしてほぼ確立していることに驚かされるし、完成度云々を別とすればストーリーもそこそこ面白く、それなりに楽しめる作品だ。
雷蔵以外のキャストでは城健三朗(若山富三郎)が役柄は微妙ながら彼なりの味を出しており、中村玉緒のしっかりした演技も光る。

ピエール・グラニエ=ドフェール監督の『離愁』を国内盤DVD(キング・レコード)で観た感想。

8dad3efd.jpegLE TRAIN』(73年)
監督:ピエール・グラニエ=ドフェール
原作:ジョルジュ・シムノン
脚本:ピエール・グラニエ=ドフェール、パスカル・ジャルダン
撮影:ワルター・ウォティッツ
音楽:フィリップ・サルド
出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、ロミー・シュナイダー、モーリス・ビロー、アンヌ・ヴィアゼムスキー、ニケ・アリギ、ポール・ル・ペルソン

再見。
ジョルジュ・シムノン原作の小説を映画化したもので、原題は『列車』。
第二次大戦中のフランスを舞台に、ドイツ軍の爆撃から列車に乗って逃げる男女二人の恋愛模様を描いた作品。

主演の二人が素晴らしすぎる。
ロミー・シュナイダーが演じるアンナはユダヤ人であり、夫や両親も既にドイツ軍によって殺されている。
いつ自分自身がその目に会うかもしれないという恐怖心、そして、一人の男性に次第に惹かれていく恋愛心理を抑制された見事な演技で表現している。
ジャン=ルイ・トランティニャンはどこがどうということはないが、存在感がとにかく素晴らしい。(結局は全部いいっていうことか…)
ラヴシーンも二人の肌のぬくもりが画面を通して直に伝わってくるかのよう。
もちろん、有名なラストに至っては言葉もない素晴らしさである。

この映画の一方の主役といえるのがフィリップ・サルドの音楽で、その美しいメロディーが映画を情感豊かに盛り上げている。
また、ワルター・ウォティッツ(『史上最大の作戦』『リスボン特急』)による映像がなんとも美しい。
脇役も充実しており、アンヌ・ヴィアゼムスキー(『バルダザールどこへ行く』『中国女』)がこういった作品に出ているのも珍しい。
また、ピエール・コレポール・アミオといったメルヴィルの『仁義』に出演した俳優の顔も見える。
総じて周囲の人間たちのキャラ設定がしっかりしているのも良く、邦題も傑作である。

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HN:
マサヤ
性別:
男性
趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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