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真山青果の原作を映画化したもので、前篇後篇の2作に分かれている。
まず始まって20分くらい、ほとんど台詞が聴き取れないほどDVDの音質が悪い。
作品に入りこめないほどで、これは大変残念。
是非ともその辺りを修正したブルーレイを将来期待したいところ。
しかし、そこを乗り越えると大変な感動が待っている。
まず、主だった役を前進座で固めたキャストが素晴らしい。
特に、内蔵助役の河原崎長十郎の存在感と口跡、台詞回しの巧みさには圧倒される。
歌舞伎でも有名な『御浜御殿』の場面では、市川右太衛門演じる綱豊と中村翫右衛門演じる富森助右衛門の対決の場面が溝口らしいリアルな演出で素晴らしい。
第2部の『大石最後の一日』になってからそれまでの緊張感が弛緩したようになるのが唯一の欠点か。
観たのは『雨月物語』『近松物語』『山椒大夫』『西鶴一代女』『赤線地帯』『武蔵野夫人』『元禄忠臣蔵』『浪華悲歌』『祇園の姉妹』『祇園囃子』『残菊物語』、そして新藤兼人監督の『ある映画監督の生涯』。
こう作品名を並べてみると、その数に自分でも驚くほど。
溝口監督の代表作はほとんど観たと言ってよいかもしれない。
もっとも、以前観たことのある作品がほとんどなのだが、どれも今回の方がはるかに面白く感じられたのは不思議である。
もう内容を忘れかけているものもいくつかあるが、これからメモ程度でも感想を残しておきたいと思う。
溝口健二監督の『近松物語』を国内盤DVDで観た感想。
『近松物語』(54年)
監督:溝口健二
脚本:依田義賢
撮影:宮川一夫
音楽:早坂文雄
出演:長谷川一夫、香川京子、南田洋子、進藤英太郎、小沢栄、菅井一郎、田中春男、石黒達也
再見。
タイトルだけ見ると、まるで近松の生涯を映画化したもののように思えてしまうが、内容は近松原作の浄瑠璃『大経師昔暦』(だいきょうじむかしごよみ)を脚色、映画化したもの。
この作品は近松の浄瑠璃作品としてはさして傑作とも思えぬし、歌舞伎文楽ともに上演回数もさほど多くないが、この映画は優れた脚色、演出によって、世界に冠たる作品に仕上がった。
もちろん、近松、とりわけその世話物は映画や歌舞伎よりも文楽、つまり人形浄瑠璃で観る(聴く)のがベストである。
近松の作品の多くがその意図で書かれているのだから当然といえば当然なのだが、役者などの生身の人間が近松のキャラクターを演じる場合、あまりに生々しくなってしまう点に違和感を感じてしまうのだ。
その意味で、この作品における長谷川一夫はあまりに美男過ぎ、色気があり過ぎて、当然近松の人物像からははみ出しているが、抜群の所作の美しさによって、そういった価値観を当てはめること自体意味のないことのように思わせてしまう。
そして、この映画がなにより素敵なのは、なんといっても、おさんを演じた香川京子が魅力的だからだ。
近松のキャラクターという意味においては、彼女ですら無理が感じられる部分も当然あるのだが、とにかくこの作品での彼女は美しい。
このおさんを観るだけでもこの作品は価値があると思ってしまう。
ところどころに響く太棹の音色も印象的であり、宮川一夫の撮影も美しい。
戦後、夫と子に先立たれた一人の女性が、実の妹と再会し…という大阪を舞台にしたお話。
溝口作品は歯応えがあるので、観るのにちょっとばかり勇気が必要です。
これは、これまで未見だった作品ですが、やはりというべきか、想像以上の歯応えでした…。
この容赦ない世界観、サディスティックな描写は凄い…。
公開当時は、田中絹代がパンパンを演じるということで話題となった作品のようですが、映画の前半ではノーマルないつもの彼女が観られるので、今観ても、その変身ぶりに驚かされます。
やっぱり大した女優ですね。
引き続き、最近観た映画のメモです。
●『祇園の姉妹』(35年、監督:溝口健二、出演:山田五十鈴、梅村蓉子)
祇園を舞台に、芸者の日常を描いた作品。
正規盤のDVDで観ましたが、残念ながら20分以上のカットがあるとのことです。
しかしながら、作品は素晴らしい。
なんといっても、若かりし山田五十鈴の魅力が凄い。
やはり同じ溝口作品で、同じ年に撮った『浪華悲歌』によって、女優開眼したと言われる彼女ですが、私個人は、『浪華悲歌』よりも『祇園の姉妹』の彼女の方をずっと魅力的に感じました。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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