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フリッツ・ラング監督の『スカーレット・ストリート』を国内盤DVD(紀伊国屋書店)で観た感想です。
『SCARLET STREET』(45年)
監督:フリッツ・ラング
脚本:ダドリー・ニコルズ
撮影:ミルトン・クラスナー
音楽:ハンス・J・サルター
出演:エドワード・G・ロビンソン、ジョーン・ベネット、ダン・デュリエ、マーガレット・リンゼイ
初見。
“フィルム・ノワールの名作”との世評高い作品ですが、実際観てみると、正直なところ微妙な作品という印象。
初老の男が若い女性に騙されるというストーリーも分かりますし、内容的には充分に面白いのですが、男が趣味で書いている奇妙な絵が評論家から絶賛されて高額で買われたり、まして女が画家だと嘘をつく展開などはあまりに陳腐な感じがしてしまうのです。
同じフリッツ・ラング監督作品『飾窓の女』と同じキャストが3人揃っていますが、以前観た『飾窓の女』の方が個人的には好みです。
それでも、この映画がそれ自体として充分に魅力的なのは、いかにもフィルム・ノワールらしい典型的なファム・ファタールを演じたジョーン・ベネットの存在感が圧倒的だからでしょう。
この女優の魅力は写真では伝わりにくいのではないかと思います。
映像で観てこそ魅力的な女優なのです。
つまり演技や物腰がいいってことですね。
ジョーン・ベネットに惚れる初老の男を演じるエドワード・G・ロビンソンも、キャラ的にあまりにも鈍いというか情けない点が気になるので、この作品では今一つ感情移入しきれません。
もちろん、彼ならではという持ち味を感じましたし、演技も良いのですが…。
あと、この作品がもう一つ好きになれなかった理由は、ダン・デュリエ演じるヒモ男のキャラが好きになれなかったことかもしれません。
ただ、映像はさすがにフリッツ・ラングという感じでなかなか良く、またそれ以外にもそこはかとない魅力が隠された作品という感もありましたので、また再見してみたい作品ではあります。
フリッツ・ラング監督の『ハウス・バイ・ザ・リヴァー』を国内盤DVD(紀伊国屋書店)で観た感想です。
『HOUSE BY THE RIVER』(1950年)
監督:フリッツ・ラング
脚本:メル・ディネリ
撮影:エドワード・クロンジャガー
音楽:ジョージ・アンセイル
出演:ルイス・ヘイワード、ジェーン・ワイアット、リー・ボウマン、ドロシー・パトリック、アン・シューメイカー、ジョディ・ギルバート
初見。
DVD付属の解説ブックレットによれば、フリッツ・ラング監督は弱小撮影所での映画製作を余儀なくされ、発表当時もこの映画は当たらなかったらしい。
そのためか、世界的にも長らく知られていなかった作品とのこと。
当たらなかったのは低予算による地味なキャスティングも原因かもしれないが、これはなかなか見ごたえのあるサスペンスである。
19世紀末のニューイングランドが舞台となった作品で、タイトル通り、主人公の家の側を流れる“河”が主人公と言ってもよいような存在感を示している。(これがまたなんともデカイ河なのだ)
とりわけ映画冒頭の“事件”に至るまでの演出が素晴らしい。
何か起こるぞ、何か起こるぞと思わせる、少々くどいくらいの演出がヒッチコックを思わせる。
というか、この作品に限らずフリッツ・ラングに影響されたのはむしろヒッチコックの方か。
映画中盤で、主人公のスティーヴンがボートを漕いで河で布袋を探すシーンもなかなか印象的であり、途中に挟まる法廷シーンもくど過ぎないのがいい。
全体的にフリッツ・ラング監督の演出が行き届いた作品だという印象で、内容も面白いので(DVDは高いが)観て絶対に損のない作品だと思う。
キャストも、主人公の作家スティーヴンを演じたルイス・ヘイワードの意地悪いキャラクターが面白い。
どことなくあのオーソン・ウェルズを思わせるアクの強い風貌が印象に残る。
その妻を演じたジェーン・ワイアットもしっかりした演技で、良かったと思う。
脇役もなかなか味のある存在感の俳優が揃った映画である。
フリッツ・ラング監督の『M』を国内盤DVD(紀伊国屋書店)で観た感想です。
『M』(31年)
監督:フリッツ・ラング
原作:エゴン・ヤコブソン
脚本:テア・フォン・ハルボウ、フリッツ・ラング
撮影:フリッツ・アルノ・ヴァグナー
出演:ペーター・ローレ、オットー・ベルニッケ、グスタフ・グリュントゲンス、エレン・ウィドマン、インゲ・ランドグット、フリッツ・グノス
再見。
この作品はフリッツ・ラング監督の初のトーキー作品だそうです。
以前観た時はI○C盤のDVDだったのですが、例によって画質が非常に悪く、そのせいもあって心行くまで楽しめなかったような覚えがあります。
今回観た紀伊国屋書店レーベルから出ているDVDは、1931年という時代の映画としては驚異的なほど画質が良く、以前観た時に感じた不満が全くといってよいほどありませんでした。
価格こそ高いものの、特典映像や解説リーフレットも充実しているこのDVDは、作品が好きな方なら買っても絶対に損はないでしょう。
それはともかく、この作品を久々に観たわけですが、やはりこれはスゴイ作品です。
オープニングからして子供たちの不吉な歌から始まるという、悪夢のような作品内容に相応しい幕開けですが、幼女殺害、そして犯罪者の異常心理という、現代でも通用する題材を、この時代に映画作品として成立させた、フリッツ・ラング監督の演出ぶりが見事です。
トーキー初期ということもあってか、ところどころにあえて静寂を活かした(?)演出が効果的で、随所に光る斬新なカメラワーク、音楽(ペーター・ローレが口笛で吹くグリーグの『ペール・ギュント』のメロディー)の使い方など、大変印象的です。
犯罪者を暗黒街の住人たちが追跡するという意外な展開、そして、犯罪者を告発する民衆たちの反応が、異様な迫力を持って描かれています。
それでいて、犯罪者の言い分、主張も盛り込みながらも、犯罪者を徹底的に突き放した演出者の視点が、重苦しすぎたり暗すぎたりなりがちなところから映画を救い上げているようにも感じられます。
キャストでは、主演のペーター・ローレの存在感と熱演ぶり、その怯えた表情の魅力(?)が天下一品と言えるのではないでしょうか。
ところで、このDVDの特典映像はまだ途中までしか観ていませんが、44ページに及ぶ解説リーフレットでは、大塚真琴氏による、この映画の主演ペーター・ローレの貴重な評伝が読めます。
フリッツ・ラング監督の『復讐は俺に任せろ』を国内盤DVDで観た感想です。
『THE BIG HEAT』(53年)
監督:フリッツ・ラング
脚本:シドニー・ボーム
撮影:チャールズ・ラング
音楽:ミッシャ・バカライニコフ
出演:グレン・フォード、リー・マーヴィン、グロリア・グレアム、ジョスリン・ブランド、キャロリン・ジョーンズ、ジャネット・ノーラン
再見。
オープニングの刑事の自殺シーンから観る者の興味を惹く展開がうまく、このあたりはさすがにフリッツ・ラングという感じ。
しかし、観終わってみると、その後の展開は期待したほどではなかったかな、という印象が残ります。
他の監督なら、文句なく傑作と感じるところでしょうが、フリッツ・ラングだけに評価は辛くなります。
もちろん、内容は大変面白いのですが。
個人的に、この作品の大きな魅力の一つは、グロリア・グレアムの存在感です。
彼女の見せ場的には主に映画の後半ですが、個人的には前半の明るい振る舞いが好き。
改めて気づきましたが、彼女は声もステキですねぇ。
グレン・フォードの刑事役は良いんですが、どことなく魅力に欠けますね。
リー・マーヴィンの悪役がインパクトの強さでグレン・フォードを喰ってしまった感じです。
それにしても、沸騰したコーヒーが恐ろしい凶器となるとは…。
しかも、直接的な描写は避けていますが、凄惨さは充分に伝わってきます。
これは演出力の勝利でしょう。
登場するギャングたちのいかにもそれらしい雰囲気、冒頭で自殺する刑事の妻役のジャネット・ノーランの狡猾さなども印象に残ります。
あと、ヴィンスのアパートのテラスからは高層ビル群の夜景が見渡せるという設定ですが、このような美術はメルヴィルの『マンハッタンの二人の男』(58)にも観ることができます。
もちろん、『マンハッタンの二人の男』の方が後に作られていますから、メルヴィルがこの作品からアイデアを拝借した可能性は充分にあり得るのではないでしょうか。
フリッツ・ラング監督の『無頼の谷』を国内盤DVD(ジュネス企画)で観た感想です。
『Rancho Notorious』(52年)
監督:フリッツ・ラング
脚本:ダニエル・タラダッシュ
撮影:ハル・モーア
音楽:エミール・ニューマン
出演:アーサー・ケネディ、マレーネ・ディートリッヒ、メル・ファーラー、ロイド・ガフ、グロリア・ヘンリー、ウィリアム・フローリイ、ジャック・イーラム、ジョージ・リーヴス
フリッツ・ラングがアメリカ時代に撮った西部劇で、観てみると思ったよりは違和感がない。
ただ、冒頭に流れる復讐の歌(?)は、これがあのフリッツ・ラングの作品か?と思うほどの意外性があるし、ジョン・フォードやハワード・ホークスのような西部劇とはかなり趣向が異なる。
確かに西部劇なのだが、手法はフィルム・ノワール的なのだ。
途中で展開が微妙に変化して主題が分かりにくくなるのが玉に瑕だが、内容はかなり面白い。
フリッツ・ラングのアメリカ作品に同じドイツ出身のマレーネ・ディートリッヒが出ているのがミソだが、さすがの存在感。
『黒い罠』『情婦』など、この手の作品に出てくるディートリッヒはほとんど怪優といってよいような、他には得がたい独特の味わいを醸し出している。
メル・ファーラーのスマートな存在感が良く、それに比べると主演のアーサー・ケネディは少々分が悪い。
嫌いじゃないけど。
最後の撃ち合いはなかなか良かった。
『恐怖省』(44年、監督:フリッツ・ラング、出演:レイ・ミランド、マージョリー・レイノルズ)を観た感想です。
グレアム・グリーンの原作を映画化したもので、第二次大戦中のイギリスを舞台に、ある男がふとしたキッカケで謎の秘密結社の陰謀に巻き込まれていくというお話。
これは実に面白いスパイ・スリラーです。
いわゆる“巻き込まれ型スリラー”で、現代の我々の眼からはヒッチコックを思い起こさせる作品ですが、むしろヒッチコックの方がラングに影響されているのでしょう。
冒頭のバザーの占い師やケーキの重さ当てクイズのシーンからもう怪しさ満載で、全く目が離せません。
とりわけ、降霊会のシーンの不気味さ、映像美(?)は名場面といってよいのではないかと思います。
これまでラング作品に感じていた重苦しさも、この作品には、良い意味で少なめで、主演のレイ・ミランドも実に良いですね。
これまで観たフリッツ・ラング監督の作品中でもとりわけ好きな作品です。
●『暗黒街の弾痕』(37年、監督:フリッツ・ラング、出演:ヘンリー・フォンダ、シルヴィア・シドニー)を観た感想です。
フリッツ・ラングらしい重厚なサスペンス。
個人的にヘンリー・フォンダがもともと苦手なのだが、この映画でもその印象は変わらず。
この映画の彼は誰かに似ていると思ったら、ロベール・ブレッソン監督の『スリ』の主演俳優マルタン・ラサールに顔も佇まいもソックリだということに気づいた。
映画は後半、ボニー&クライド的な逃避行となる。
主演女優のシルヴィア・シドニーの美しさで多少は救われるが、映画の内容は重苦しく、観終わった後、ちょっと胃にもたれる。
それにしても、邦題は意味不明。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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